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燃えろ! ムサシ  作者: カネキ
2/14

第 2 話 江戸へ その1

火騨山中――


 最後の修行を終えた翌日!


 ムサシは出立の準備が整った。 

 師匠である爺様から僅かばかりの路銀、手作り弁当を背中に背負った風呂敷包みに雑多な荷物と共に積込み、卒業記念に贈られた刀を腰に差した。

 この刀は爺様が現役時代に使用していた業物である。

 少々、ムサシには大きいかとも思われるが、彼の膂力ならば問題なく振るう事が出来るだろう。

 刀を腰の帯に差すと、これだけでサムライに成れた気がしてムサシは嬉しくなり自然と笑みがこぼれる。

 爺様は、そんなムサシが嬉しかった。

 嬉しかったが言わねばならぬと思った。


「ムサシよ!

 今、お前に渡したその刀は、儂が現役の時に使用していたものじゃ。

 その頃は儂も鬼のハンゾウと恐れられたものよ…… フフフ。

 かなりの業物じゃから、譲ってやった儂に十二分に感謝するように!

 因みに! 因みにだぞ、歴戦を共にした貴重かつ超絶凄い刀だからな、コレ。

 ソレをお前、気前よくあげるなんてな、普通あり得ないんだぞ。

 解ってるか? ん?

 他の弟子にもしていない事をだなお前にって、かなりの特別待遇なんだからね。

 特例中の特例、特別な行為ってことだ!

 お前、他の師匠だったら、弟子に師匠がこんなにも優しい事をしてくれないよ。

 解ってるか? ん?

 このありがたみを。

 ムサシは賢いから解ってるよね? ん?

 いや、自分でも驚きだわ。

 自分の優しさにビックリだよ。

 って事で、朝に夕にと、この超絶素晴らしい刀と儂に感謝の祈りを捧げたまえムサシくん!」

 出発の直前、延々と恩着せがましく爺様から言われたムサシ。

 だが、そこはムサシ。

「そうですね」

 軽いタッチで答え、ほぼ聞き流していた。

「……そうですねって、なんか軽いね」

 熱弁して損したと爺様は思った。


「これで、敵もバンバンぶっ殺すからね!」

 ムサシが少年らしい無邪気な一面を見せる。

「お、おう。

 ……いや、敵もってなんだよ!

 いいか。

 絶対に、絶対に、刀をむやみに人に向けないように!

 コレはおもちゃじゃなく、凶器何だから! いいね!」

 殺人術をムサシに叩きこんだのは爺様だが、ヤベー奴に刃物を渡してしまったのでは? 一抹の不安を覚えた。

 だが、男の子は元気が一番! なので何も問題は無い。

 って事でムサシを気持ちよく送り出してあげた爺様。


 ムサシは見送ってくれる爺様に、手が千切れるくらいブンブン振って歩き出す。

 爺様は、ムサシが見えなくなるまでずっとその場で見守っている。

 多くの弟子を見送ってきた爺様は、何時もこの瞬間は弟子たちに生き残って欲しいと祈るのだった。



◇◇◇



 山を越え、森を抜け、野を駆け、また山に分け入るムサシは 風の様に走った! 


 彼は、使命を果たし、日ノ本一のサムライになる為に駆け抜ける!


「凄い、外の世界だ! オラは自由だ!」


 幼いころから何年も爺様と山にこもり修行に明け暮れていたムサシは、外の世界に胸を高鳴らせた。

 山の緑も、空の青さも輝いて見える。

 これが自由なのかと、ムサシは嬉しさで疲れを忘れ走るのだ。


 そう、ムサシは走る。


 ムサシは勿論、ガンガン走る。


 そりゃもう、アホみたいに走りに走りに走った!



 そして、気がつけば辺りが暗くなり始めていた。


 幾つか山を越えて走ってきたムサシは、ここに来てやっと落ち着いて辺りを見渡した。 


「オラったら、嬉しくて夢中になってたようだ……」


グウゥゥゥ……


 ムサシの腹の虫が鳴いた。

 夢中で爺様からもらった弁当を、食べるのを忘れていたようだ。


「今日は、ここまでにして、休む準備しなきゃなんねぇだな」

 丁度開けた場所であるここでの野宿を決めたムサシは、薪を集めだした。

 焚火の準備にとりかったのだ。

 そんな時!


「おい、貴様」


 その辺に落ちてる枝などを適当に集め、両手で抱えているムサシに誰かが声をかけてきた。


「えっ?!」

 ムサシは、思わず抱えていた薪を落としそうになる。


(こんな山の中で? いや、オラが気配に気づかなかった?)

 警戒しつつムサシは声のしたほうを見ると、黒装束の何者かが近づいてくるのが見えた。



「なんだオメー、オラになんか用か?」

 近くにきた黒装束の男に声をかけたムサシ。

 そして、男の顔を見ると、自分と同じくらいの年齢の少年だと思った。


 ムサシより頭一つくらい背が高く、黒を基調とした、こじゃれた感じの衣服。

 布のようなもので口元を隠している怪しい少年。


(コイツ子供の癖に、生意気にも刀を背負っているだ!)

 目の前の少年を見て、子供の癖に刀を腰に差すムサシはそう思った。


(怪しい奴だ!)

 ムサシは引き続き警戒を怠らない。


「貴様、怪しいな。 こんな時間に山にいるなんて」

 黒の少年がムサシを怪しむ目で聞いてきた。


(怪しい奴に怪しいと言われただ!)

 当然ムサシはムッとして、

「オラは怪しくなんてねぇ!

 オメーこそ子供の癖に、こんな暗くなってるのに山の中でなにしてんだ?

 迷子か?

 凄く怪しい、もの凄く怪しい奴め!」

 プンプン、ムキー! とムサシはお返しとばかりに少年に返す。


「俺は、子供ではない、もう15歳だからな。

 旅の途中、怪しい奴がいたから声をかけたが、俺の勘違いのようだ。

 お前、只の阿保だろ?」

 ヤレヤレといった感じで答えられたムサシ。

 その上、またもや怪しいと言われ、更に阿呆と言われたムサシ。


「こっ、このや…… はっ!」

(待て! アッチは余裕ですって感じでいるのに…… 落ち着け、オラ。

 ここで怒ったら、オラの方が小物感がでてしまうだ! ……よし)

 ここでムキになっては、何か負けた様に思えたムサシ。

 なのでここは、冷静に、そして余裕だぜ、みたいな感じで答える事に決めた。


「オラも旅の途中。

 同じ年齢でも、オラはある使命を…… おっと、すまん。 一般人には言えないんだ、フフ」

「お前はチビだけどな」

「なんだとぉーー! オラをバカにするだか?!」

 ムサシは、ダメだった。


ブチッ


「よし、お前あれだ、敵だろ?

 ちょっと待ってろ、今ぶっ殺すから」

 そして、キレた。

 ムサシは足元にそっと丁寧に集めた薪を置くと、腰の刀に手をかける。

 

「なんだ? チビと言われて怒ったのか?

 それは、申し訳なかった。

 俺が悪かった、取り消すよ」

 この少年は謝罪し、ムサシに頭を下げた。


 刀を半分抜きかけていたムサシは、刀を戻す。

 いきなりキレそうになるなんて、なんと大人げなかった事かと反省したムサシ。


 黒装束の少年の方も、敵対心が無い事を示そうと口元を覆っていた布を下げる事にした。

 顔を露にすると、涼やかな目をした中々の美少年であった。


「俺の名は、サスケ。

 外の人間と話すのが久々だから、失礼な言い方になってしまい、本当に、申し訳ない。

 同い年のよしみで、許してもらえないか?

 野営の準備しているのだろう、お詫びに手伝わさせてくれよ!」

 サスケは、にっこり爽やかに手を差し出してきた。

 小さい事でムキになった自分が、とても恥ずかしくなったムサシは、おずおずとサスケの手を握る。


「お、オラの方こそ、喧嘩腰で申し訳なかっただ……

 サムライとして、あるまじき恥ずかしい行為だっただ。

 サスケさん、あの、オラは、ムサシだ」

 ムサシは素直なので、間違っていると思えは躊躇なく頭を下げるのだ。


「ハハハ、謝らないでよ。

 驚かせた俺が悪いんだし。

 そっか、ムサシは、サムライかぁ。

 腰に立派な刀を差してるもんね!

 俺は、ニンジャ!

 ほら、背中のコレみて、忍者刀だよ」

 サスケが背中の刀を指差し笑った。

「カッコいいね。 オラのなんか中古品だし」

 刀を褒められ嬉しかったムサシだが、謙虚な彼は、謙遜した。

 ただ、師匠から貰ったのだから、もう少し言い方があるようなものだと思うが。


「ムサシと俺、同い年なんだからさ、俺の事は呼び捨てにしてよ。

 俺もムサシって、呼び捨てにしてるんだから」

「さ、サスケ」

 照れつつ、言ってみた素直なムサシ。

「そうそう、折角出会ったんだから、仲良くしよう」

「宜しくだ。 サスケ」

 良い人に出会えたとムサシは、思った。


「おっと! こんな事してる場合じゃないよな。

 完全に暗くなる前に、火を起こさなきゃ!

 この薪に俺が火を点けて焚火の用意してるから、ムサシはもっと薪を集めてきてくれ」

 爽やか、サスケ!

「解っただ!

 もっと一杯取ってくるから、サスケは火起こし任せただよ!」

 ムサシは颯爽と薪拾いに行こうとしたが、

「おい、ムサシ!

 お前、そんな荷物抱えたまま行くのかよ?

 邪魔だろ?

 ああ、俺がちゃんと見とくから、その荷物ここに置いていきな。

 身軽になれるからさ」

 呼び止められた。

 言われたムサシは、驚いた表情でサスケをみた。

 そして、感動した。


「サスケ!

 オメーって、良い奴だな!

 こんなもん背負ってたら邪魔だもん、助かるよ!」

 素直なムサシは、いそいそと荷物をサスケに預け、ありがとうと頭を下げた。


「気にしなさんな、それより薪頼んだぜ!」

「おうよ! オラに任せとけ!」

 ドンと胸を叩くと、ムサシは森の中に飛び込んだ。


「おーーい! 出来るだけ奥の方に行って沢山取ってきてくれよなぁーー!」

 森に消えたムサシに大きな声でサスケがいうと、遠くで解ったと声がした。




「……」


「……さてと」

 傍に置いてあるムサシの荷物を見るサスケ。



パチ、パチ……


 薪の爆ぜる音を立て、焚火の炎が揺れている。


バッ!


「取ってきただ!」

 山のような薪を抱えたムサシが、木々の間から現れた。


「ん?」


 サスケの姿が無い。

 どこに行ったのかと思いつつ、焚火の近くにガシャガシャと薪を降ろすムサシ。

 ふと横を見ると、サスケに預けた風呂敷包みが置いてあった。

「全くもって困った奴だ! ちゃんと荷物番してくんないと不用心じゃないの」

 キョロキョロするが、やはり辺りにサスケが見当たらない。

 しょうがないので焚火にあたってみるムサシ。


「……あったかぁい」


パチ、パチ……


 薪の爆ぜる音を立て、焚火の炎が揺れている。


「遅いね。

 多分トイレだろう、急かしたら可哀想だ。

 どうせウンコだ、時間がかかるんだろう」


パチ、パチ……


 薪の爆ぜる音を立て、焚火の炎が揺れている。


「あっ!

 そうだ、サスケが戻ってきたら、一緒に爺様が作ってくれた弁当を食べよう!

 サスケも、きっとお腹空かしてるだろうし、きっと喜ぶぞ。

 二人で、仲良く食べるだよ」

 ニコニコして自分の風呂敷包みを開けるムサシ。


「……あれ?」

 ゴソゴソと風呂敷の中をまさぐり、辺りに何か落ちてないか確認するムサシ。


「あれ?」

 もう一度、風呂敷包みの中を確認するムサシ。

 もう一回、周りを確認するムサシ。


「あれれ?」

 もう一度、確認するムサシ。


 先程からムサシが探しているのは、風呂敷の中にあったハズの弁当箱と路銀を入れた財布。

 ソレが見当たらないのだ。


 

「……あっ!」


バッ!


 慌てて立ち上がるムサシは、激しく辺りを見渡したが辺りは静まり返っていた。

 ムサシが耳を澄ませても、聞こえてくるのは、ホーホーとフクロウの鳴く声と風の音だけである。


 そして、ムサシは理解した。


「……やられただ」 


 うん。

 盗まれたことを!


 そう、賢明な読者諸兄のお考えの通り、ムサシの荷物はサスケにより盗まれたのだ。


 ちなみに、サスケは既に逃亡している。

 まあ、そういう事だ。




◇◇◇



山中、木の上――


モシャモシャ


「阿呆は、チョロいですなぁ! ウヒャヒャヒャー!」

 ムサシから離れた場所へと逃亡してきたサスケは、念のため木の上に移動して野宿する事に決めたのだ。

 そして、優雅に盗んだ弁当によるディナーと洒落こんでいた。


モシャモシャ、クチャクチャ


「……しっかし、旨くねぇなコレ。

 腹減って無かったら、食えねぇぞ」

 ムサシの師匠である爺様手作りの愛情弁当を口いっぱいに頬張るサスケ。

 微妙な味の弁当を、微妙な顔でモシャモシャやっていた。


「おまんまが食えるだけでも感謝しねぇとな!

 まぁ、金も入った事だし、適当な街で旨い物を腹いっぱい食えばいいや、今は我慢、我慢」


ガサガサ…… 


モシャモシャ…… モ、


「ん?」

 サスケが何かに気づいた。


ガサガサ……


「ゲッ!」

(嘘だろ?!)

 声が出そうになり、慌てて口元を抑え、木の陰に隠れるサスケ。

 何故なら下の方で、ガサゴソと草をかき分けながらムサシがやって来たからだ!


 サスケは注意深く、そろりそろりと、覗き込む。


「クンカ、クンカ!

 ムムム、近い! 近いだ!

 こっちで、サスケの匂いがするだ!」


 這うようにして、地面をクンクン嗅ぎながらムサシは進んでいた。


「犬かよ……」

 サスケは、小さく呟くと、ムサシが通り過ぎるのを待つ事にした。

 幸いな事にムサシは向こうへ進みそうな感じなので、サスケは安心し


「!」

(なんで、ターンしてくる! 向こうに行け!)

 空気を読まないムサシが、戻ってくるのが見え、必死に身を隠すサスケ。


 下の方でガサガサする音が、大きくなったり小さくなったりしている。


(何をしてるんだ?)

 サスケが下を覗くと、自分のいる木の近くを地を這うムサシがグルグル、グルグルやっていた。

(マズい。 非常にマズい! まだ、ムサシはこちらに気がついていないようだが、時間の問題だ!)

 サスケの表情に焦りが。



「おかしいな? やっぱり、この辺だ。

 ここで、サスケの匂いが消えているだ!」

 ムサシが体を起こして言った。

 



ガサガサッ


  ガサガサッ


 草むらが揺れる!


「誰だ!」

 ムサシは揺れている草むらに向き合い、刀の柄に手をかけた!

 気配は、サスケのそれではないように思えるが、サスケか?

 敵かサスケだったら斬ろうと思いつつムサシは、迎撃の体勢をとる。


「来るッ!」


バッ!


 ムサシの予想道理、何者かが飛び出してきた。

 だが!


「子供?」


 草むらから飛び出してきたのは、自分より小さな子供だった。

 その姿を確認したムサシは、刀の柄から手を離す。


 飛び出してきた子が、ムサシの目の前で立ち止まる。

 どうやら、この子は、女の子のようである。

 ボロボロの着物に、ぼさぼさのおかっぱ頭。

 だが、肌のツヤもよさそうだし栄養は足りているようだとムサシは思った。


 どこか怯えたような表情が気になったが、突然知らない人にあって驚いているのかもしれない。


「こんな山の中なのに、良く人に出会う日だな。

 オラたちより小さい子だし、村が近くにあんのかな?」

 敵や盗人では無いのは良いのだが、ムサシは頭を掻いて拍子抜けした様子でいる。


「……」

 女の子が、ムサシをジッと見ている。


「おい、オメェ。

 まさか親とはぐれたのか? 迷子か?」

 女の子の視線を感じたムサシが聞いた。

「……」

 それなのに、女の子は黙っている。

 でも、ジッとムサシを見ている。


「何?」


「……」

 女の子は黙っている。


「 ……うん、何かしゃべろうよ」

 黙ったままジッと見られている、この状態が居心地悪いと思うムサシ。

  

「家は遠いのか? 違うの?」


「……」

 女の子は黙っている。

 

「じゃぁ、家はこの近くか?」


「……」

 女の子が頷いた。

 ちゃんと動いたので安心するムサシ。

 意思の疎通が出来た。



「家が近いのか! 送ってってやろうか?」


「……それ、貸して」

 女の子ちゃんと帰れるようにと声をかけたのに、女の子が質問と違う答えを出してきた。


「はあ?」

 意味が解らないムサシ。

 女の子が指差す方向に目を動かすと…… ムサシの腰の刀を指差していた。


「え? これ? ダメだよ。

 刀はサムライの魂だからな! むやみに人に貸したり出来ぬでござる」

 流石に貸せないと断るムサシ。


「お母さんが、苦しんでるから! 楽にさせてあげたい」

 悲痛な声を張り上げる、女の子。


「あのね、お母さんが苦しんでるのに刀が…… って、楽にってなんだよ?!」

 いやいや、苦しんでるなら助けてあげればいいじゃんと思ったムサシだが、楽にしてあげたいの言葉の意味を理解した。


 女の子に顔を向けるムサシ。


「……お前」


 この子の母親はもう助からないのかもしれないが、それでも子が楽にさせてあげたいから親を殺すなんて違うとムサシは思った。

 自分には、助けれないかもしれない。

 助けれない確率が大きい。

 だけど、一緒にこの子について母親の元へ行ってあげなきゃとムサシは思った。


ズキンッ!


 ムサシは、頭痛がした。


 ノイズ混じりの映像。

 母親が目の前で、断末魔をあげ殺される場面。

 光の瞬きのように消えた、一瞬の出来事。


 ムサシの忘れたい記憶が、この女の子から母親の話を聞いた事でフラッシュバックしたのかもしれない。


「……あの時のオラも、お母さんを楽にさせてあげられたら、苦しませなくて良かったのか?」

 頭を振り、そんな事を考えるのを、考えないようにムサシは意識した。

 

「刀は貸せないけど、オラが行って、何とかお母さんを助けれないか見てみるよ」

 泣きそうな顔をしている女の子の肩に手を置いて、ムサシが言った。

 この子の為に力になってあげたかったから。

 それに、簡単な治療ならば、爺様に教え込まれた。

 最後の時は、自分が手を汚してやろうと覚悟したからムサシは、女の子に言ったのだ。


「お兄ちゃん、お母さんは助かるの?!」

 嬉しそうな表情が、ムサシには辛かったが、今は、一刻も早くこの子の母親の元へと急がねばならないと思った。

「兎に角、案内して」

 ぎこちない作り笑いで答えたムサシ。

 小さな子を心配させたくないと、彼なりに考えた行動なのだろう。


「お兄ちゃんこっち!」

 ムサシを呼ぶ女の子が走り出そうとした、その時!


バッ!


 空から黒い影が落ちてきた。

 影はゆっくりと起き上がる。


「……待てよ」

 女の子の目の前、行く手に立ちはだかる影。

 

「あっ! お前、サスケ!」

 女の子の後ろのムサシが叫んだ。


 月明りに照らされたサスケ。

 その手には忍者刀があった。

 その刃の切っ先は、女の子に向けられている。


「ムサシ。

 お前は、コイツの言う事を信じるのか?」

 サスケが口を開いた。


「お兄ちゃん」

 女の子は酷く怯えながらもムサシを見る。

 だが、その表情は先程までの優しい顔では無かった。

 

「……違うだろぅが?」


 ソレは、明らかにイラついた声だった。

 怒っていた。


(信じる? 信じない?

 違うだろ?

 小さな女の子を刀で脅すような真似行動、それ自体が間違っている!)


 ムサシは、そう思っただけだ。

 ソレだけだ。

 だから、サスケの言葉は、受け入れられないと思った。

次回も、頑張るぞ!

って事で、乞うご期待!

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