表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

第4話 魔王軍、金欠につき副業はじめました



「では、世界征服会議を、定時に開始します!!」



 俺の号令とともに、ようやく世界征服会議がスタートした。なんと、本日初めての定時スタートである!!! これは奇跡だ。もはや、天変地異の前触れかもしれない!!!



 だが、議題を読み上げた瞬間、会議室に不穏な空気が漂った。



「さて、次の議題は【軍の財政難について】です」

「ざ、ざいせい……?」



 魔王ルヴァンが不安そうに眉を顰める。そう、我が軍は、赤字だ。(悲報)過去の魔王様たちが見栄を張って、金をばら撒いたらしく、長年のツケが今になって、のしかかってきたらしい。



「要するに、お金が足りてませんって話だ」

「ぇええぇえぇえ?!?! 我ら魔王軍が、金欠~~~っ?!?!」



 魔王がマントをバサァッと翻し、椅子を倒した。またか。無言で、魔王様の椅子を元に戻す。



「軍の活動費が足りないってどういうこと?! 黒コーデの布代は?! マントのクリーニングはどうなるの?! ユニコーンスリッパは?!」

「そのスリッパは魔王費で落とすんじゃなくて、自分の給料で買ってくれ!!!」



 財政報告書を広げながら、ひとつひとつ丁寧に説明していく。この赤字はこいつらが思っている以上に、かなり深刻なものだ。



「このままだと、軍の食事もカットされます」

「なん……だ…と……? オレ…あんぱんと牛乳がないと隠密活動が出来な……」

「刑事の張り込みか!!! あんぱんより朝昼晩の飯の心配をしろ!!!」



 叫ぶ俺を無視して、バロン卿が静かに口を開いた。



「我々の予算状況はまさに、資金の枯渇という名の砂漠を、希望という名の水筒ひとつで渡るが如し…えと…つまり…その…金がない」

「長いわ!!! 最初から金がないって言え!! というわけで」



 俺は資料を机にドンと置き、ホワイトボードを手のひらで叩いた。



「我々魔王軍、節約と副業を始めます!!」

「ふ、副業~~~?!?!」



 会議室が揺れるほど、ざわめいている。いや、揺れたのはグランゼルドが驚いて机をひっくり返したせいだ。何やってんだ、マジで。



「どんな副業?! ねぇっ!! ボクにできる可愛い系とかある?!」

「お前はまず『魔王業』を全うしろ!!!」



 魔王業の仕事の半分くらい(むしろほぼ全て)を俺が代理でこなしている。つまり俺は、ただの、社畜だ。ホワイトボードに、いくつか副業候補を綴る。



「まず、魔王軍グッズの販売」

「ほう……マントとか?」

「違う、スリッパだ。君らのボケ頭を叩いたスリッパを【神器レプリカ】として売る」

「マジか!!」

「制裁の神器を売って大丈夫なの?!」

「大丈夫だ、問題ない(スリッパだから)」



 下位魔族の魔王ファンなどがきっと買うだろう!!! 低コストだし、売れれば儲けが出る!!!



「さらに、カゲマルの忍術ショー」

「オレの出番ッスか!!! 口から火とか吹いちゃうッス!!」

「えっ、忍って口から火吹けるの?」

「サスケじゃないんだから出来るわけないッスよ~~」

「出来ないんかい!!!」



 さも出来るかのように言うな!!! 一瞬でも期待した俺がバカだった!!!



「そしてバロン卿の演説会……は、需要あるか分からんけど」

「需要とは、すなわち時代が私に追いつくか否かの話であり」

「いや、うん、いいよ。結論、需要ないでしょ、知ってる」



 議論は思いの外、白熱し、会議室はカオスに包まれた。中々、話がまとまらないそのとき、ルヴァンが静かに口を開いた。



「……僕、魔王カフェ開きたい」

「…………は?」



 その、頭おかしい提案(失礼)に全員が固まり、白く濁った目で魔王を見る。お前だけだ、目がキラキラしているのは!!!



「ねぇ、どうかな? 僕が黒エプロンして、『ご主人様、世界征服の準備は万端ですか?』って言うの」

「『一緒に人類を冥土に送りましょう!』ってか!!! やかましいわぁああぁあぁあ!!!」



 常備していた制裁の神器(※スリッパ)で魔王の頭を叩く。今日も神器が大活躍だぜ……。



「でもボクがやりたいって言ってるんだから、みんな喜んでやるよね?」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」



 パワハラですか、このやろぉおおぉおぉお!!!!



 果たして、魔王軍の副業はどうなるのか?! そして、世界征服は進むのか!? 俺は進まない気しかしない!!!



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ