無能力者vs学園教師1
訓練場には、Fランクと評価された生徒たちが集められていた。その中に、一ノ瀬 惟斗もいる。訓練場の中央で指示を出すのは担任の分谷 操人。彼は低身長ではあるが、鋭い目つきをしており、どこか冷酷さを感じさせる教師だ。
「いいか、お前たちの能力に合わせて、それぞれの訓練をしていくぞ!」分谷が指導を始めた。
訓練が進む中で、分谷の目が一ノ瀬に向けられる。「一ノ瀬、お前はあっちの部屋でも行ってろ。無能力者にはそれがいいだろ?」その言葉に、周囲のFランク生徒たちがくすくすと笑い出す。だが、一ノ瀬はその反応にまったく気にした様子を見せず、ただ無言で指示された部屋に向かった。
重いドアを開けて中に入ると、そこには今着ている制服とは異なる、非常に動きやすそうな服が一着置かれていた。一ノ瀬はそれを見つめ、(着替えろってことか?)と考えながら、言われた通り服に袖を通す。着替え終わり、静かに待っていると、部屋のドアが再び開き、分谷が現れた。
「なんか事情があるんだろう?」分谷は一ノ瀬の方に目を向け、淡々と言った。
「お前にとっては人前でこういう対応の方がいいと思ったが、それでも先の発言は撤回する、すまない」
一ノ瀬は無言で頷いた。沈黙の中、分谷は一瞬だけ表情を緩める。そして、「とりあえず、お前用の訓練はひたすら近接戦闘だ」とだけ告げた。一ノ瀬は真っ直ぐに分谷を見つめ、「ありがとうございます」と一言感謝を述べる。
「いいよ、お礼なんて」と分谷は肩をすくめた。「それに…」
次の瞬間だった。異常なまでの圧力が一ノ瀬を襲う。肌を刺すような殺気が全身を貫き、息が詰まる。驚いて構えを取る一ノ瀬の目の前に、さっきまで5メートル以上離れていたはずの分谷が一瞬で迫ってきていた。分谷は目の前で冷たく言い放つ。
「油断してると最悪死ぬぞ?」
そう言うや否や、彼の拳が一ノ瀬に向かって振り下ろされた。一ノ瀬は咄嗟にその拳を防ぎ、すぐに後方へ飛び退く。衝撃で胸が高鳴り、思わず口を開いた。
「マジか、あんた教師だろ?」
分谷は口元に笑みを浮かべ
「教育には飴と鞭が必要だろ?」と冷静に返した。
その瞳には、生徒を試すかのような鋭い光が宿っていた。