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第7話 魔王軍、カフェで炎上するってよ

 


 ーー翌日。



 異世界最大の話題となった『MAOU CAFE』は、SNS(※スピリチュアル・ネザー・ストリーム)で盛大にバズった。



 そして今ーー。



「開店前から長蛇の列だとぉおおぉおぉお?!?!」



 俺は、目の前の光景に目を疑った。魔王城の外壁をぐるりと囲むように、お客様が列を作っているではないか!!! 中にはコスプレしてきている人までいる。



「『魔界の推し活』ってタグで盛り上がってるみたいッス!! これもちもちで美味しいッスね!!」

「魔界の推し活……誰が推されているんだ……」



 カゲマルが、太いストローで黒い玉をすすりながら報告する。それはタピオカか? ここにもタピオカたるものがあるのか?!



「それは一体何を飲んでいる!!!」

「暗黒のキャッサバ!! 向かいの屋台に売ってたッス! 『MAOU CAFE』の人気に便乗して、この辺は露店が出始めてるンスよ~~」

「経済が回り始めてるということか?!?!」



 きっかけはなんであれ、これは良いことだ!!! しかし、事件はここからだった。



 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー

 ーーーー



 厨房からイヤな煙がモクモク立ち上る。なんだこの煙と臭いは!!! くっさ!!! こげくっさ!!!



「ちょっ!? 何?!?! って何か燃えてる!! 誰か火事ぃいいぃいい!!!!」

「違います。これは『新メニュー:闇のスモークスフレ(くろこげver.)』です☆」



 グランゼルドがキラキラした笑顔で、俺に報告する。会議室のスリッパを握りしめ、グランゼルドの頭を叩いた。



「失敗しとるやないかぁあぁぁあい!!」

「もうっ! 失敗ではありません~~! 魔王様、試食して『これは闇を感じる』って好評でしたよ?」

「俺も感じるよ!!! 失敗したスフレにな!!!」



 これで問題が終われば良いのだが、そうはいかず、さらに問題は続く。



 バロン卿がお盆の上に乗ったラテを、笑顔で客のテーブルに置いた。


 

「お客様、注文の『堕天使の黒蜜ラテ』をお持ちしました」

「これ、コーヒーに醤油入ってません?」

「えっ、それが黒蜜だと……」

「黒蜜なわけあるかぁあぁあ!! お客様大変申し訳ありません!!! 今、新しいものをお持ちします!! 味覚まで混沌にすんな!!」



 厨房は炎上、メニューはカオス、客は混乱。



 それでもなぜか客足は途絶えることはなく。もう、ここまで来ると、何が起こっても全部ネタになる、とポジティブになれる気がする。



「これぞ、真のエンタメ空間……!」

「胃袋より精神が満たされるぅ~」

「やばい……クセになる……」



 うむ、好評!!! 異世界の民が耐性高くて良かった!!! もうそれに尽きる!!! 手のひらを目元に当てると、涙が溢れた。



 感傷に浸っていると、魔王がバタバタと駆け寄ってきた。



「みんな、大変!! 今日の売り上げ金、誰かが持ってっちゃった!!」

「ぇええぇええぇえ!!!!」



 魔王軍、再生資金が!!! 一体誰が!!! 下級魔族か?!?! くそがぁあぁあぁあ!!!



 カフェの隅々まで探しても、カゲマルが忍法で調べても、全く見つからない。終いには、グランゼルドが占いを始めたが、見つからず。



 バロン卿が時空の歪みから資金が云々とか言い出し、魔王がスリッパで俺を殴った。



「ツッコむ相手が違ぁあぁあぁあう!!!!」

「歪みの間から資金が…その…あの…つまり……」

「金がなくった!!!!」

「う、うん……」



 混乱の中、俺は確信した。この魔王軍に、平穏など訪れない!!! でも、どこか心が燃えていた。



 カフェは成功……してる。(たぶん)



 魔王軍の結束も、少しずつ強まってきた。(はず)俺のツッコミスキルも、Lvが上がってる。(気がする)



 よし、次こそ完璧に運営してみせる!!! 異世界でも、俺はやれる!!! だが、売上金盗んだやつ、許すまじ!!!!



 覚えておけよ。盗っ人め。制裁の神器(※スリッパ)で存分に突っ込んでやるーー。


 


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