10話
漆黒の虚無空間に轟音が響く。
大和の身体を包む赤黒い光は、まさに狂気そのもの。
しかし――
「こんなもんじゃねぇ……!」
大和の瞳に正気の炎が宿る。
【バーサーカー】で通常なら暴走するはずの精神を、彼は力技でねじ伏せた。
さらに、その上へ――
「発……動……【コントロール】!」
赤黒い光が一瞬にして研ぎ澄まされ、肉体の暴走は完全に制御される。
膨張していた筋肉は引き締まり、全身が刃そのものと化す。
溢れ出す闘気は暴風のように広がり、快斗たちは立っているだけで膝が震えた。
「な、なんだ……あの気迫は……!」
快斗の声が震える。
美咲も目を見開き、呟いた。
「暴走を制御している……? そんな芸当、理論上は不可能なはず……!」
狂戦士・真丈大和は、ただの暴走戦士ではない。
狂気すらも己の力として飲み込む、唯一無二の存在だった。
彼は咆哮とともに疾駆した。
その速度は、もはや目で追えぬ。
巨大なバスターソードが閃光と化し、連撃が空を襲う。
――だが。
「やっとか、。いいね、君」
空がニヤリと笑う。
次の瞬間、彼の手の中に一振りの剣が現れた。
光と闇が融合したような漆黒の長剣。
大和の剣が振り下ろされる。
空の剣が軽やかにそれを受け止める。
「ガギィィィンッ!」
金属音が響く。
だが衝撃はない。
空は大和の膂力を紙一重で受け流し、軽い身のこなしで弾き返す。
やまない斬撃が空に降りかかるが空はその全てを受け止める。
「これが技術だよ」
空の剣は舞うように流麗だった。
大和の荒々しい剣筋を、まるで赤子と遊ぶように受け流し、時に一閃で押し返す。
力と力のぶつかり合いは、瞬く間に技と技の攻防へと変わっていた。
「ぐっ……!」
大和の両腕に重圧がのしかかる。
攻めているはずなのに、攻め込まれている錯覚。
圧倒的な剣術の前に、彼の大剣は次第に軌道を乱されていく。
そして――
「ふっ!」
鋭い一閃。
空の剣が大和の大剣を弾き飛ばした。
鉄塊が宙を舞い、虚無の大地に突き刺さる。
「……ッ!」
大和は息を荒げ、膝をついた。
敗北を悟る。
空は一歩進み、彼を見下ろすことなく穏やかな声で告げた。
「君は素晴らしい力を持っているね。暴走を制御するなんて、普通の人間には不可能だよ」
大和は悔しさを押し殺し、低く唸る。
「……だが、それでも届かねぇ……」
空は微笑んだ。
「届くさ。だって君の【バーサーカー】には、あと二つの形態が眠っているから」
大和の瞳が見開かれる。
「……なに……?」
快斗、美咲、武流も息を呑む。
【バーサーカー】の先――その言葉は、彼らにとって未知そのものだった。
空の笑みは、ますます愉快そうに深まっていく。
「まだまだ遊べる。君も、そしてこの世界もね」
――異空間の戦いは幕を下ろし、しかし新たな火種を残したまま。




