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気まずい

 やばいここは逃げるべきなのか。

 いやなんで逃げるんだ。

 ここはとりあえず挨拶しておこう。


「ど、どうも」


「いやいや、どうもじゃなくて。なんで?」


 そりゃ、そうなるよね。


「あー、昨日たまたま公園にいたらーーー」


 俺は昨日会ったことと、今日も約束をしてサッカーを教えていたことを簡単に説明した。



「そうだったんだ。なんかごめんね、啓太が」


「あ、いやいや。こっちも楽しかったし気にしないで」


「ありがとね。わざわざ送ってくれて」


 何これ。気まずすぎるでしょ。

 早く帰ろう。


「じゃ、じゃあ俺帰るね。また明日」


「あ、うん。また明日」


 背を向けて帰ろうとすると啓太が話しかけてきた。


「え、お兄ちゃん帰っちゃうの?」


 やめてこれ以上引き止めないで。


「あー、うん。夜ご飯まだだし。お腹空いてきたからさ」


 ここで俺は夜ご飯というキーワードを出したことに後悔することになる。


「じゃあ一緒に食べよ」


 最悪だ。


「だめよ、啓太。江場くんの家にもご飯あるんだから」


 新谷さんが啓太を止めようとする。


「やーだやーだ。お兄ちゃんとご飯食べる!」


「あーもうわかったわよ。江場くん、よかったらご飯食べてって」


 弟が言い出したら止まらない子だということを知っていたらしい。

 新谷さんは俺の顔を見ながら申し訳なさそうに言ってきた。


「あ、はい。じゃあお邪魔します…」


 俺も申し訳ないと思いながら新谷さんの家でご馳走になることにした。


 ーーーーーーーーーーーー


 新谷さんの家はとても綺麗だった。

 玄関はしっかりと靴が揃えられている。

 リビングもまたしっかりと掃除がされていることが目に見えてわかった。


 俺と新谷さんはとても気まずそうにしていたが、啓太はそんなことも知らず俺の隣で楽しそうに夜ご飯のカレーを食べていた。


「やっぱお姉ちゃんが作るカレーが一番美味しいや。明日もカレーがいい」


「カレーたくさん作ってあるから明日の朝もカレーよ。よかったわね」


「やったー。美味しいね、お兄ちゃん」


 啓太は満面の笑みで聞いてきた。


「美味しいね、めちゃくちゃ」


 俺はそう言いながら新谷さんを見た。


「べ、別に嘘つかなくてもいいわよ」


 遠慮とかなしに本当に美味しい。


「嘘じゃないよ。こんな美味しいカレー食べたの生まれて初めてだよ」


「そ、そう? ならよかったわ。まあでも生まれて初めっていうのは流石に盛りすぎ」


 正直な気持ちを言ってるだけなのに。

 照れてるのか新谷さん。


「嘘じゃないんだけどなあ。そんなことより新谷さんって料理とかできるんだね」


 正直いつもあの金髪女子の須藤さんといるから、料理とかするタイプではないと思っていた。


「ああ、まあね。少しだけね」


 恥ずかしそうに新谷さんが言うと


「お姉ちゃんはなんでもできるんだよ。掃除も洗濯も得意なんだよ! ね、お姉ちゃん」


 なぜか啓太が自慢してきた。


「もう啓太ったら。あんまり調子乗ってると怒るわよ」


「いやいやでもすごいよ。料理もできて、家事もしてるなんて。なんか女子高生っていうよりもお母さんって感じだよね」


 俺がそう言うとなぜか空気が重くなった。

 少し間を開けて新谷さんが口を開いた。


「いやいや、そうかな。こんなの普通だよ」


 今お母さんが入院中というのは聞いていたが、どうやら行ってはいけないことだったようだ。

 少しいづらくなってしまったし、もう時間もかなり遅かったので俺は帰ることにした。


「ごちそうさま。本当にありがとね。なんか色々ごめん」


 俺がそう言うと。


「こっちこそごめんね、なんか変な感じになっちゃって。少し送るよ」


 俺は断ったが、それでも送ってくと言ってくれたので送ってもらうことにした。


 ーーーーーーーーーーーー


 帰り道、今日一番で気まずかった。

 お互い無言のまま足音だけが聞こえる。

 俺は話題を頑張って探したが、さっきのことしか考えられなくなってしまった。

 一応聞いておくか。

 俺はこのまま考えていても、らちが明かないので聞いてみることにした。


「あのさ、聞いてもいいかな。お母さんのこと」


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