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三一戦目


 ありえない、シンラは倒れる中でそう思うしか無かった。


 他人の運命とその行く末、そしてあらゆる事の結末を支配して思い通りに書き換える力を持つシンラは数分前までシオンたちを相手に優勢にあった。研究所を吹き飛ばすだけの力を発揮してヒロムが己を犠牲にして防がなければならないほどの規模の威力を見せつけた。

 

 結果としてヒロムは戦線離脱を余儀なくされるレベルのダメージを受けてしまい、残すはヒロムに劣る能力者のシオンとガイだけだった。

 

 他愛もないこと、ヒロムを倒すのに比べれば楽なものだとシンラは思っていた。なのに……

 

 これまでの状況を覆すかのようにシオンはシンラに攻撃を命中させ、ガイに至ってはシンラの攻撃を軽々と防ぎ消し去ってしまったのだ。

 

 ありえない、ありえるはずがない……!!

 

 シンラの力の弱点である精霊の力という点はヒロムという存在がなければ残すはシオンの宿す精霊のライバだけ、その点は大した問題にもならない些細なことだ。そこを差し引いてもシオンとガイにシンラを倒す術はないはずだった。

 

 それだけシンラの力は強く、そしてシンラも自身の力の強さを自覚していた。

 

 だからこそありえないと思っていたのだ。

自分の力に対して格下のはずの2人が自分の力に対応出来ていることが。

 

「何故だ……何故オレの支配を逃れられる!!

オマエたちの力はオレには遠く及ばない!!なのに何故……」

 

「決まってんだろ……。

オマエの力がもうオレたちには通用しないからだ!!」

 

 シンラにダメージを与えたシオンは彼を倒すべく雷を纏うとシンラに攻撃を放とうと迫り、シオンが攻撃を放つべく接近してくるとシンラはその攻撃を阻止しようと瞳を妖しく光らせながら叫んだ。

 

「その場で止まり爆ぜろ!!」

 

 シオンの攻撃の結末を操作すべくシンラは叫び、シンラが叫ぶとシオンの体は動きを止めてしまい、そして雷は力を高めるとシンラの言葉に従うかのように爆ぜようとする。だが……

 

「がぁぁぁあ!!」

 

 シオンは拳を強く握ると爆ぜようとする雷を抑え込み、さらに抑え込んだ雷を圧縮するように小さくさせると拳に同化させ、拳に雷を同化させるとシオンは再び動き出してシンラの顔面を殴る。

 

 シンラの顔を殴るシオンの拳は敵に触れると同化させた雷を外部へと強く放出させると同時に炸裂させて敵に更なるダメージを与える。

 

 シオンの拳と炸裂した雷に襲われたシンラはやけどに近いダメージを負いながら倒れそうになってしまい、シンラが倒れそうになる中シオンは雷を右手に集めると槍にして装備して追い詰めようとする。

 

 ありえない、ありえない、ありえない。

今起きている現実を否定して目を逸らすように言葉を発するシンラはどこからともなく剣を出現させて装備するとシオンを迎え撃とうとするが、シンラが剣を構えると横からガイが割って入るように現れ、現れたガイは蒼い炎を纏わせた刀で一撃を放つとシンラの構える剣を破壊してしまう。

 

「なっ……」

「くたばれ!!」

 

 シンラの剣を破壊したガイは蒼い炎を纏わせた刀を強く握ると続けて連続攻撃を放って敵を仕留めようとし、ガイの連続攻撃を前にしたシンラは緑色の炎を強く纏いながら防ぐ躱すを繰り返してガイの攻撃から逃れようとする。

 

 ガイの攻撃を前に防戦一方となるシンラ。そのシンラがガイの攻撃を躱すと同時にシオンは雷の槍を投げ飛ばし、シオンが雷の槍を投げ飛ばすとシンラは飛んでくる攻撃に向けて手をかざす。

 

「これ以上はやらせん……!!」

 

 シオンの投げた雷の槍を止めようとシンラは妖しい光を発し、発せられた光は雷の槍を覆うとその動きを封じようとした。が、動きが止まりかける雷の槍に対してガイは蒼い炎を纏わせた刀で斬撃を放って破壊を行うと雷の力を奪い取るように刀に纏わせる蒼い炎の上に重ねさせ、蒼い炎と雷を纏わせた刀を構えたガイは一閃を放って斬撃を飛ばすとシンラに直撃させてダメージを与える。

 

 ガイの攻撃を受けたシンラは酷く負傷し、負傷したシンラは体を大きく吹き飛ばされながらも立て直して構え直そうと妖しい光を纏っていく。しかし……

 

 シンラが妖しい光を身に纏うと彼は突然苦しそうに頭を押え、何が起きているのか分からないシンラはただその苦しみに悶えるしか無かった。

 

「何だ……これは……!?

何が起きて……!?オマエたちが……オマエたちがなにかしたのか……!?」


「別に何もしてねぇよ。

オレたちはただ、オマエの力に負けないためにその先を目指しただけだ」

 

「オレの力の先……だと?

何をバカな……」

「オマエの力はたしかに脅威だ。無策で挑んでも策を用意して挑んでも結局全ての結末を操作されて終わるのがオチだ。けどな、オレたちはそのオマエの力に騙されてたんだ」

 

「シンラ、オマエの力は同じ人間に対して短期間で連続使用されない。オマエはそれを悟らせないためにオレたちには一切攻撃が通じないことを強調する言い方をし、そしてオレたちに対して確実に攻撃を決めるために大技を放たせるように毎度仕向けてたんだ」

「オマエの能力の本質は理解出来ねぇが……オマエの決めた結末に対してその先となる更なる行動を付与してしまえば支配を抜け出せる。オマエの力は万能ではない……オレとガイがそれを証明した今、オマエの支配を恐れる必要もねぇんだよ!!」

 

「オレの力を超えたとでも言いたいのか……!?」

「ナメんなよ。オレたちはこれまで多くの困難を前にして何度も乗り越えてきた。都合よく目を逸らして結果を変えるしかしないオマエにはない力がオレたちにはあるんだよ!!」

 

 シオンは雷を右手に集めて剣の形を与えると構え、雷の剣を構えたシオンはガイと共にシンラにとどめをさすべく走り出した。

 

 しかしその時……

 

 2人が走り出そうとするとシンラは何故か不敵な笑みを浮かべ、敵の謎の笑みを目にしたガイが何かが起きることを警戒しようとした途端彼は吐血してしまう。

 

「……!?」

「ガイ!?」

 

「がっ……あっ……!!」

 

 吐血したガイは突然苦しみ出すと刀を離してしまい、そして苦しそうに倒れてしまう。何が起きた?敵は何をした?それらが分からないシオンはガイの身を心配して足を止めてしまい、シオンが足を止めるとシンラは嬉しそうに語り始める。

 

「いい経験をさせてもらった。

困難を乗り越えてきた、か。たしかにオレには経験のない事だ。そして……これからも経験することのないとだ」

 

「オマエ、何をした!!」

「雨月ガイの中にはベノムの毒が残っている。紅月シオン、オマエの血から抗体をつくり投与して何とか毒を抑えていたようだが……その毒をオレが活性化させたんだ」

「毒を……!?」

 

「いや、実にいい経験だ。

乗り越えたと信じている過去を操作して再び壁として目の前に立ち塞がせる……人類支配のための手段として学ばせてもらった」

 

 そして、とシンラが右手をシオンに向けてかざしながら妖しい光を発させると緑色の炎と雷がシオンを襲い、攻撃を受けたシオンは勢いよく吹き飛ばされてしまう。

 

「が……」

「オマエの中で一瞬でも意思が途切れてしまえばオレは再び全てを支配する立場を取り戻す。これで元通りだ」

 

「くっ……」

「さよならだ紅月シオン。この戦いにより得た経験に関してのせめてもの謝礼として……この場で殺してやろう」

 

 倒れるシオンに終わりを告げるように言葉を発するシンラはかざした右手に紫色の雷を集めると光線に変えて撃ち放とうとする。

 

 絶体絶命、追い詰められたシオンは……

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