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五戦目


 敵であるチョン・シーを殺そうと雷の槍で一撃を放ったシオンだが、その一撃を突如現れたガイが蒼い炎を纏う刀で阻止してしまう。

 

「やりすぎだシオン……!!」

 

「ガイ……!!

邪魔をするな!!」

 

 シオンは力任せに雷の槍でガイの刀を弾くと今度こそチョン・シーを殺そうと一撃を放とうとするがガイはそんなシオンよりも先に刀による一撃を放つと彼の雷の槍を破壊する。

 

「!!」

 

「……いい加減にしろ。

オマエは今何をしようとしたのか分かってるのか?」

 

「邪魔するなガイ!!

コイツらは街の人間を平気で殺そうとしてるんだぞ!!そんなヤツらを野放しにしてられるか!!」

 

「だからって殺していい理由にはならねぇんだよ!!

まして今政府は能力者に対しての取り締まりを強めようとしてるのに、オマエは人殺しになって罪人に成り下がりたいのか!!」

 

「黙って見過ごせってのか!!」

 

「今のオレたちは能力者である前にガキだ!!

今は大人の真似事で悪人を倒すことが許されるような状況じゃないんだ!!」

 

 敵は倒すというシオンの意見とそれを止めようとするガイの意見がぶつかる。戦闘中に繰り広げられる喧嘩を前にして潤也はため息をつくとチョン・シーに向けて銃を構え、何かを察したチョン・シーが命乞いをしようとすると躊躇うことなく引き金を引いて殺害してしまう。

 

「……興が削がれた。

せっかくの殺戮の序章が台無しじゃないか」

 

「……んだと!!」

 

「オマエ、最初からシオンに殺させることが目的だったろ?」

 

 潤也の言葉にシオンが食ってかかろうとするとガイは落ち着いた様子で潤也に彼の狙いを問う。ガイの潤也への問いを聞いたシオンはガイの言葉が理解出来ず、ガイに問われた潤也は面白そうに笑いながらガイの質問に答えた。

 

「素晴らしい!!素晴らしいよ雨月ガイ!!

流石は一度はオレが勧誘しようか悩んだだけの人材だ」

 

「おい、ガイ……何を……」

 

「アンタが現れたのが予想外だったのにまさかこんな短時間でそこまで見抜くなんて……やっぱりあの覇王の側近ってだけあるな。頭の回転からして紅月シオンとは違うな」

 

「何を言って……」

 

「シオン、落ち着いて聞け。

コイツらはオマエとは違う」

 

「そんなのは分かってる!!

コイツらはテロリストだ!!」

 

「そうじゃない!!

鬼灯潤也は《月閃一族》の人間なんかじゃないんだ!!」

 

「!?」

 

「……コイツらは政府が最近監視すべきだとして密かに危険視していたテロリスト。その正体はオレたちがヒロムと解決したあの事件……《十家騒乱事件》の黒幕である十神アルトがオマエを模倣して戦闘種族を生み出そうとして人体実験を施した強化人間だ」

 

「なっ……」

 

「……すごいな。政府はそこまで調べてるのか?」

 

「いいや、十神アルトが何か隠してる可能性があるとして自白剤を投与した結果オマエらについて語られたから知ってるだけだ。まさかオマエらの狙いが日本国家の転覆と支配とは思いもしなかったがな」

 

「なるほど、そうか。

さすがはあの騒動を解決した1人、もはや警察や政府から頼りにされてるというわけか」


 ガイの言葉に感心する潤也。潤也が感心する中サイレンの音を鳴らしながらパトカーが数台駆けつけ、駆けつけたパトカーから出てきた警察官は拳銃を構えて潤也たちに狙いを定め、さらに輸送車が来ると武装した兵士が出てきて街の人々を襲おうとする赤装束の人間を拘束しようとする。

 

 警察官や武装した兵士が登場すると潤也は意外そうな反応を見せ、そんな彼に1人の警察官が拡声器を用いながら警告した。

 

『無駄な抵抗などはせず大人しく投降しなさい!!

キミたちはまもなく包囲される!!速やかに投降しない場合は武力による制圧を行使する!!』

 

「ふむ、手際がいいな……さすがは防衛機能が再起しただけの事はある。

けど。それが仇となるんだよな」

 

 ベノム、と潤也が指を鳴らすと彼のそばに現れた中の1人の女が前に出る。紫色の髪の女は前に出ると大きく息を吸い、口の中に空気を溜め込むと勢いよく吐き出す。

 

 吐き出された息、それは普通ではなかった。彼女の吐いた息は毒ガスのような見た目をしており、その異様な彼女の息が風に乗せられて周囲に拡散される。

 

 ベノム、潤也が呼んだ女の名と彼女の異質な息を前にしてガイは何かを感じたのか警察官や兵士に向けて叫んだ。

 

「毒ガスだ!!

今すぐ対毒ガス用の対処兵器を用意しろ!!」

 

「いいや雨月ガイ、そんなのじゃ止められない」

 

 ガイが叫ぶと女は……ベノムは嬉しそうに語り、彼女が語るとガイは血を吐いてしまう。ガイだけではない、街の人々や警察官、武装した兵士までもが血を吐き苦しみ出した。

 

「ガイ!!

しっかりしろ!!」

 

「この毒ガス……拡散力が高い……!!」

 

「ただの毒ガスとでも思ったのかしら?

私の毒は空気中に拡散されるが呼吸器官から侵入するわけではない。私の毒は皮膚に触れても体内に侵食して感染する」

 

「そんな……!!」

 

「ぐっ……」

 

 ベノムの毒を受けたガイやほかの人々が苦しむ。だがおかしなことに何故かシオンは毒の影響を受けていない。何故なのか?

 

 シオンが不思議に感じていると潤也に今のこの惨状を楽しんでるかのように笑いながら彼に教える。

 

「《月閃一族》は代々その血を体に流すかぎり毒を受けない体質にある。つまりアンタとオレたちは彼女の毒を受けない」

 

「おい、オマエらはオレと違うんだろ!!

強化人間で《月閃一族》とは無関係なのに何で……」

 

「強化人間であると同時にオレたちはアンタが流す血を模倣して造られた戦闘種族の血を体に宿している。彼女が加減さえ間違わなければオレたちにもそれなりの耐性がある分効かないのさ」

 

「そこまで用意してこんなことを……!!」

 

「これは序章だ。

どの道これだけの数の被害者は政府が万が一に備えて隠している解毒剤で対処できるだろう。だが次はそうはいかない。

24時間、アンタにチャンスを与える」

 

「チャンスだと?」

 

「ここで毒に感染した人間は今言ったように解毒剤で助かるはずだ。だが……24時間後にもう一度オレがアンタに《月閃一族》の再興の話を持ちかけて断れば……解毒剤が底をつきかけるこの街を手始めに毒で壊滅させる」

 

「!?」

 

「当然受け入れれば毒の拡散は中止する手筈だ。

どうだ?面白いだろ?」

 

「オマエは……オマエは命を何だと思ってやがる!!」

 

「戦うための動力、そして奪うことで勝利を味わえる道具だ。

そんな至極簡単な事も分からないのか」

 

「オマエは……イカれてる……!!」

 

「この世の中で普通に過ごしてるアンタの方がイカれてるよ。

それじゃあ……また明日会おうぜ」

 

 潤也が指を鳴らすとそれを合図に赤装束の人間たちが一斉に手榴弾のようなものを投げ、投げられたそれは白い煙を発して視界を封じる。

 

 白い煙が辺り一面を覆う中シオンは視界の悪い中で潤也たちを追おうとするが、煙が晴れていきどこにも潤也たちの姿がないという現実をシオンに突きつける。

 

 赤装束の人間も1人残らずいない。毒に感染したガイや警察官、兵士、多くの街の人々が苦しむ光景だけが残る中シオンは叫んでしまう。

 

 己の力の無さに、何も出来ない自分の弱さに……

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