四戦目
鬼灯潤也の登場と彼が率いる《鮮血団》を名乗る集団による突然の街への攻撃。その現場にいるシオンは潤也が指揮するこの攻撃を前にして街の人々を助けなければと考えて動こうとするが、そんなシオンに向けて潤也は不敵な笑みを浮かべながら語りかける。
「放っておけよ、あんな凡人ども。
どうせ家畜にもならねぇ」
「家畜だと……!?
街の人がオマエに何をしたってんだ!!」
「我々の先人が絶えず流し続けた血の歴史を穢した、それこそがこの凡人どもが命を代償にして償うべき理由だ。我々の祖先は絶えず血を流しながら争い、勝利を手にすることでこの世界の存在を確かなものにしてきた。それなのに愚かな凡人どもはその栄光を穢した……これほどの屈辱を味合わせるようなヤツらに価値はない」
「時代がそうさせただけだろ!!
この世界に戦闘種族は不要になった、だから滅んだんだ!!
末裔として残されたオレたちがやるべき事は再興なんかじゃねぇ!!」
「ならアンタと同じ強くなりたいと悩むのは何故だ?
アンタは口でそう言いながらも結局は強さを求めてるんだ。このくだらない世界を変えてその強さへの欲望を解き放てよ」
「黙れ……!!
オレのことを知らないくせに……!!」
「……知ってるさ、よーくな。
タイタン、チョン・シー。コイツの相手をしてやれ」
潤也の思想には賛同できないシオン。そのシオンを力で分からせようと考えているのか潤也は自分のそばに現れた2人の人物にシオンの相手をするように命じる。
1人は大男、2mは超える身長にゴリラのようなムキムキの筋肉質な体をした男。もう1人は細身の男、功夫を嗜んでいるのかは分からないがそれを思わせる服装をしていた。
「オレ、タイタン」
「恨まないでくださいね、紅月シオン。
隊長に従わないアナタが悪いのですから」
大男がタイタン、細身の男がチョン・シー。2人は潤也の指示に従うようにシオンの相手をしようと構え、2人が構えるとシオンは拳を強く握りながら2人を睨む。
そして……
「……殺す」
シオンは全身に雷を纏うとタイタンの顔を殴るが、殴られたタイタンは痛みを感じないのか微動だにせずシオンを殴ろうと拳を構えて襲いかかってくる。が、図体を見たまんまの遅い攻撃にシオンは簡単に反応して避けると反撃しようとするが避けたタイタンの攻撃は衝撃波を生むと逃げようとする街の人々を襲う。
「!!」
「オレ、アイツら嫌い」
「オマエ……!!
関係ないヤツに手ぇ出してんじゃねぇぞ!!」
大アリですよ、とチョン・シーはタイタンに怒りをぶつけようとするシオンの攻撃を軽くいなすと掌底突きを叩き込み、それを受けたシオンが怯むとチョン・シーは猛攻を放って追い詰めていく。
「どうしました?
かの有名な戦闘種族の末裔の1人の力はこの程度ですか?」
煽るようにシオンに言葉を放つチョン・シー。その言葉を受けたシオンは怒りを爆発させて敵を殺すつもりで攻撃を放とうとしたが、彼の中で迷いが生じる。
昨日のシュミレーションのせいだ。ガイに無闇矢鱈と殺すのは良くないと注意され殺さず無力化するよう訓練を受けさせられていたあのシュミレーションのことが頭を過ってしまう。
が、それのせいで動きは鈍くなり、それを見逃さなかったタイタンは拳を叩き込むとシオンを殴り飛ばしてしまう。
殴り飛ばされたシオンは倒れると血を履いてしまい、倒れるシオンを見下しながらチョン・シーはガッカリしながら潤也に言った。
「この程度なのですか?
アナタが求めた最高の戦士というのは」
「期待、外れ」
「……やる気がないのなら殺しても構わんさ。
価値のない人間を殺してもどうということはないからな」
「……ッ!!」
潤也の言葉、価値のない人間という部分を耳にしたシオンは己の中で何かに気づき、そして悟ってしまう。
「……そうか……」
(ガイの言ってたのは必要ならってことだろ。無闇矢鱈と殺すなってのはご機嫌取りか何かだ。平和を壊すコイツらに価値はない……なら……)
「……殺るしかない」
潤也に言われてシオンを殺そうと近づくタイタンとチョン・シー。2人が徐々に近づくとシオンは拳を地面に叩きつける。
何の意味がある、そう言いたげな顔でチョン・シーは笑ってしまうがシオンが拳を叩きつけると雷が地を駆けて敵に迫っていく。
「なっ……」
地を駆ける雷に気づいたチョン・シーは慌てて避けようとするもシオンに近づいていたが故に回避するほどの余裕が無い位置にあり、避けるという動作にチョン・シーが移行するよりも先に地を駆けるシオンの雷が鋭い矢となってチョン・シーの右足を貫く。
「ぎゃぁぁぁあ!!」
「……うるせぇよ」
シオンは素早く立ち上がるとチョン・シーを蹴り飛ばし、接近してくるタイタンが右の拳で攻撃を放とうとすると右手に雷を集めて剣の形にして一撃を放つ。雷の剣、そう呼ぶに相応しい武器から放たれたシオンの一撃は攻撃を放とうと構えるタイタンの右腕を切り落とし、腕を切り落とされた痛みで悶えているとシオンは雷の剣を消してタイタンの頭を掴む。
「痛い、痛い、痛い……」
「痛いのが好きならプレゼントしてやるよ」
痛いと連呼するタイタンに更なる痛みを与えようとシオンは敵の頭を掴む手から直に雷を流し込むように放ち、シオンの放つ雷が彼の手から直接体内へと流し込まれるタイタンは苦痛による悲鳴を上げながら雷による力で体全体を焼かれてしまう。
一瞬、一瞬にしてタイタンは黒く焼け焦げ意識を失い、意識を失ったタイタンをシオンは投げ捨てると雷の矢に右足を貫かれたチョン・シーに迫っていく。
「がっ、あっ……オマエ……!!
卑怯者め……!!」
「卑怯?
無実の人間を襲うヤツが偉そうに言うなよ」
「このクソ野郎が!!」
シオンに右足を負傷させられたチョン・シーは怒りに任せてシオンを攻撃しようとするが、シオンはチョン・シーが攻撃を放つ前に左手に雷を纏わせると敵の顔面を数度殴り、顔を殴られて怯む敵の腕を掴むと本来曲がるはずのない方向へ力任せに曲げさせて骨を折る。腕の骨を折られたチョン・シーが悶えているとシオンは雷を纏う左手による手刀で腕の骨を折られていない方のチョン・シーの肩を貫き抉る。
「ぎゃぁぁぁあ!!」
「どうした?オレの力を試したかったんだろ?
それとも何だ?こうなることを想定してなかったのか?」
敵の肩を抉った手刀を引き抜くとシオンはチョン・シーを蹴り、蹴りを受けたチョン・シーは倒れてしまうとシオンに怯えたかのような表情を見せながら逃げようとする。
「死にたくない……死にたくない……!!」
「……オマエ、うぜぇよ」
シオンは雷を強く纏うと槍を生み出し、生み出した雷の槍を手に持つとそれを用いてチョン・シーを刺し殺そうとする。
「死ね」
敵に情けは無用、シオンは敵を葬るために一切の情けを持たずに雷の槍で一撃を放とうとした。しかし……
シオンの雷の槍がチョン・シーに迫ろうとするとそれを阻止するように刀が現れてシオンの一撃を止めてしまう。
「!!」
蒼い炎を纏う刀、その刀に覚えがあるシオンは刀を持つ人物の方に目を向ける。刀を持つ人間、シオンの前に現れてチョン・シーを殺そうとするシオンの一撃を止めた人物は……ガイだった。
「やりすぎだ、シオン……!!」
「ガイ……!!」