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二七戦目


 突然現れて鬼灯潤也を消し去った謎の痩せ細った少年。シンラと名乗るその少年を前にしてシオンとガイが構える中、イクトは何故か悔しそうに拳を強く握る。

 

「大将、オレのミスだ……!!」

 

「やめろイクト。オマエのせいじゃない。

全部……コイツが仕向けたことだ」

 

「ヒロム、イクト。オマエらはさっきから何を……」

「シオン、それにガイ。落ち着いて聞け。

今回の件の黒幕はそこにいる男だ」

 

「「!?」」

 

「鬼灯潤也じゃないのか!?」

「コイツは一体……まさか、ヒロムを倒せる可能性を秘めた最悪の能力者か!?」

 

「そうだガイ。そいつの名はシンラ、鬼灯潤也が研究所から連れ出した最悪の能力者だ」

 

 その通りだ、と痩せ細った少年が一言呟くと彼はヒロムを見ながら彼の口にした言葉について補足するように話していく。

 

「最悪の能力者、その条件は今達成された。紅月シオンだけでは足りず、雨月ガイがいても足りず、黒川イクトがいても足りない……そこにオマエが加わることでオレの目的は達成のための道を進む」

 

「おい、ヒロム……どういうことだ?

オマエは黒幕を知ってたのか!?」

 

「違うよシオン。大将はさっき知ったんだ。

シオンとガイと分断されたオレが見つけた証拠で」

 

「証拠だと?」

「正確にはそうなるように導かれたんだ、そいつに。

オレたちがここに来ることも、大将がギガンテスの相手をすることも、シオンとガイが鬼灯潤也を追い詰めるのも……オレがあの部屋に入るのも全部仕込まれてたんだ」

 

「何言って……」

 

 素晴らしい、と痩せ細った少年……シンラは拍手とともにイクトの言葉について称賛すると彼に代わるようにこれまでの事を話していく。

 

「鬼灯潤也率いる《鮮血団》はオレにとって好都合な駒だった。仲間のために資金のやりくりをしようと研究所に来て金目の物を持ち去ろうとしたあの男に接触して記憶を操作し、冷酷な男に変えると他のヤツらはあの男を元に戻そうと説得に来た。その度に記憶を書き換え、鬼灯潤也に賛同するように仕向けた」

 

「まさか血鮫の言ってた鬼灯潤也が豹変したって話は……オマエの仕業だったのか!!」

「オレがやったことだからな。記憶の改竄、ヤツらの頭の中には情報と記憶の操作を可能とするチップを仕込んでおいた。オレの力で容易く操れるようにな」

 

「野郎、何のために……!!」

「オマエたちを利用するためだ。そのために都合よく書き換えて動かさせた。戦国乱世の実現などというくだらない戯言と《ブラッドアウト》が完成したという虚言をな」

 

「《ブラッドアウト》が完成したという……虚言?」

「どういうこと……」

「ハーランが連絡を取ったという技術者はいなかったんだ。そいつがホーランを操り、さらにドイツ側に仕込みをしてあたかも人間殲滅兵器の設計図を盗み出させたと思い込ませるためにな」

 

「どうやってだ!?」

 

「アイツの能力だ。アイツは……自分を中心にネットワークを構築して支配する力を持っている」

 

「なっ……そんな力が!?」

「だがヒロム、そんな力があるなら鬼灯潤也をシオンに差し向けたりしなくても……」

 

「オマエらが見つけたUSB、アレがその力の影響範囲を拡大させたんだ。PCに接続してウイルスの罠があれば危険とシオンが判断して脳をPC代わりの媒体にして中身のデータを読み取る荒業を行ったことでな」

 

「オレが……!?」

「シオンは悪くないよ。これに関しては……この男が異常すぎる。

大将がシオンにハッパかけることも、ガイが毒を消さずにベノムを見つけることも、シオンがUSBの中身を見る方法も、血鮫ってのがシオンとガイに全てを話すことも……化け物でしかないギガンテスを大将が倒すことも、これまでの何もかもをそいつは予期して鬼灯潤也を動かしてたんだ」

 

「何だと……!?」

「ヤツには未来を知る力があるのか!?」

 

 少し違う、とガイの言葉についてヒロムは言うとシンラのこれまでの動きについて驚くべき事を明かす。

 

「ヤツは未来を支配する力がある。シオンの《晶眼》が数ある未来から結論を見出すのとは異なる力……これから出される未来という結論を自分の望み通りに変化させられる」

 

「なっ……」

「そんな力があるのに今まで身を潜めてたのか……」

 

「大将が万全でない今だから動いたんだ。シンラのその力で変えたはずの結論を覆すだけの力を秘めていると危険視していた大将がこの前の事件で力を失ったからこそ動き出したんだ」

 

「そう、もはやオレの支配を覆すものはいない。あらゆる結末を描けるオレは誰にも倒せない」

 

「でも、そんな情報をヒロムとイクトはどこで手に入れた?」

「オレがある部屋の中にある隠し部屋を見つけたんだ。そこには1枚のディスクと記録データの残されたPCがあって、中身を確かめると……ディスクには何かに抗うように苦しむ鬼灯潤也の姿が毎日記録されていた。そしてPCに残された記録データの中身は今話した通りのシオンたちがどう動いて何が起きるのかが記されていた」

 

「なっ……待てよ。

じゃあさっきイクトが鬼灯潤也になにか聞こうとしてたのって……」

「何に苦しんでいるのか、そして記録データの中身は何を意味しているのかを聞こうとしたんだ。記録データにはあの場で大将がトドメをさして終わるってなってたからオレが動けばどうなるかを試そうとして……」

 

「それは違うな。オマエは結果を変えようとしたんじゃない。そうしようと動かされただけだ」

「……ってことは最初から仕組まれてたのか。どこまでも不気味な力だ」

 

「失礼な言い方だな。この力は言わば神の力、オマエたちを等しく統べるものの力だ」

 

「何を……!!」

 

「落ち着けシオン。イクトのおさらいを聞くのもヤツの話を聞くのも飽き飽きしてきた。だからそいつに今聞くべきことを聞いてやる」

「聞くべきこと?」


「シンラ、オマエの狙いは何だ?

こんな遠回しすぎるやり方で何を求める?」

「本題に入ろうということか……いいだろう。

オレの計画のゴールはただ1つ、この世界の人類を我が手中に治めてあらゆる記憶や感情を消し去りオレが支配する世界に変えることだ。争いもなければ恐怖も悲しみもない世界、その世界こそがオレの計画の完成系だ!!」

 

「未来を支配する力で何もかも自分で決めるってのか!!」

「けど世界をオマエ1人で変えるなんて出来るわけが……」

 

「そのために紅月シオンにUSBの中身を起動させたんだ。人は能力を使えば機械すら超えることを証明した……だからオレも試して成功させたのさ。この世界全体に繋がるネットワークに我が力を埋め込むことを!!あと数時間でオレの中で全人類の頭の中に仕込むウイルスが完成して解き放たれる……その瞬間にこの世界の全人類は何が起きたかも分からぬまま全てを消されて支配される!!オレのための世界が……オレの手の掴めるところまで来ているんだからな!!ハハハハハハハハハ!!」

 

「ふざけんな……!!」

 

 高笑いを決めるシンラに対してシオンは怒りを抑えられぬ様子で雷を纏い、雷を纏ったシオンは走り出すとシンラを倒そうと迫っていく。

 

「オマエだけは許せねぇ!!血鮫を……鬼灯潤也を……平穏を取り戻そうとしてたアイツらを駒にしたオマエだけは!!」

 

「怒りか。面白い……そんなものは支配の力の前では意味をなさないとオレが教えてやろう」

 


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