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七戦目


 姫神ヒロムとの出会いは約半年前だ。

オレは強いヤツと戦いたいという理由で色んなところで暴れ回っていた。

 

 ある日アイツに挑もうとしたところでアイツに仕えてる能力者である2人に邪魔され、どうにかして追い詰めようとした所でガイに邪魔された。そしてそこにヒロムが現れた。

 

 『能力はないが能力者を無傷で瞬殺さしてしまう強さを持つ人間らしい。一部からは能力がない役立たずという意味で《無能》と呼ばれてるが異名は《覇王》、どちらかといえば対峙したほとんどの人間が後者のイメージを抱き彼に挑むことを無謀としてまわりに伝える方が身のためと言い切るほどだ』

 

 オレの聞いた話しはこんな感じだった。

能力が無い、それなのに他者が恐怖して他のものに警告する選択をさせる人間がいると知ったオレは真相を確かめたくなって挑んだ。

 

 結果は……負けた。結末としてはヒロムがやる気をなくして取った方法がオレの弱点をついて戦意喪失を招いたことでオレが負けたことになっているが、実力という面ではまったく歯が立たなかった。能力者でも無いのに超高速で動くヒロムの速度に反応出来ず、雷を纏ったオレの高速移動からの背後の攻撃をノールックで回避、オレの攻撃を受けることなくアイツはオレを負かした。

 

 能力がない人間が能力者を圧倒する、非現実的なことを前にしてオレは現実を思い知らされると同時にヒロムの強さを知りたくなって仲間になった。困難に立ち向かうヒロムについていくことでオレも強くなり成長できた。その反面、オレは更なる現実を思い知らされた。

 

 ヒロムの成長は異常な速さで遂げられる。オレが必死になっても辿り着けない強さの頂きにアイツは簡単に到達してしまう。それを何度も見せられ、気がつけばオレは頭の中でヒロムは特別だと目を逸らすようになっていた。

 

 そんなヒロムにオレは今……

 

 

 

******

 

 ヒロムの言葉に感情を爆発させたシオンは自分が間違ってはいないことを証明すべくヒロムに戦いを挑み、シオンは雷を体に纏いながら彼に攻撃を仕掛ける。

 

「オラァ!!」

 

 雷を纏うシオンはヒロムを倒そうと蹴りを放つが、ヒロムはその蹴りを難無く避けてしまう。だからどうした、シオンは避けられたことなど気にすることなく続けて蹴りを放つがヒロムはそれも避けてしまう。

 

「ちぃっ!!」

 

「どうした?オレを倒して証明したいんだろ?

なら……もう少しマシな動きしろよ」

 

「うるせぇ!!」

 

 ヒロムの挑発を受けたシオンはヒロムに今度こそ攻撃を命中させようと連続で拳撃を放つが、ヒロムはその全てを異常なまでに落ち着いた様子で躱し続け、そしてシオンが連撃を放つ最中でヒロムはシオンの拳を掴み止めて中断させると投げ飛ばしてしまう。

 

 投げ飛ばされたシオンは一度は地面に叩きつけられるもすぐに立ち上がるとヒロムの攻撃に備えようと構えたが、シオンが構えてもヒロムは攻めてこない。

 

 構えるまでの僅かな時間に距離を詰めるなりの選択肢があったはずなのにヒロムは動こうとしていないのだ。

 

「どういうつもりだ……!!

何で攻撃してこない!!」

 

「あん?するわけねぇだろ。

ギャンギャン吠えるバカ相手に合わせてやる気になるとか労力の無駄、無駄の極みなんだよ」

 

「オマエ……ナメてんのか!!」

 

「そういうのは一度でいいから勝ってから言えよな。

無駄に吠えてみっともないぞ」

 

 黙れ、とシオンは身に纏う雷を強くさせるとヒロムを倒そうと一気に接近して攻撃を放とうとする……が、シオンが攻撃を放とうとするとそれを上回るスピードでシオンの顔面を殴ってしまう。

 

「!?」

 

「単調だな。その程度なら予測しなくても防げる」

 

「なっ……先読みの力を使ってないのか!?」

 

 シオンの言うヒロムの先読みの力、それは能力の無いヒロムが能力者を相手に圧倒的な戦闘を可能としている技術である《流動術》のことだ。風の流れ、敵意、殺意、敵の呼吸や動きなどを瞬時に読み取りそれらを頭の中で全て把握した上で最適な動きを導き出すと共に自分がどう動くべきかと敵が次にどう動くかを予測する技だ。言葉にすれば現実味のない絵空事だ。だが実際ヒロムはこの技を幼い頃に誰にも教えられることなく能力が無い自分を強くさせるために独学で編み出したのだ。

 

 経験の差、それを大きく反映する《流動術》を用いずともヒロムはシオンを倒せると言うのだ。

 

「ふざけてんのか……?

オレは真剣にオマエを倒そうとしてるんだぞ!!」

 

「真剣?んなふざけた攻撃しといてよく言うぜ。

オマエに与えられた《雷鳴》の異名も結局はオマエのその能力を表してるだけでオマエのことには触れていない。要するにそこ以外取り柄ないって話だな」

 

「……黙れ!!」

 

 ヒロムの言葉を……自分に与えられた異名だけでなくシオン自身を否定するような言葉を受けたシオンは怒りを抑えられなくなり感情を爆発させると雷を強く纏い、雷を纏ったシオンはその雷を体と同化させる。

 

 雷と同化したシオン、その肉体からは雷が溢れ出ようとしており髪は普段に比べると長く伸びていた。眼光も鋭くなったシオンのその姿を前にしてヒロムは首を鳴らす。

 

「やっと本気か?《雷鳴王》、肉体を能力の《雷》と一体化させた状態にすることで落雷に匹敵する速度とそれに通ずる破壊力を得る雷速雷撃の姿。《覇王》の名を冠するオレを相手にするために同じく王の名を冠する技を使うとはな」

 

「余裕ですってか?なら……オレを止めてみろ!!」

 

 シオンは地を蹴ると姿を消し、轟音が響くと共に強い衝撃がヒロムに襲いかかる。衝撃に襲われるヒロムだが片手で止めると振り払い、ヒロムが衝撃を防ぐとすかさずシオンは彼の背後に現れて目にも止まらぬ速さで攻撃を放とうとし……たが、ヒロムはシオンが背後に現れたのを理解してるのか裏拳を放つとシオンを怯ませ、さらに背後を確かめることなくシオンを蹴り飛ばす。

 

 蹴りを受けたシオンは立て直すと残像を残すほどのスピードでヒロムの周囲を駆け回り、無数の残像をヒロムの周囲に残すことでヒロムを混乱させようとした。

 

 シオンの目論見通りヒロムが残像を次から次に見て本体を見つけようとして注意が散漫になりつつある。そこを見計らってシオンは落雷と同レベルの速度でヒロムに接近して彼の首の骨をへし折る覚悟で拳を叩き込もうとした……が、ヒロムはシオンの覚悟を決めて放った落雷に匹敵する威力の一撃を素手で掴み止めてしまう。

 

「!?」

 

「……《雷鳴王》、雷鳴の王の名に相応しいパワーとスピードだがその技はピーキーすぎる。今のオマエみたいな感情に任せて攻撃するような状態では真価を発揮しない。そしてどれだけ翻弄しようとオマエの狙いがオレである以上次の動作の予測は容易い」

 

「なっ……落雷に反応出来るってのか!?」

 

「別に驚くことじゃないだろ。オマエの戦いを……仲間の戦い方を見てきたオレが忘れるわけないだろうが!!」

 

 ヒロムはシオンの腹に蹴りを入れて怯ませると続けて膝蹴りを食らわせ、膝蹴りを受けて完全に動きが鈍ったシオンを何度も殴る。

 

「成し遂げたい思いがあるならそれでいい!!譲れない意思があるならそれでいい!!それを果たそうとして戦うのならそれもいい!!けど……感情に身を任せて見るべきものも見えてないヤツが戦いにおいて誰かに勝てるなんて甘い話はないんだよ!!」

 

 シオンを何度も殴ったヒロムは拳を強く握るとシオンの顔面を強く殴って彼を地に伏すように倒れさせ、ヒロムの一撃を受けたシオンは倒れると《雷鳴王》が解けて元に戻ってしまう。

 

 ヒロムの一撃を直に受けてもはや動けないシオン。そんなシオンに近づくとヒロムは彼の胸ぐらを掴んで無理やり立ち上がらせると彼に強く言った。

 

「オマエが何しようが勝手だが道を誤るなら覚悟しとけ!!

強くなることと強いと意地を張ることは違うんだよ!!それを理解してないならオマエはまた同じ過ちを繰り返すぞ!!」

 

「オレは……」

 

「何のためにオマエはオレの仲間になった?

オマエはオレの何を見てたんだ?オマエはオレの強さを知りたくて仲間になったんじゃないのか!!」

 

「……ッ!!」

 

「……忘れちまったんならオレは何も言わない。

オマエが決めた道を進むのならオレは止めるつもりもないからな」

 

 ヒロムはシオンの胸ぐらを掴む手を離し、ヒロムが手を離すとシオンは勢いよく倒れてしまう。倒れたシオンに対してヒロムはそれ以上何かを言うことも無く……

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