第14話 混沌拡散計画、魔族文化祭(※計画倒れ)で無事死亡
ーーそして、来たる『魔界スイーツフェス』当日。
俺が目を覚ました時、もう既に空は不穏なピンク色だった。朝焼けというより、何かが爆発したような色合いである。スイーツカラーとでもいうのか!!!
もはや、嫌な予感しかしない。
「グランゼルド。前日準備で変なことしてない?? 空の色が変なんだけど」
「ふっふーん☆ 今回は気合いを入れて、徹夜で『自己発光するマカロン』を並べたんですよ☆」
「スイーツが空を照らしてんの?! だから空があんな変な色に?!」
「いつもと違う感は大切だと思います☆ インパクトは大事なんですよ☆ ほら、混沌指数もバッチリ全体に上昇中です!!☆」
「これは拡散になるのか?!?!」
魔王軍敷地内の広場に設営された特設ブースでは、すでにスイーツを求めて列をなす魔族たちがざわつき始めていた。だが、違和感はすぐに現れる。
俺は人混みを目を凝らして見ていた。いた。いたぞ。あいつが!!!
客に混じり、異様に姿勢が良く、腰にホルスター、そしてメモ帳を持った怪しい人物。
銀髪をポニーテールに結い、めちゃくちゃ不自然なサングラスをかけ、スイーツの屋台を一つ一つメモしながら回っている。
「……あれはクローディアッスかね?」
「どう見てもクローディアです本当にありがとうございました」
バレバレもいいところである。
なぜサングラスなのか。なぜ羽を折りたたんでいるのに、背中がふわっと光っているのか。なぜそんなに真顔でチュロスを齧っているのか。ツッコミどころが多すぎる。
「……混沌指数、反応なし。……これが『混沌』か……?」
何か悩んでいらっしゃるようだが、これ、混沌というより『魔族文化祭』だから!!!
そう。我々の目論見は失敗だった。
『混沌を広げる』どころか、魔族たちはスイーツを心から楽しみ、むしろ『平和指数』が上昇していたのである。
子どもたちはキャッキャしているし、老魔族は「うまいのぅ……」とか言ってるし、クローディアですら、「……この『カオスもちぷよロール』くせになるな……」とか言って、3秒に1回メモを取っていた。
「参謀、あの人ほんとに査察官なんッスか??」
「俺も今は分からん……」
この計画、結構、穴だらけだったのでは?? そもそも俺が中心だったんだよね?? まず俺が魔族文化祭(※違います)を巡回しないとダメなのでは?!
いや、待て!!! 巡回する=魔族文化祭楽しむ=平和指数上昇?!?! なんだこれ?!?! 拡散にならねぇ!!!
こうして、魔王軍による『混沌拡散計画』はあえなく頓挫し、代わりに『魔界スイーツ文化』が天界にまで流入する兆しを見せることとなった。
この後、天界に『もちぷよロール』が輸出され、クローディアが天界経済庁から表彰を受けることになったのは、それはまた、別の話ーー。




