三二戦目
絶体絶命、倒れるシオンにトドメをさそうとシンラの一撃が放たれようとしていた。
紫色の雷が力を高められたことでエネルギー波のようになり、そのエネルギー波が光線となってシオンに向けて解き放たれる。
解き放たれた光線は地を焼きながらシオンに迫っていき、光線が迫る中でシオンはなんとかして立ち上がって迎え撃とうと行動を起こそうとした。が、虚をつかれたことにより負ったダメージの影響で思考した行動に体が反応を起こすのが遅れてしまい、もうすぐそこまで迫っているという中でシオンは無防備なまま光線の前に立たされる形になってしまっていた。
「クソ……」
(もう、間に合わねぇ……)
ここまでか、シオンの中で戦意が途切れて諦めが彼の中で生まれたその時、彼を守るように雷を纏ったウサギの精霊・ライバが現れ、現れたライバは雷を纏ったまま光線を迎え撃つように突進していく。
ライバの登場とその攻撃によって光線がシオンに直撃する展開は避けられるが、光線とぶつかり合う形で突進を行ったライバは光線の軌道を天へと逸らすと反動によって負傷してシオンの前に倒れてしまう。
「ライバ!!」
自分を守って倒れたライバの名を叫ぶシオン。シオンに名を叫ばれたライバはゆっくりと起き上がると向けて告げた。
「……クールになれよマスター。
兎角、ここでアンタが倒れたら世界はゲームオーバーなんだぞ……」
「ライバ……」
「オレとマスターが今残ってる最後の希望ってやつだろ?
なら……この困難をクールに乗り越えて勝つの最高な展開だろ?」
「……けど、オレの体は……」
大丈夫だぜ、とライバはゆっくりとシオンに歩み寄ると彼の体に手を添え、そして雷を強く放出させながらシオンに伝えた。
「マスターとオレは一心同体……。
兎角、オレたちが最高にクールになれば向かうところ敵無しだ」
「ライバ、オマエ……まさか……」
「ウサギの精霊・ライバ……マスターのためにクールに決めるぜ」
無駄なことを、とシンラは紫色の雷を再び右手に集めるとそれを巨大な玉に変化させ、巨大な玉に変化させた紫色の雷を躊躇うことも無くシオンとライバに向けてシンラは放つ。
放たれた一撃はシオンとライバを飲み込むと爆ぜ、巨大な雷の玉が爆ぜると天高くまで爆炎が上がる。
シオンとライバが避けた形跡はない、その事実を前にしてヒロムとガイ、イクトは彼らがやられたと感じると同時に絶望感を抱き、ヒロムたちの表情を見たシンラは嬉しそうに笑い始める。
「ハハハハハハ!!
残された最後の希望とやらは散った!!
これでタイムリミットが来れば世界はオレのものとなる!!哀れだな人間……オレを殺さなければ止められないパンデミックを防ぐ手が完全に失われた!!さよならだオレという神に逆らいし人げ……」
勝ちを確信して高らかに笑うシンラの言葉を遮るように爆炎が何かによって吹き飛ばされ、爆炎が吹き飛ばされると強い衝撃がシンラを襲い吹き飛ばす。
衝撃に襲われ吹き飛ばされたシンラは倒れそうになるも受け身を取ると立て直し、立て直すと紫色の雷を纏いながら爆炎が消された方……つまり、シオンとライバが倒されたはずの方へ視線を向ける。
シンラが視線を向けたその先、爆炎が消えていく中でシオンが姿を現す。
だがシオンの姿は先程までとは違った。
銀髪は地に着くほど長く伸びて時折放電し、両肩、両腕、胴、両脚には雷のマークの刻まれたアーマーが装備されていた。
見た目の変化、シオンのその変化にシンラが驚く中ヒロムはあることに気づく。
「シオン、ライバはどこに行った……?」
「……」
「シオン?」
「精霊・ライバは今この瞬間だけオレの魂と1つになった。
倒さなければならない敵を倒すために……アイツはオレに力を託してくれた。シンラ……オマエを倒すためにだ!!」
「精霊と1つになった?
笑わせるな。そのアーマー、それは精霊を武装に変換して纏っているものだろう?ならば答えは出ている……オマエは強さのために精霊を利用することを選んだんだ!!」
「……」
「否定できないか?
なら教えてやろう……その程度の浅知恵でオレの支配からは逃れられないことを!!」
何をしてもシオンは自分に勝てないと言いたいシンラは瞳を妖しく光らせ、さらに右手をかざしながら光を発させるとシオンが纏うアーマーを破壊しようとする。
何かの力により破壊しようとするシンラの光がシオンの方へと向かうと彼の体を覆い始め、シオンの体を覆う光は彼の纏うアーマーに触れるとそのまま破壊しようとした。
しかし……
シンラの発する光に体が覆われていく中でシオンは瞳を強く光らせて雷を体外へと放電して覆う光を跡形もなく消し去り、放電により光が消えるとその余波がシンラにまで伝ってシンラの右手に衝撃が走って負傷させていく。
「何!?」
まるでシンラの支配を拒むかのように発せられた雷電。これまでに無い攻撃方法により支配の力を振り切るだけでなく右手を負傷させられたシンラは右手を負傷させられたことに対して驚くと同時に負傷させたシオンに対しての怒りが奥底から溢れ出てきたのか怒りの感情を露わにすると左手に紫色の雷を纏わせながら走り出す。
「許さんぞ……人間風情が!!」
シオンへの怒りを爆発させるシンラは左手に纏わせた紫色の雷を刃のように変化させながらシオンに接近して一撃を放とうとするが、シオンは防ごうとも避けようともせずにただ立っていた。
シオンが防ごうとも避けようともせずに立つ中でシンラは彼を殺そうと一撃を心臓に向けて放つ……が、シンラが攻撃を放ったその瞬間にシオンの右手がシンラの手刀を掴み止めていたのだ。
動く素振りはなく、そして動いたその瞬間をシンラは察知すらできなかった。何が起きている?それすら分からないシンラが驚いているとシオンは掴み止めた敵の手を離し、シオンが手を離すとチャンスだと考えたシンラは彼を攻撃しようとする。
が、シンラが攻撃しようとすると何かに激突されたような強い衝撃が彼の全身を襲い、衝撃に襲われたシンラは勢いよく吹き飛ばされて倒れてしまう。
もはや何が起きたかを理解してる余裕もない。いや、理解しようとしても何も理解できないし、手掛かりとなることすら分からないのだ。
「バカな……どうなっている……!?」
(オレの力を……オレの支配を逃れることは不可能なはずだ!!
ヤツらが見出したわずかな希望に縋るかのようなやり方はもう通じないことを示した、つまりもうヤツにはオレの支配を逃れる方法も防ぐ方法もないはずだ!!なのに何故……ヤツはオレの支配を逃れるだけでなく拒絶し、そしてオレに触れて何の影響も受けない!?)
どうした、とシオンは何が起きてるのか倒れながら理解に苦しむシンラに問うように言うと踏み出し、歩を進めながらシオンはシンラを睨みつけるような鋭い眼差しを向けて告げていく。
「オマエの根底にあるものはよく理解できた。
そしてオマエが落ちるとこまで落ちた外道ってのもよく分かった。だから……躊躇いもなく殺せる」
「殺す?不殺を説かれていたのに破るのか?」
「それがライバの意思だからだ、
今この瞬間……オレたちが1つとなっているこの瞬間だけはオレの意志に素直になるってな」
不殺はこの瞬間だけ忘れる、その意を込めた言葉を口にしたシオンは全身に雷を強く纏うとシンラに向けて宣告した。
「覚悟しろシンラ……。
兎角、オマエはオレが……オレたちがクールに殺してやるよ」




