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第5話 魔王軍、カフェ始めるってよ



「いや、だから……なんでこうなるの……」



 俺は額を押さえながら、目の前に広がる『現実』を見つめた。



 ここは魔王城、中庭。普段なら兵士の訓練やら魔物の集会やらで、殺伐とした空気が漂っているはずだが、今日は違った。



「いらっしゃいませ~~☆ 魔王軍カフェ『MAOU CAFE』へようこそ☆ 本日のおススメは『漆黒のブラッディ・ナイトメア・パフェ』です☆」

「語呂が重い!! 注文しづらい!!」



 グランゼルドがエプロン姿で、キラッキラのウィンクを決めている。残念ながら、イケメンだ。いや、そうではない、何がどうなって、こうなったのか。



 そう、それは遡るほど2日前。会議中に発覚した魔王軍、財政難から始まったーー。



 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー

 ーーーー

 


「えー……予算を、具体的に申し上げますと……その…えっと…今月の収支は…つまり赤字です」

「赤字~~~っ?!」

「『闇の結晶』の価格も暴落したし、魔獣の育成費もバカにならないし……てか、グランゼルドが魔王城のシャンデリア全部『純金製』にしたせいだろ!!!」

「だって☆ ギラギラしてた方がカッコよくね?☆」

「バカかよ……」



 しょうもない理由すぎる!! 悲しみのあまり両手で顔を隠した。バロン卿の冷ややかな目がグランゼルドに突き刺さる。



「もはや戦力以前に、経営破綻寸前だよ……」

「よし、副業だ」

「決断はいいな、おい!!」



 そして魔王様が満面の笑みで言い放ったのが、あのセリフだ。



「副業……それはすなわち、我が理想郷の布教活動……!! 世界征服カフェカフェ・ド・ディストピアの開店を、ここに宣言する!!」

「ダサい!!!! ダサ過ぎる!!! 頼むから名前だけでもやめてくれぇえぇえぇえ!!!」



 そんなわけでーー



「開店初日、始まったぞ……」

「オレ、カフェの制服似合ッてるっスかね?!」

「忍装束の上からエプロン着てる時点でアウトだろ!! せめて脱げよ!!」



 ちなみに、魔王様は『漆黒の給仕長』という謎ポジションに就いており、キッチンで「お客様に混沌(カオス)を届けたい」とか言いながらコーヒーを漆黒に染めている(※ただの焦げた豆)。



「さーて、最初のお客様のご来店です☆」



 カランコロンとドアのベルが鳴る。魔王軍カフェ初のお客様が来たようだ。



「こんにちは~って、えっ……ここ、ほんとに魔王城ですか……?」



 入ってきたのは、村の女子高生風の子たちが数名。(女子高生ではないが)なんでだ。何故、こんなにも魔王城に気軽に来れるんだ!! 仮にも魔王城だぞ!!!



「安心してくれていいんだよ☆ 我ら魔王軍、接客は優しさと真心と愛でお届けします☆」

「どこがだ!! 既に手のひらの上に魔力溜めてるやつにだけは言われたくねーよ!!! 昨日、接客研修で『お客様に魔力で圧をかけるな』って指導したばっかだろ!!」

「これは愛のダークボール(魔力)です☆」

「育んでないで捨ててこい!!!」



 ちなみにその接客研修ではーー。



 『笑顔で接客しろ』という指導に対して、「常に笑ってますよ?」と、満面の“狂気の笑み”を見せてくるやつが続出した。やはり、腐っても魔王軍……。笑顔は無理か。



 『お客様を驚かせるな』という注意には、「つまり、気配を消して背後に立てってことですね☆」違うけどな。やはり、腐っても魔王軍ということか……。



 もはや接客研修じゃなくて、悪の組織、新人研修だったーー。



 混沌、いや、混乱の営業初日。果たしてこの魔王軍、無事に副業できるのか?! 懸念で胸が堪えるわ!!



「お嬢さんたち、『悪のアフタヌーンティーセット』はいかがですか?☆」

「もうっ!!! ネーミングセンスが致命的なんだってば!!」



 ーー続く!!

 


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