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出会い

 突然だが、みんなは人生とは何か真剣に考えた事はあるだろうか。

 某有名サイトには『人生とは、人がこの世で生きていくことである。』と書いてある。

 でも俺は、ただただ目的もなしにつまらなく毎日を過ごしていることを『生きている』とは思わない。

 俺は、半年前まではこの自論に基づけば生きていたと辛うじて言えただろう。

 別に楽しい毎日を過ごしていたわけではない。毎日が楽しいと思ったことはなかった。

 それでもあの頃の、サッカーをしていた自分は辛いことを全てを忘れて、なんとか『生きていた』と言えるんだろうな。


 半年前まではーーー



 4月6日、この日が来てしまった。

 なぜそんな嫌がっているのか。

 その答えは、この光景を見れば一目瞭然だ。

 校舎の昇降口の段差の前に紙が張り出されている。それに群がる人だかり。

 そう、今日は始業式。すなわちクラス発表である。

 ここは私立清祥高校。

 私立とは言うもののそんな大きな校舎ではない。

 多少綺麗ではあるが、公立とはあまり変わらない標準的な高校の校舎である。



 俺は、群がっている生徒達の後ろから自分の名前を探した。

 この距離だとかなり見づらいな。

 よく目を凝らして紙に書かれている文字を見ていく。


 2-1

 ーーー

 ーーー

 ーーー

 ーーー

 5.江場 愛斗


 おっラッキー。1組だったから早く見つけることができた。

 俺は、自分の名前を見つけ次第そそくさと自分のクラスへと向かった。

 おそらくほとんどの人は、ここで自分のクラスのメンバーの名前を確認したり、自分の好きな人のクラスを確認したり、友達同士でクラスについての喜びや悲しみを共有し合うだろう。

 でも俺は、そんなことを確認する必要はなかった。


 

 2年1組のプレートが貼られた教室に入った。

 そこには結構な人たちが集まっていた。

 中には違うクラスだけど、自分のクラスにはあまり友達がおらずわざわざ喋りにきた生徒もいるだろう。

 どうせそんな奴らは、学校がちゃんと始まれば仲良い友達グループができると思うが。


 そんなことよりも俺は、自分の席に着いた。

 窓際の後ろから2つ目。まあまあ神席だな。

 これなら授業中寝たり、携帯いじったりとやりたい放題できるな。

 俺は、こう見えて真面目ではない。どう見えているかわからんが。

 実際俺ってどう見えてんだ。

 そんなことを考えていると、担任の先生が来た。


「今日からこのクラスの担任の木下だ。よろしく。それでは早速、今日のスケジュールだがーーー」


 担任が木下先生と分かって、みんな喜んでいた。

 木下先生は、厳しいところもあるが優しくてとても生徒思いな先生だ。

 俺は、1年生の時も木下先生が担任だった。

 怪我で入院して、半年間学校に来れなかった俺がなんとか2年生に進級できたのもこの木下先生のおかげである。

 入院中毎日のように病室に来ては、その日の授業で扱った内容を教えに来てくれていた。

 木下先生が手続きをしてくれていなかったら、おそらく俺は1年生をもう一度やらなければならなかった。

 だから木下先生にはとても感謝している。


 そんなこんなでホームルームが終わり、始業式のため移動しようとしていると周りが騒がしくなった。

 もうみんな友達ができたのか。こいつらのコミュニケーション能力高すぎるだろ。

 中には、1年から同じクラスだった人達でグループを作って話していたり、同じ部活のメンバーで固まって話をしたりと様々だった。

 そんな時こんな声が聞こえて来た。


「ねえ、あの子誰。転校生かな?」


「えー、あんな子いたかな」


 真ん中で喋っていた女子3人組がこちらを見ながら喋っている。

 さすがに半年間学校来ていなかったとはいえ、酷すぎないですかね。一応初めの半年間は、真面目に来てた方なんですけど。

 自分の影の薄さに失望していると、突然喋りかけられた。


「なあお前、サッカー部のえびなんちゃらだよな」


 えびなんちゃらってなんだよ。しかもなんでえびまでは分かってるように言うんだよ。

 せめてえなんちゃらだろ。

 まあいいけどさ。


「江場ですけど」


「あー、江場ね。それだその名前だ。俺は、遠藤令(えんどうれい)だ。よろしくな」


江場愛斗えばあいとです。よ、よろしく」


 どうやら彼は後ろの席の遠藤というらしい。

 明るい金寄りの茶髪。かなりイケメン。

 そしてコミュ力お化け。この人はモテるだろうな。


「それでなんでここにいるの?」


 えー、何この人。突然失礼過ぎませんか。

 なになに、俺ここにいてはいけない人なの?

 困っている俺を見て遠藤は話し始めた。


「いやいや、違うって。悪い意味じゃなくてさ。なんかサッカー部の友達に『江場っていうサッカーバカがいたんだけど、大怪我してサッカーできなくなって学校自体辞めた』って聞いてたからさ」


「あー、そういうことね。大怪我しちゃって、入院してたってわけ。本当は学校辞めようとしてたんだけど、木下先生がやめるなって言って、手続きしてくれたから、一応進級したんだよ」


「一応ってなんだよ。変なやつだな。お前」


「ま、まあね。せっかく手続きしてくれた先生にも悪いし」


 変なやつって。いや、君にだけには言われたくないよ本当に。


「そうなんだ。久々の学校で色々大変だと思うけど、これからよろしくな。愛斗」


「お、おう。れ、遠藤」


 当然名前呼ばれてびっくりした。

 俺には名前で呼び合うのちょっとレベル高すぎた。



 遠藤と一緒に始業式のため、体育館に向かおうとしていた。

 が、突然。


「あれ、遠藤じゃん。なんでいるのよ。」


 話しかけられた。遠藤が。

 先程、転校生とか言ってた3人組だ。

 てか、君たちなんなの。なんでいるの? からしか会話始めれないの。


「なんでって。俺の教室だからだよ。なんか文句あるかよ」


「ということは、1組かー。また同じー? ついてないわー」


 金髪の女子が遠藤を煽り始めた。


「またお前らと同じかよ。あーあ、またうるさくなるよ」


「こっちのセリフよ。全く」


「それでその子は?」


 金髪が聞いている。


「あー、俺の前の席の愛斗。サッカー部のエースだ。1年の半分は入院して学校来れてなかったんだってよ」


「いやいや、元だから。元サッカー部の江場愛斗です」


 もうサッカー部って紹介はやめて欲しいのに。思い出したくもないし。


「そうなんだ。てっきり転校生だと思ってたわ。ごめんねー」


「い、いえ、仕方ないですよ」


「私の名前は、須藤紗希(すどうさき)。よろしくね」


「よ、よろしくお願いします」


「なにかしこまってるのよ。同級生なんだからタメでいいわよ」


「あ、うん。分かったよ」


 何このリア充感。初めてすぎて違和感しかないよね。うん。


「こっちの2人も紹介するね。こっちが茜で。こっちが亜美ね。2人とも美人でしょ。茜なんて超モテるんだから」


「やめてよ。もう紗希ったら。同じ1組の新谷茜しんたにあかね。よろしくね」


「そんなこと言って、紗希だってチャラい男にモテるじゃん」


「もー。そんな薄っぺらそうな男にモテても嬉しくないしー。やめてよね。亜美」


「うふふ。同じクラスの宮下亜美(みやしたあみ)だよ。よろしくね」


「よ、よろしくお願いします」


 茶髪の女子が新谷茜。少し小柄な青髪の女子が宮下亜美。というらしい。

 


 そんなこんなで話していると少しだけ分かったことがある。

 彼らは去年の1年1組で同じクラスだったらしい。

 この人達はかなりモテるらしい。でも彼氏はいないらしい。もちろん遠藤にも彼女はいないらしい。

 あとは、なんかこの人達と話しているとなんか変な感じがする。
















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