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11話


異空間の戦場に静寂が訪れていた。

大和は敗北を認め、荒い息を整えながら膝をつく。

その前に立つ空は、微笑みを崩さぬまま淡々と口を開いた。


「君の力は確かに素晴らしい。だが、まだ“始まり”にすぎないんだ」


「……始まり、だと?」

大和は顔を上げ、目を細める。


空は剣を消し去り、軽く指を鳴らす。

その瞬間、虚無の空間に四つの幻影が浮かび上がった。

それぞれが大和自身の姿を模した、異なる形態のバーサーカー。


「バーサーカーには――四段階の姿がある」

空の声は低く、しかしよく響く。


「第一段階、《暴走》。力を得る代わりに理性を失い、周囲を敵味方なく破壊する。ただの獣だね」

幻影の一つ目が吠え、血に染まった剣を振り回す。


「第二段階、《制御》。暴走を理性で押さえ込み、己の意志で力を操る。君が辿り着いたのはここまでだ」

二つ目の幻影――今の大和自身を模した姿が、堂々と剣を構える。


空は一呼吸置き、声の調子をわずかに変えた。

「だが、ここから先は――一自分一人の力では越えられない」


三つ目の幻影が揺らめく。

「第三段階、《大暴走》。制御していた力が感情の爆発によって決壊する。大切な人を失った時、抑えきれぬ怒りに飲まれた時……人は自ら理性を壊すんだ。その結果、力は溢れ、破壊の化身となる」

幻影は咆哮し、虚無の大地を粉砕するほどの衝撃を放つ。


快斗たちはその光景に息を呑んだ。

「……これが……第三段階……?」

美咲は眉を寄せる。

「もし現実で暴走したら……都市どころか国ひとつ消し飛ぶわ……」


空はさらに指を弾く。

四つ目の幻影が現れる。

それは静かに立つ鬼神のような姿。

赤黒い光は消え、代わりに白銀の光が纏われていた。


「そして――第四段階、《神・狂気》。」

空の目が愉快そうに細められる。


「力を完全に制御し、なおかつ心は静かで揺らがない。狂気すら己の内に取り込み、理性と力を両立させた究極の形。国を滅ぼすことすら容易い。まさに、鬼神と呼ぶにふさわしい存在だよ」


幻影は静かに大和を見下ろす。

そこにあるのは狂気ではなく、絶対的な支配と調和の気配だった。


「……ッ!」

大和は思わず拳を握りしめた。

自分が制御に辿り着いたことで満足し、最強だと錯覚していた。

だが実際は、まだ二段階目。

その上に二つも壁があると知り、衝撃と同時に己の愚かさを痛感する。


「俺は……まだ半人前だったのか……」

かすれた声が虚無空間に響いた。


空は微笑みを浮かべたまま、大和を見下ろすことなく語る。

「愚かじゃないさ。ここまで来れた人間なんて、君が初めてだよ」


大和は苦笑を浮かべ、拳を床につけて深く息を吐く。

「……クソッ……まだ上があるってんなら、俺はそこまで行ってみせる……!」


空は満足げに頷いた。

「そう。その意志こそが、次の段階に進む鍵だ」


――大和の心に、新たな炎が灯った。

敗北の悔しさと、さらなる高みへの渇望。

それは、狂戦士を次なる境地へ導く火種となっていくのだった。



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