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九戦目


 街の一角にある賞金稼ぎが集う場所、通称《集会所》。

そこには情報の売買を生業とした情報屋とその情報屋から情報を得て賞金首を狩り金を稼ぐ賞金稼ぎが集まる。

 

 かつては《ハンター》という呼び名で若くして天才賞金稼ぎの地位を確立させた黒川イクトは集会所で情報収集をしていたらしくそこを出ると誰かに電話していた。

 

「……読み通り目撃情報はほとんどないよ。

大将が言うように監視カメラの映像で確認出来ただけのあの人数を隠すような場所となれば裏で糸を引く誰かがいるってのは確かだけどそこに辿り着けないのが厄介だよ。……うん、分かってる。明日までに調べて対策打たないとだから頑張るよ」

 

 じゃあ、と通話を終えたイクトは電話を切ると先程まで雨が降っていたのが嘘のように晴れた空の下を歩こうとするが、そんな彼のもとにシオンがライバとともに現れる。

 

「あれ、シオン?それにクールなウサギちゃんもいるじゃん、珍しい。ていうかその傷どうしたのさ?」

 

「イクト、話がある。

そのついでに医療キットの手配も頼みたいんだが……」

 

「えっと……一応聞くけど、面倒なこと頼む?」

 

「多少はな。あまりゆっくりもしてられないんだが……行けるか?」

 

「……オッケー、ひとまず集会所のマスターに医療キットをもらってくるから待ってて」

 

 

******

 

 

 数分後、集会所内で医療キットを受け取ってくれたイクトからそれを受け取ったシオンはヒロムが加減もなく殴り蹴りしてつけてくれた傷の手当てをし、手当を終えるとシオンはイクトにある話をした。

 

「《鮮血団》はあれだけの戦力を政府が鬼灯潤也を警戒する中で用意していた。そしてオマエが情報を集めているということは足取りを掴めてないということだ。ならヤツらはどこに隠れているのか……それを裏付けるとなれば政府に身を置く何者かが内通してるとオレは思った」

 

「うん、その線はオレも考えたよ。でもヤツらが現れてから6時間、どんなに頑張ってもどの情報屋も何も知らない状態だ。大将が協力者には警察から恩赦が出るって話をしてたと言っても出ないレベルなんだから……」

 

 そう思うか、とシオンは自分の携帯電話であろうスマートフォンを取り出すとその画面にある映像を出した。その映像にはシオンたちの暮らす街の近くにある港の様子が映されている。撮影時間はおそらく真夜中、1隻の船が停りそこから数人が下りてスーツの男に出迎えられる。

 

 その映像を見たイクトはシオンに素朴な質問をした。

 

「これ何?」

 

「昨日の夜の港の監視カメラの本来なら削除されている記録データだ。ヤツらが仮に今の国内のセキュリティの外で暗躍してる線を考えてオレとライバで《雷》の力を応用してネットワークに侵入して見つけた改竄された映像データを復元したものだ」

 

「うん、軽くハッキングしたこと明かすのやめようか?

というかそんなのよく見つけられたな」

 

「兎角、凄腕のハッカーでも見つけられないほど精巧な改竄だった。マスターとオレのクールな力を応用したハッキングじゃなきゃ見逃してたね」

 

「ハッキングってハッキリ言ったね。可愛い顔しておっかない。

でもこれに映る人物が鬼灯潤也たちって確証あるの?」

 

 これだ、とシオンは映像を巻き戻すとある地点で止め、止めた映像に映る1人の人物を指さした。フードを被りコートのようなもので素性を隠す人物だがシオンが指さしたその人物は隠しきれない要素を持っていた。

 

「コイツ、2mは超えてるね」

 

「名はタイタン、オレが感情に任せて殺した鬼灯潤也の仲間の1人が2m越えのゴリラだった。ここに映るコイツと背丈は一致してる」

 

「なるほど……警察が検死してる大男か。

たしかに見た目を隠せたとしても背丈などは隠せないし、そう言われると精巧な改竄してでも誤魔化したくなるのは分かるね」

 

「おそらく改竄者はオレと同じやり方をして色々弄ったはずだ。

出迎えてる男は誰かは分からないがオマエの収集能力なら分かると思ってな」

 

「この映像を解析してしまえばおちゃのこさいさいだよ。

データのコピーは?」

 

「その携帯を預ける。オマエが成果を上げるなら貸しといても問題ないからな」

 

「オッケー、ひとまず預かるよ」

 

「頼むぞ。オレとライバはヤツらがどう動いてもいいように用意するからな」

 

 イクトにスマートフォンを預け情報収集を任せたシオンはライバを連れてどこかに向かおうとする。そのシオンにイクトは何か気になったのか彼に質問をした。

 

「多分大将に灸を据えれたんだろうけど、えらく気が利くじゃん。何かあった?」

 

「……別に」

 

「そっか、じゃああとは任せて」

 

 イクトは再び情報を集めるべく集会所に戻っていき、シオンとライバはそれを見届けると次なる目的地に向けて移動する。

 

 歩くシオン、そのシオンは歩く中でライバに尋ねた。

 

「気づいてるか?」

 

「ああ、クールにな」

 

「狙いはオレとイクトのどっちだ?」

 

「多分前者でマスターだぜ」

 

 なら、とシオンはライバとともに人通りの多いところから外れるように路地裏に入る。路地裏に入ってしばらく歩き進むとシオンとライバは足を止め、1人と1匹が足を止めると彼らの前に赤い髪の眼鏡の男が現れる。

 

「……困りますね。潤也を敵に回すような真似をされては。

何を手に入れたかは知りませんが、ルールに反したアナタにはバツを与えます」

 

「オマエ、鬼灯潤也と一緒にいたよな?」

 

「名は蒼月。アナタの紅とは異なる蒼の月の名を持つ者です」

 

「……敵ってことだろ?」

 

「そうです。私はアナタの敵ですね」

 

 ただし、と眼鏡の男……蒼月は鉈を構えるとシオンに忠告した。

 

「アナタが残り17時間はあるタイムリミットよりも先に潤也の誘いを受け入れるなら味方として見てもらえますよ」

 

「フッ、聞いたかマスター。

鉈持ちながらカッコつけてやがるぜ」

 

「……私は人を殺すことに慣れてるので躊躇いはありませんがウサギは初めてなので苦痛に苦しむことになりますよ」

 

「へっ、クールなオレはその程度じゃビビらねぇ。

中指立てられねぇ代わりに唾吐いてやろうか?」

 

「……精霊風情が。

アナタを殺すかアナタの主人が殺されるかどっちが早いか試しますか?」

 

「やってみな。クールに後悔させてやるよ」

 

 いいでしょう、と蒼月は体に魔力を纏うと鉈にも力を纏わせる。

 

 蒼月という敵はやる気だ。敵が纏う魔力を介して感じ取れる殺気。それを肌で感じ取ったシオンは首を鳴らすとライバに伝えた。

 

「肩慣らしにオレがやる。オマエは新手に備えてくれ」

 

「おう?まさか1人でどうにかしようって考えてねぇか?

それはクールじゃないぞ?」

 

「安心しろよ。これはオレが気持ちを切り替えられてるのか確かめるための選択だ。オマエから見てクールじゃないと思ったら邪魔してくれ」

 

「オッケーだぜマスター。ならオレは気楽に待たせてもらうぜ」

 

 シオンの意思を汲み取ったライバは彼の意思を尊重すべく後ろに下がり、ライバが下がるとシオンは雷を纏って構えた。

 

「ウサギと仲良く来るのかと思いましたが意外ですね。

それともウサギは無しでも勝てると?」

 

「勝つ云々はどうでもいい。オマエはオレがステップアップするための踏み台なんだからな」

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