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Smoker's Garden -紫煙者の災園-  作者: 柿の種
Season2 第6章 護り、変じ、繋ぎ
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Episode18 - EB?3


無数の巨大な紫煙の手は、鼠の出現させる敵性モブ達を躱しつつ、その巨大な身体へと纏わりついていく。

攻撃的ではなく、抑え込むように。

胴体を中心に、四肢を縛り、地面へと押さえつけるように無数の手が鼠を捉えた。

瞬間、私の頭にガツンと重い衝撃が走る。

物理的なものではない。

【多重思考】によって強化された処理能力を持ってしても、巨大な相手を抑え続けると言う行為に脳のリソースが悲鳴をあげ始めたのだ。

一瞬、無数の手が霧散しそうになるものの、歯を食いしばって維持をして。


「負け、るかァ!」

『ヂュッァ……!!』


キツく、動けなくなるように絞めあげる。

周囲のプレイヤー達は、この光景に一瞬呆けたものの、


「ち、チャンスだ!今のうちに!」

「攻撃できる奴は手の隙間を狙え!」

「【魔煙操作】だな?俺だって!」


すぐに動きが生まれる。

攻撃に自信がある者、これまで効果的な攻撃を与えられなかった者が、紫煙の手を躱すように鼠へと攻撃を。

【魔煙操作】や、その他操作系スキル、能力を持つ者が私を補助するように支援を。

その場に居るプレイヤー達が一塊となって動き出した。

……お、少しだけど負担が軽くなったねぇ。

そのおかげかは分からない。

だが、頭に響くような鈍痛は少しだけマシになってくれた。

だが、強化されているアバターでも耐え難いのは変わりないのか、少しずつではあるがSTと共にHPまでもが削られていくのが視界の隅に観えている。

当然だ。

いつの間にか目の端から、鼻から、口からは血が流れ始めているのだから。


『拘束、感謝する』


耳に聞こえた、通話越しの感謝に少しだけ頬を緩ませながらも、私は拘束を維持し。

鼠のHPは急速に削られていく。

凡そHPの半分を切った所だろうか。血液によって、視界が白黒から赤に染まっていく中、私はそれを見た。


攻撃しているプレイヤーの中、娯楽区の方に位置する集団の中から巨大な紫煙の巨人が。

管理区に位置する集団からは紫煙を纏った巨大なケルベロスのような獣が。

治世区の方には、巨大な紫煙の剣が。

そして生産区からは、


「禍羅魔くんじゃん……良いね」


巨大な、火炎を纏った2つの紫煙のヨーヨーがそれぞれ鼠へと殺到する。

多数のバフを受けているのか、それぞれの攻撃は今までのプレイヤー達の総撃よりもHPを早く削り。

鼠は動けないまま、焦ったのかこれまで以上の量の敵性モブを召喚していく。

豹、象、ライオンなど、娯楽区で見た大きな敵性モブから、マントを羽織ったり杖を持ったゴブリン、機銃のようなモノを携えた鷲や、狼のような形になった血のスライム達が出現するものの……それらはすぐさま光の粒子となって消えていく。


相手が悪い、といえば相手が悪い。

仮にも、前から感じているように。

紫煙外装はその1つ1つが、一騎当千並の能力を持っているのだ。

そんな力をもったモノが、更にそれらによって支援されればどうなるかなど想像に難くない。


程なくして、鼠は荒く息を吐きつつもプレイヤーを……私の方を睨み付ける。

甲高い音が鼠の口から聞こえると共に、頭部に近い位置の紫煙の手を強く締め付けるが、その音は止まらず……瞬間。

鼠のHPが削り切られると共に、私は強い衝撃を身体に感じた。


『――レラくん!』

「お姉様!」


1YOUと、近くまで来て支援をしてくれていたのだろう音桜の声が聞こえ、私の身体を見下ろしてみれば。

小さくなった鼠の姿がそこにはあり、今にも私の首を噛み千切ろうと大きく口を広げていた。

所謂、ラストアクション。最後の足掻きという奴だろうか。

だが、


「抑える必要がないなら、こんなもんだよ」


私は今も下から立ち昇り続ける紫煙を使い、その大きな口を開いたまま固定させ。

その口の中に、ST回復薬……酒の飴玉全てを放り込んだ。

その瞬間、私の身体にしがみついていた鼠の体勢がぐらりと崩れ、力なく地面へと落ちていく。


「お酒の味は感じれるかな?自信作なんだ」


『酩酊』だ。

それも1つ口に含めば、視界が回る程度には強い酒精を含むもの。それをインベントリ内にある残り全てを口の中へと放り込んだのだ。

人ならば立っていられない程度には『酩酊』のスタックが貯まる量。

それを人よりも小さくなった鼠へと投与したのだから……その結果は見ての通りだ。

全身から酒気を漂わせながら落ちていくそれに、地面にいたプレイヤー達が殺到し。

程なくして。


【鼠都を討伐しました】

【討伐報酬がインベントリ内へと贈られます】


歓声があがる。

空中に居る私に振動が伝わってきそうな程に大きいそれを背に、すぐさま【隠蔽工作】を発動させその場から逃げるように去っていく。

……自意識過剰だろうけど、あの場に居たらどうなるかわかったもんじゃあないからね。

賑やかな場所は嫌いではないし、寧ろ好きな方だ。

しかしながら、過剰におだてられるというのはあまり得意ではない。

どうにか誰にも見つからずにマイスペースへと移動し、一息つこうと自分用の椅子へと腰を掛けた瞬間。


「おぉ、居た居た」

「お姉様、どうしてすぐに居なくなるんですか」

「うぃーっす。邪魔しにきたで」

「……すまない、俺は止めたんだ」


私はその場で顔を覆い、全力で脱力した。


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