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少し長いエピローグ それからの日々について2

 トリスタンも、

「そ、そうですよ。自分めらが、今まで通りのハルピュイアを守りますから」

 と言ってくれる。


 やがて、夕暮れ近くになって、私たちは我が家に到着した。

 西日を受けて、庭の柵の外にたたずんでいる人影が見える。


「……え!? ウィキンシャ!? ……さん!?」と思わず叫んだ。

「ふーっはっはっは! お疲れだったな!」


 私たちが馬車を降りると、日光のある時間にはとことん似つかわしくない、真っ黒なレザードレスに身を包んだウィキンシャが出迎えてくれた。

 

「ルリエル、あんたってやつは……とんでもねえな! 悪魔殺しとはな!」

「耳が早過ぎますよ……」


「別に、あんたの無事を喜んでるわけじゃないがな! とはいえ、あんまり無茶するのは考え物ではあるな! それにしても凄いな! 私が生きてるうちに、悪魔殺しを見ることになるとはな!」


 若干支離滅裂に私を称え(?)ながら、その視線は、ちらちらと私の後方に向いている。


「……ウィキンシャさん、遠慮せずに、トリスタンをねぎらってくれていいんですよ」

「は、はあ!? 今やほかの店の男子になったやつに、そんなことするわけないだろが!」


「そんなこと気にしないで。ほら、トリスタンも、ウィキンシャと話したいでしょ」

「は、はい……」


 トリスタンは、ウィキンシャの前に歩み出た。

 なぜか、ウィキンシャのほうは二三歩後ずさる。


「ウィキンシャさん。自分めのことを、心配してくださったんですね……、ありがとうございます」

「ば、ばっか! やめろよ! それより、軟弱者だったお前が、ずいぶんと頑張ったもんじゃないか、ええ!?」


 トリスタンは右手を握って拳を作り、顔の前へ上げる。


「はい。……前に、ウィキンシャさんに。今は、ルリエルに。鍛えてもらったお陰です」

「なっ……!? お前……! 立派にものが言えるように……なりやがって……!」


 横で見ていたダンテが、「そうか? 今のセリフくらいでそう思うか?」とキールに小声で言う。

 キールが、しっと人差し指を口に当てた。


「トリスタン! 辛かったらいつでもアウィス・デンタータに戻って来いなんて、あたしには言えない! もともとお前には向かない環境だったし、なによりルリエルとの仁義にもとる! お前のためにもならないからな! でも、お前のことをいつも気にかけているやつは、いる!」

「はいっ! ありがとうございます、ウィキンシャさん!」


 ウィキンシャが大きくのけぞり、赤面した顔を腕を上げて隠して、

「あ、あたしのことじゃねええええよ! とにかくだ、お前はルリエルのところで、大きく成長しろ! ふはーっはっはっは!」


 裏返った交渉を響かせて、ウィキンシャは、いきなり傍らから現れた馬車に乗せられ、帰っていった。


「大事に想われてるわね、トリスタン」

「……はい。ルリエルもそうですが、あの人がいなければ、自分めはここにこうしていません。自分めはいつも女の人に助けられて、……少しでも、そのご恩を返したくて、今を生きています」


 トリスタンが、温かい瞳で、去っていく馬車を見つめている。

 ……いつも思うんだけど、あの馬車のスタッフ、待機してるの大変じゃないのかな。


「……色々、慌ただしかったですが、ルリエル」とキールが言った。

「うん」


「帰ってきましたね。私たちの家に」

「うん……。そうだね。ただいま」


 そして四人は、ハーブのいい香りがする庭の通路を通り、本来はお客様用の広い玄関を、一緒にくぐった。

 そんな私たちを待っていて、迎えてくれたのは。

 二週間余りの間、とりわけトリスタンまでもが秘密裏にヴァルジへ発ってから、全ての予約の調整と謝罪、庭と部屋の手入れとクリーニング、その他諸々の全てを一手に引き受けてくれていた、カルスからの矢のような苦情だった。


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