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第八話「束縛の女神」

説築家と呼ばれる男は瀕死状態にある虎男にこう言うのだった。

「〝女神〟をどこへやった」

「し、知るかい!そんな〝異〟世界遺産!俺は知らないぞ!」

「女神は遺産じゃねぇ!」

その女神とやらを遺産にされたのが気に食わないのか悪魔族デビアの男ラッセルは指を鳴らし、空間に黒い平面の三角を浮かべた。

「な、なんだあれ?」

悪魔族デビアだけに使える黒魔術;(∩´﹏`∩);天使族わたしたちが使う白魔術と反対の位置にある禁忌の魔術…だよ((( ´ºωº `)))」

アイザは胸の中で泣き叫ぶ悪魔幼児ゲオルクをあやしながら説明してくれた。悪魔と天使はイメージ通り対極にあるらしく、三角形くろまじゅつが膨れ上がる度に天使アイザの羽が震える。

銀髪の男ラッセルが浮かべた漆黒の三角形は虎男の心臓を貫く…ことなく、僕らの方に飛んできた。

「だぁークソ!うるせぇーんだよ!!」

怒号と同時に放たれた黒三角は鼻先スレスレでかわされる。

「ちょ、ちょっとΣ(゜ロ゜;)危ないじゃないΣ(⚭-⚭;)」

さらに鳴き声を大きくさせるゲオルク。悪魔ゲオルクでも大人の悪魔は怖いみたいだ。

シュペーラーが「アイザちゃん!逃げますよ!」と耳元で囁くが、彼女は逃げない。

天使に似合わない戦闘を楽しむような笑みが口角を上昇させた。

「ノブユキ…ゲオルク預かってて」

「え、あ、あぁ」

白い手から解かれた悪魔ゲオルクは未だ泣き止むことを知らず、思うまま恐怖を喉からあげる。

「たかが天使が悪魔に何かやろってのか…?」

悪魔の羽でこちらまで羽ばたきながら落とされた言葉にアイザは身体を震わした。しかし、負けてはいない。林檎がメラメラと燃え始め、黄色い肌を露出させていた。

「ゲオルクを…仲間を傷つけられて黙ってられるかっヽ(`Д´)ノ」

眉間に刻まれた皺をより一層深ませ、強い語調でそう言い切ると、人差し指を悪魔(正面)に思いっきりつき立てる。

そして、「F=GMm/r2…」と何やら呪文のような数式を並べると、あら不思議!側で無重力を楽しむ林檎が八等分に切られたではないか。

最近の異世界は包丁すらいらないのか。そんな無関係なことを考えている間にも八つ子の林檎はナイフの要領でラッセルに飛んで行った。

「ククク…」と口の端に笑みを浮かべる悪魔男は自慢あくまの羽で高く飛び、空中で林檎を避ける。

どうやらこの林檎、空中浮遊だけでなく追跡機能もあるようで華麗に空飛ぶラッセルの後をロケットランチャーのように追いかけた。

「潰れろ(>_<。)」

途中、アイザの口がそのように動く。

血走った瞳ではえを見つめる如く悪魔を追う。しかし…

「どうしたの?アイザちゃん、怖い顔して」

「( ゜∀ ゜)ハッ!」

気づけば辺りはお祭り騒ぎ。賑やかな黄金色のライトが街を照らす、平和な日常だった。

「な、なんでここに…( ・᷄-・᷅ ).。oஇ」

訳が分からない!とアイザは周辺を見渡す。

僕の顔だけでなくシュペーラー・菓子を頬張るシュタイン…そして、胸の中にいるご機嫌なゲオルク。

あまりの衝撃に落としそうになる。

「な、何で私こんなところに(?_?)」

「どうしたの?」

「私さっきまで悪魔と戦ってたの( ˙_˙ )」

「え?あ、悪魔?」

刹那、耳を蝕むような女性の悲鳴が鼓膜を殴る。

そして、大勢の悲鳴や不安げな足音が響くと、人々絵に描いたようにパニックに陥った。

「な、何?(・ω・*≡*・ω・)?これって…Σ(´□`;)」

アイザと林檎が周囲を見渡す。突然の轟音に彼女に抱かれたゲオルクもわんわんと涙を流し始めた。

「何があったんでしょうか?」

「さぁ?見てみようよ」

悲鳴が聞こえた方向に走っていく三人をアイザは追いながら次のようなことを考えた。

(これって説築家ラッセルの力…( 。ω。)?)

(時間が戻っているσ( ・Δ・ )?)

頭を占めるは無数の?五分ほど戻った世界に気づいたアイザは虎の首根っこを絞める悪魔ラッセルにこう問いかけた。

「あんた!時間を戻したのね( ・᷄ὢ・᷅ )」

「…おい、お前何言ってんだ??」

と、シュタインから温度差のある言葉を放たれたが、アイザは無視し、続けてこう言う。

「今度は逃がさない(*`Д´)ノ!!!」

G = 6.67×10-11 N⋅m2/kg2…などとまたもや公式をぶつぶつ呟きながら、空飛ぶ林檎に指で指示を出す。

すると、真っ赤な林檎の枝が巨大な利き手に変化した。それはただの枝。しかし、何年も時間をかけて掘られた木造彫刻より迫力をまとっていた。

「フン」と鼻で笑った悪魔は鋭い爪が光る右手を前に突き出し色んな三角形を生み出していく。

闇色にどよめくそれは林檎のを容赦なくぶった切り、こう言う。

「俺は悪役じゃねぇーんだぜ?捜し物を問うてるだけさ」

余裕の色を顔に塗りたくりながらラッセルは黒魔術に力を込める。

「捜し物って…な、何(๑• •๑)?」

「『束縛の女神』さ…名前ぐらい知ってるだろう」

歴史的〝異〟世界遺産の中でも珍しい人間遺産。

第三地区にある束縛のシンボルである女神は不死身にして何千人ものの命を摘んだ世界的大犯罪者。

最終的には目を合わせるだけで石化してしまうと呼ばれてしまった女神は数百年前に『スフリーマントル刑務所』に引き取られ、名の通り束縛されたはず。

今も塀の中にいるはずの彼女を探しているということは脱走でもしたのか?

「犯罪者がどうしたっての…(。• . •。) ??」

「犯罪者じゃねぇー!女神は俺の彼女だ!」

年の差カップルなのか否かはさておき、ラッセルは怒りを魔法に込め、林檎を失った無防備なアイザを狙う。しかし、手から零れそうになった黒三角は急遽手の中に引っ込む。

「なんだぁ!?お前?」

「ノブユキ…」

気づいたら僕はラッセルとアイザの前に庇うように立っていた。

数十センチ上から見上げる悪魔の表情は黒魔術使わずとも身体を固まらされる。

「フフ…仲間ごっこもここまでくると感動するなぁー…じゃあ、死んでも文句ねぇーよなぁー!」

やばい…死ぬ…!と思考が一色に染まったのも束の間、僕は悪魔の手によって彼方に吹き飛ばされてしまった。

「ノブユキッ!」

吹き飛ばされ、世界が回る。180度、360度と視界が回転し、壁に叩きつけられた僕が最後に聞いたアイザの悲鳴。ここから意識がない。

「さーて…次はお前だな」

「クッ( ̄^ ̄゜)…クソ( ´ ᾥ` )」

怯まずに睨むアイザは心の底から叫んだ。心にうごめく恐怖を逃がすかのように…

「助けて!団長ガオスッ!」

名前で呼ぶなという約束はどこへやら。

しかし、無駄ではなかったらしい。

またもや、黒魔術の動きが止まる。

悪魔ラッセルの右手首が掴まれたのだ。

「クソッ…!魔人族おまえか…」

ラッセルが殺意が込めて睨むのは団長ガオス…ではなく、魔人族マジリアの虎男だった。

首根っこを労るように触りながら魔人族マジリアの男は悪魔に近づく。まさに虎が最高の獲物を見つけた時のように、鼻息を荒くし、目も血走っている。

「な、なんで(´゜д゜`)?」

「五分時を戻したからだよ。戻す前と全く同じの五分後とは現れないことが多いからな…」

アイザに説明するはずが、ラッセルにも皮肉のように告げた男。

顔を引きらせる悪魔に殺意を込めた笑顔を向けた。。

虎男マジリアは獣臭い拳を握り締め、そして、狩る。

「くたばれ!」と、言い張ると悪魔の引きる横顔目掛けて拳を放った…しかし、

「ガバッ!」

虎の口からびたびたと真っ赤な鮮血が垂れた。

あまりの痛みに虎は膝をつく。

「残念だったな…」

そんな言葉とともにラッセルは見せつけるように手のひらに黒魔術さんかくを浮かべた。

仮説おれの弱点を知っていたか知らねぇーが、仮説のうりょくなんて無くても魔人おまえなんか倒せるんだよ」

へへへっと鼻につくような声で笑う悪魔が次に狙ったのは…アイザ。

殺気を感じた少女は急いで林檎を再生させるが、間に合わず…

「きゃっ(☆ϖ☆)©⌒」

ラッセルの手のひらから飛び出た黒魔術さんかくが避けようと右に逸れたアイザの肩を掠めた。

身体の中が耐え難い熱に犯され、血飛沫が舞い上がる。

黒魔術は天使と相性がいいらしい。雪原のような白い肌が段々と黒く染められていく。

「クククッ…お前もこれでしめーだ」

「やばっ/゜(๑°口°๑)゜\…し、死ぬ0(:3 )〜」

刹那、悪魔ラッセルの動きが止まる。

いや、動きを止められたと言った方がいいのだろう。

「どいつもこいつも…何だってんだっ!」

何度も止められる攻撃に嫌気がさした敵ラッセルは顔を別の意味で引き攣らせながら、背後を振り返った。そこには…

「ガオス…(≧∇≦)」

2m近い身長に憎悪・嫌悪…この世の全ての汚い感情で作られたサングラス。この特徴はガオス…いや、『百十字軍』団長しかいない。

アイザなガオス!と呼び捨てにされたことは気にしていない様子で悪魔ラッセルに向かい四肢を下ろしていた。

「『百十字軍』の団長か…」

「N=4πkQ=Q30」

理系が苦手な僕からしたらさっぱりな暗号が口から放たれた途端、団長ガオスを軸にして磁気が発生する。

「チッ!無視かよ!」

と悪態をつくと、格上相手用に黒魔術さんかくを利き手に纏わせた。

手の周りで膨れ上がる黒三角を風を切って胴体に拳を打ち込もうとしたが、動きが団長ガオスの数センチ前で止まる。

「な、何だ!?こりゃあ!?」

悪魔の牙を輝かせ、はてなマークを浮かばせる。止まったかと思いきや、全身がだんだん吸い込まれていく感覚を覚えたからだ。

「何なんだ…あれは」

「団長の法則『ガオスの法則』は血中の鉄分も引き寄せます!…って!そんなことより僕らはノブユキを助けに行きますよ!」

「お、おう!」

信幸ぼくからゲオルクを預かったシュペーラーは優しく微笑みかけた。団長が来たのが嬉しかったのか、ご機嫌にバブバブ!と声をあげる。

「クソ!体が…」

体の主導権を完全に乗っ取られたラッセルは無様にも乱暴に片足を投げ出し、頭部にクリーンヒットした。

「カハッ!」と拍動に押し出させるように血液が吹き出し、意識を天国へと飛ばす。

「お、終わった…ε-(´∀`*)ホッ」

「…」

敵を倒した後無言を貫く団長。周囲の歓声にも踊らされずその口を静かに閉じていた。

「だ、団長〜(T_T)…怖かったぁ〜(´;ω;`)」

涙を双眸に溜めながら駆け寄っていくアイザ。

異世界の住人でも子供は子供。突然の戦闘に不安定だったのだろう。

と、離れていく背中を見つめながら考えていると、ふとアイザの動きが止まる。

「どうしたんですか?アイザちゃん」

背中からでも伝わってくる違和感にシュペーラーがゲオルクをあやしながら言葉を投げた。

相変わらずサングラスがあってもなくても無表情な男にアイザは真剣味を増した表情でこう言うのだった。

「ま、まさか…Σ(・ω・ノ)ノ偽物ドッペルゲンガー((( ;゜Д゜)))」

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