三〇戦目
アランたちを連れて先に外へと避難したイクト。
彼らを危険に晒さぬように細心の注意を持って警護を行っており、そして彼は今も中で戦うシオンたちの無事を祈っていた。
「みんな……」
(きっと大丈夫だよな……。
シオンとガイ、オレたちのリーダーの大将が挑んでるんだ。
戦闘面で上位クラスの3人が戦ってるならきっと……)
シオンたちなら大丈夫だろう、イクトがそう思っていると突然研究所が爆発し、爆発した研究所は炎を巻き上げながら崩壊を始める。
「そんな……!?」
シオンたちなら大丈夫、そう思った矢先に研究所が崩壊していく。何とかしなければ、イクトがそう思って動こうとすると崩壊する研究所の中から光とともに何かが現れる。
現れた何か、それは……シンラだった。
容姿が少し変化しており、肌は浅黒くなって髪は無駄に長くなっていた。
アランたちを守るように大鎌を構えるイクト。だがイクトはシンラを倒すために動くことが出来なかった。
そう、シンラの能力のせいだ。未来を望んだ形に変えて導く、イクトはシンラの手によってシオンや自分たちの行動を支配されていたことを知ってしまっているからこそ攻めようとしても攻められなかった。
下手に動けば都合よく結末を支配されて為す術もないまま倒されてしまう、そうなればアランたちが危険に晒される。
だからこそイクトは動けなかった。
そんなイクトの方に視線を向けたシンラは不思議そうな目で彼を見ながら何かを話し始める。
「抵抗する必要は無い、そのまま見届けろ。
あと数時間でオマエたちはオレの力により拡散されたウイルスを受けてあらゆる感情もあらゆる知識も失い奴隷となる。そのまま何もしなくても未来は確定される、そしてオレが神となり君臨する世界でオマエたちはオレを崇めるのだ」
「ふざけんなよクソ野郎……!!
オマエみたいなヤツが支配するなんて誰も崇めねぇよ!!」
「……信仰心がないなら身をもって知らせてやろう。
己の愚かさとオレの絶対的力を……!!」
シンラの目的とその人間性を否定するように叫ぶイクトを黙らせるかのようにシンラは光を右手に集めるとイクトに向けて攻撃を放とうと力を溜める。
こうなったらやるしかない、シンラの攻撃に対してイクトは覚悟を決めな応戦しようとした。だがその瞬間、崩壊した研究所の瓦礫が天高く打ち上げられ、瓦礫が打ち上げられるとその下から崩壊を免れたボロボロの状態のシオン、ガイ、ヒロムが現れる。
3人が現れるとシンラは少し意外そうな顔をしながら右手に集める力を消し、イクトへの攻撃をやめたシンラはシオンたちの方を向くと離れた位置から話しかける。
「あのまま抵抗しなければ楽に死ねたものを……。
無駄に抵抗して苦しみを増やすとは愚かだな」
「うるさいぞ……クソが」
「オマエは神じゃない……。
罪を重ねてるだけの人間だ……!!」
シンラに対して反論するガイとシオン。2人はシンラを倒すべくやる気を見せるが、その傍でヒロムは急に倒れてしまう。
「大将!?」
ヒロムが倒れた、それが心配になったイクトが彼のことを呼ぶ中でヒロムの体の変化を目にしてしまう。
背中には無数の破片が刺さっていたのだ。つまり……立っているのだけでもやっとの状態、その状態でシオンとガイとともに現れて戦おうとしていたのだ。
「ちっ……限界か……」
「なるほど……あの攻撃を防いだのはオマエのおかげか。
《流動術》という先読みの力で被害の規模を把握し、そして2人を救おうとしたのだな……オレの支配を逃れる術を身近に持つオマエにしか防げなかったからやむを得ず選択したか」
うるせぇ、とヒロムはなんとかして体を起き上がらせると血を吐き、血を吐いたヒロムは少し苦しそうな顔をしながらシンラに反論した。
「自分の思い通りになるような都合のいい世界を作って神を名乗ろうとしてる下衆は黙ってくたばれ。
結果を好きなように書き換えてしか受け入れられないオマエは……その2人に倒されて終われ」
「2人に倒されて?
バカを言うな。オレの力に適うわけがないだろ?最強のオマエはそのザマ、もうオレの勝利は目前だ」
「なら思い知れよ……オマエの力を上回る力を披露させてやるよ」
頼むぞ、とヒロムは苦しそうに言葉を発し、ヒロムの言葉を受けたシオンは拳を強く握ると走り出す。
走り出したシオンは雷を強く纏うとシンラに迫っていくが、シオンが迫る中でシンラは余裕があるのか構えようとすらしなかった。
「くだらないことだ。オマエたちの力はオレには届かない。
人間の力はオレの支配を逃れられずに操作される。オマエたちが見出した希望とも言える精霊の力の関与している攻撃ももはやオレが受けることは無い。つまりオマエたちの攻撃はオレには届かな……」
シオンたちの攻撃は届かない、強気に発言しようとしたシンラだったが、シンラが最後まで言い終える前にシオンは拳に雷を強く纏わせるとシンラの顔を殴る。
防ぐでもなく止めるでもなく、シンラは顔を純粋に殴られてしまう。これまでならばシンラの力を前にしてシオンの攻撃の手が勝手に止められたり軌道を逸らされていたりしていたのに今放たれた一撃はシンラの顔に命中したのだ。
シオンの一撃を受けたシンラは仰け反ってしまい、仰け反ったシンラだったが、対してシオンは蹴りを放って追い詰めようとした。
「させん……!!」
シオンの蹴りを前にして仰け反った体を立て直したシンラは瞳を妖しく光らせて攻撃そのものの運命を支配しようとした……が、シンラが支配しようとする中でシオンは雷を脚に強く纏わせると後先お構い無しに一撃を放ち、放たれた一撃は止まることなくシンラの腹に直撃すると共に雷を炸裂させて敵を吹き飛ばしてみせた。
吹き飛ばされたシンラは崩壊した研究所の瓦礫に叩きつけられてしまい、倒れるシンラは何が起きてるか分からないまま立ち上がるとシオンを睨みながら妖しい光を纏いながら叫ぶ。
「ふざけるなぁ!!
このオレに触れるなど……万死に値する!!」
シオンの攻撃を受けたことに対して怒りを隠せないシンラは炎や雷、風を発生させるとシオンに向けて撃ち放つが、シンラが攻撃を放つとシオンを守るようにガイが蒼い炎をその身と手に持つ刀に纏わせながら現れると敵の攻撃全てを受け止め、シンラの攻撃を受け止めたガイは蒼い炎を激しく燃え上がらせると受け止めた敵の攻撃を消し払ってみせた。
「バカな……オレの力を!?」
「うぉぉぉぉ!!」
自身の攻撃を防ぐだけでなく消してしまったガイに驚きを隠せないシンラの動きが止まってしまうとシオンはシンラに接近して拳を叩き込み、一発が命中するとシオンは続けて連続でシンラを殴っていく。
シオンは連続攻撃を受けるシンラはこれまでの圧倒的な強さがなかったかのように一方的にやられ、シオンが渾身の一撃を放つとまた倒されてしまう。
「バカな……!?
何故、何故だ……!?」
「さっさと立てよ……クソ野郎!!
オマエのそのふざけた力ごと何もかもを壊してやる!!」




