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ロウエストの内幕  作者: 偽師
第一幕 『僕』
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第八話 権能


一颯「前回のあらすじ!…と、行きたいけど、メチャクチャ痛いので誰か代わりにお願い」

和葉「えぇ…。相手本気にして、自問自答した!」

怜「概ね合ってる。と言うか満点」

和葉「やはり天才だったか!」

怜「それはない。安心しなよ」

詩音・沙紀・千斗「笑」

和葉「はぁ!?そんな事より、俺は怜さんみたいな、レイモドキに足止めされてたんだけど!?どう言う事よ!」

怜「生物みたいな名前付けないであげてよ」

和葉「知るか!八話GO!」

詩音「もしかして。キレ症」



 茨が一颯を貫こうとしたその時、一颯を庇う様に目の前に女の子が出現した。


 自分の腰…いや、それよりも長い髪を持っており、5歳児の様な見た目をしている。少女はプラチナブロンドの髪に、一颯の右目と同じ、赤い両目を持って居て、異質な雰囲気を纏っている。いや、そう見えるだけかも知れない。


 異様な雰囲気に見える理由を上げるとすると、色々と言葉は出てくるが、1番は全裸だからであろう。とても11月にする様な服装では無かった。


 しかし、そんな事お構い無しに、すべての茨は速度を緩める事なく少女に激突した。


 体を突き抜け、血飛沫が舞う…かと思われたが、茨は彼女にぶつかった瞬間、ぶつかった衝撃の所為か、形を維持出来ずにバラバラの黒い塵へ崩壊した。


「アガ!?ガギゴガ!?ガガァ!?」


 突然の崩壊に驚く女の意識の事なんて露知らず、一颯はゆっくりと立ち上がる。先程したばかりの怪我から血が滴る事はない。完全に治っていた。そして、少女に一言命令する。


「殺して良いよ」


 命令を受け、少女は小さいその右手に、一颯が怜から貰った権能を取り出し、剣先を空に向けた。


「アバパ?アガゴク?」


 女がその行動に困惑した瞬間、女の子は剣を真っ直ぐ振り落とした。女との距離は離れ、振り落とす速度は非常に遅い。


「アガ?ギ——」


 風一つ吹かず、何も起きないと思われたその時、発言中の女は、奥のビルや、空に佇む雲こど真っ二つに切り落とされた。


 それを確認した女の子は後ろで倒れる一颯の方に体を向け、笑顔でこう言った。


「おはよう!一颯!」


———

——


「——って事があったんだよな」


「それで僕の方に…」


 店の地下。診察室にも検査室に見えるその場所で、和葉、一颯、怜は今回の任務について話し合っていた。怜は和葉の報告を聞いて、後悔を連想させる様な苦い顔に浮かべる。


「成程。俺に似た誰か…ね。嗚呼…放置するべきじゃなかったかなぁ…」


「…?どう言う事だ?」


「いや、昔…確か…今から数年くらい前、エリア1の園で、脱走事件が有ったんだけど知ってる?」


「脱走ですか?」


「そう。レート未確定の子供が2人ね」


 そう軽く説明した後、怜はその事件の詳細を語り出す。


「当時、10歳だった2人は片方が虐められていた事に耐えられずに脱走。脱走者は首謀者と予想される白雪奏。そして、虐められていた桐生渚。この2人が脱走したんだけど…レートがまだ付けられていなかった事、行動原理があくまでも人情と言う事で、納得はいかないけど大事にはならなかったんだけどね…」


 昔を思い出しているのか、遠い目をしながらそう言った。


「納得いかなかったってどう言う事だ?」


 怜のその言葉を聞いて、和葉は何かに引っ掛かったらしく、怜にそう質問した。怜は更に苦い顔をして、回答を述べる。


「……白雪奏。彼は俺と同じなんだよ。だから野放しには出来ないと言ったんだけどね…上は放置を貫いてたよ。一度出した結論を撤回したくなかったんだろうね」


「ん?同じって一体ど——」


 更なる質問を重ね様とした時、扉が開いて、翔が入って来た。その手には紙が握られている。


「結果出ましたよ」


「おっ。どうだった?」


 興味津々で翔から書類を受け取る。その血液検査の書類のF2細胞量の欄には132と書かれていた。怜はそれを見て、翔に意見を求めてみる。


「うーん。どう思う翔?」


「…どうって、流石に低過ぎると思いますね。前回は500程度だったのに今は100程度」


「そう。まぁ、分かってた事だけど…権能が発現した事で細胞の数がかなり少なくなってる。平均値以下。一般人よりも少ないのは流石に看過出来ないかな…」


 椅子の背もたれにもたれ掛かり、グルグル回転しながら頭も回す怜。外見からは予想出来ないが、かなり焦っている様だ。それを受け、一颯があの時の少女を出しながら聞いた。


「それは、楓の所為。ですかね?」


「私関係無い!少な過ぎて力出てない!一颯が悪い!」


 一颯の発言に、楓は全裸の全力で反論する。流石に全裸はよくないと「服は着ようね」と。一颯が自分の着ていた上着を着せた。一颯の身体に合わせたオーダーメイドの為、案の定、楓の手は袖から出てくれない。非常に不服そうな顔をしている。


「まあまあ、落ち着いて。悪いのは持ってない一颯だからさ」


 宥めるにしては失礼過ぎる一言。当然、一颯が小言を漏らす。


「…普通。遠慮って有りますよね」


「一颯には要らないもん!」


「えぇ…」


 しかし、楓は怜側に着いた様だ。一颯は困惑を顔に浮かべ、翔が思わず困惑を漏らした。そんな取り返しのつかない流れになってきた為に、怜が話を戻す。


「まぁ、どちらにせよ。今のまま任務に行くと、F2細胞が少な過ぎて攻撃1つで間違いなく死ぬね。肉体的な強化が必要だと思うよ」


「筋トレ?筋トレ?なあなあ。筋トレすんの?」


「まぁ、そんな感じ」


 筋トレの話が出てきた事で、先程まで何とも言えなかった和葉はテンションを上げた。怜は和葉に曖昧な丸を付ける。完全回答と言う訳ではなさそうだ。


「…まぁ、筋トレしつつ、F2細胞に頼らない戦い方。武術や剣術を習得しようって話だね」


「でも、一朝一夕では身に付きませんよね…」


「当然でしょ。簡単に身に付いたら敵が強くなって俺が困る」


「一颯弱い!」


 怜はそんな冗談を含めながらそう言った。一颯は楓の発言を無視し、楓を締まった後、更に質問を重ねる。


「怜さんに習うんですか?」


「俺?まぁ、それでも良いけど…権能が壊されたって言ってたから、剣術よりも武術を鍛えた方が良いと思うよ。その場合、俺はあまり教えられないかな」


 そんな曖昧な回答に、和葉が結論を求める。考えたくないのだろう。そうに違いない。


「…その場合どうなんだ?」


「別の平定官に依頼して、研修的な要領で泊まり込みで習うと思うけど…」


「残念だけど、引き受ける奴なんて居ないよ。レート5なんかと関わりたい奴居ないもん」


「残念だったなー」


「言い返せない…」


 翔の濁した発言など全く気にせず、椅子でクルクル回りながらハッキリと言う怜。そして、質問した側の癖に乗っかる笑顔の和葉。一颯は正論を受け反論出来ないでいる。


「なら、どうするんですか?」


「まぁ、アテがない事はないんだよ?でもなぁ…アイツに任せるのはなぁ…」


「…?あの…アイツって誰ですか?」


「そりゃ、アイツはアイツだろ」


「和葉。少し静かに」


 知力の低さ故なのか、ただただ馬鹿にしているだけなのか、それとも、ふざけたいだけなのか。場の空気を乱す和葉を怜は黙らせる。和葉は渋々頷いた。


「まぁ、アイツってのは神倉風和の事なんだけど…誰か分かる?」


 その言葉に、和葉と一颯は全く知らない様で疑問を浮かべる。翔は知っているがだけに、怜を止め始めた。


「…一颯を殺す気ですか?」


「えっ。死ぬんですか?」


「南無!」


 直球過ぎる質問に、一颯と和葉が反応する。和葉に関してはただの煽りだが、そんな事気にも止めず、怜は弁明を図る。


「違う違う。アイツだけなんだよ。レートで判断しない奴。後、F2細胞に頼らない様な奴ね。俺自身も実の所はF2細胞に頼るスタイルだし、他の受けてくれそうな奴等も、F2細胞依存だから教えられないの。それにコレは最終手段。使うつもりは全くないよ」


「絶対嘘だ。使うだろ」


「この流れだと使いますよね?」


 怜の言葉を聞き、和葉と一颯がそう断言する。怜は相手取るのが面倒になったのか、はたまた、相手したくなかったのか、2人の発言を無視した。


「まっ。頼むなら他の誰かも連れて行かせようかな」


 突然、良い事を思い付いた様にそう言う怜。何かを企んでいる様なその笑みが翔の不安を煽る。


(多分。連れて行かれるのは詩音だろうなぁ…)


 翔は遠い目でそう考えていた。


「いや、無視すんな!」


 無視された事に、1人遅れて気付いた和葉の怒声が響く。


———

——


 翌日。地下の訓練所で、怜と一颯の2人がいた。一颯は制服を着ている。それに重ね、赤黒い権能を構えている。


「とりあえず、テキトーに攻撃してきてよ」


 ポケットに手を突っ込んだまま、一颯を誘う。一颯は仕方なく怜に戦いを挑む。ただ愚直に怜に向かっていく。


「はい。単純」


 しかし、怜の軽い蹴りで尻餅をつかされてしまった。ポケットから手は出ていない。手は要らないと言う事だ。


「…流石に無茶ですよ」


「やってみなきゃ分かんないでしょ。俺が避けるのミスって転けて、一颯の攻撃が良い感じに頭に命中する可能性もあるし」


「…人生で何回攻撃させるつもりですか……」


 運が幾ら良くても有り得ない確率を上げる怜に、一颯に諦めが浮かぶ。


「まあまあ、早く起きて。もう一回やるよ。とりあえず、手を使わせたら勝ちね」


「…ポケットから出したらでお願いします」


「じゃ、それで」


 怜の了承を得た瞬間、一颯は楓を出した。全裸なのは分かっていたので、上着を予め投げ付けておく。


 しかし、その行為は徒労に終わった。何故なら、楓は服を着ていたからだ。一体から持ってきた服なのだろうか。それを気付かせてくれる様な一言を怜は放つ。


「半裸でやるの?痛いよ。絶対」


「えっ」


 当然、楓は一颯から出ているので出る時に奪えるのは一颯の服だけだ。楓は一颯のインナーを着ていた。黒いハイネックのノースリーブである。


 お陰で、一颯は半裸にアームウォーマーと言う変態の様な格好をしている。


「何でインナー!?」


「上着、袖邪魔!」


「正論だぁ…」


 楓の一言に反論出来ず、一颯は仕方なく楓に渡した上着を着る。


「じゃ。何処からでもどうぞ」


 この後、2人はボコボコにされた。


———

——


「もっと、連携取ろうね」


「一颯寝てるよ?」


「楓に言ってるんだよ」


 打撲で内出血ばかりで気絶した一颯の周りで、そんな会話が繰り広げられていた。


 第九話へ続く


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