試験日
一ノ瀬 惟斗と月影 透奈は、実力至上主義の高校の試験会場の入り口に立っていた。周囲には他の受験生たちが集まり、緊張した面持ちで試験を待っている。
「今日は別々の試験だね。」透奈が言うと、惟斗は軽く頷く。
「お前は頭脳系で、俺は戦闘系だからな。」惟斗は淡々と答える。
「頑張ってね、惟斗。私も全力を尽くすから。」透奈は微笑みながら惟斗を見つめる。その目には強い決意が宿っている。
「まぁ、受かったとしても同じランクになれるかはわからないけどね。」
「だな、まぁそれでも2人とも受かればなんでもいいだろ」惟斗は少しだけ笑顔を見せて返す。二人は一時解散し、それぞれの試験会場へと向かう。
ここで少し説明
この能力至上主義の学園では合格後でもランク付けがされる
ランクはS、A、B、C、D、E、Fとありこの学園に入ったとしてもFランクのものは外の世界と同じように淘汰される可能性もある
惟斗は戦闘系の試験エリアに入った。
そこでは体力テストが行われており、試験の合格不合格は、各種目で自分の能力をどれだけ利用し、高い数値を出すかにかかっている。
種目は以下の5つである。
•20mシャトルラン
•100m走
•反復横跳び
•握力
•ソフトボール投げ
そんな中、惟斗は全ての種目でFランクの平均数値をそれぞれの担当係の人に聞き、それの前後を意識して数値を出していた。
淡々と試験項目をこなす中、最後の種目ソフトボール投げにやってきた。周囲の目を気にせず、Fランクの平均数値を意識して投げる予定でいた。しかし、その試験エリアには白髪で長髪、幼い顔立ちの先生が立っていた。生徒たちに優しい眼差しを向け、冷淡に見えながらもどこか温かみを感じさせる。
一ノ瀬がソフトボールを手に取り、投げる準備をしていると、係の生徒に「Fランクの平均数値ってどれくらいですか?」と尋ねた。記入係の子が答えようとすると、白髪の先生はその生徒の口に人差し指をあて、静かに遮った。
「Fランクの平均値は238mだよ。」
一ノ瀬はその数値に驚きつつも疑問を抱くが、白髪の先生はその表情を見逃さず、さらっと言葉を続ける。
「Fランクの生徒でも投擲力はあるみたいでな。」
一ノ瀬は、そんな先生の言葉に一瞬考え込むが、すぐにソフトボールを放つ。そのボールは空を切り裂き、雲を抜け、なんと241mの地点に着地したのだ。
周囲はその圧倒的な数値に驚き、ざわつき始める。驚愕の視線が一ノ瀬に集まる中、白髪の先生はわずかに口元を緩め、少し笑ったあとを一ノ瀬に向かって言う。
「あっはっはっは、いやぁすまないすまない、さっき言った238mは過去の試験での最高記録だ。それにしてもすごいね、君、見事に記録更新だよ。」
一ノ瀬は状況を察し、若干先生を睨みつけたあと、作った笑顔で返す。
「えー、本当ですか?ラッキーかなぁ?」