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一九戦目


 《鮮血団》、そしてそのリーダーの鬼灯潤也について語ると 言う血鮫。シオンの攻撃で腹を穿たれた血鮫の生命はおそらく長くないが、そんな中で血鮫は敵であるはずのシオンとガイに何かを残そうとしている。

 

 が、その血鮫の行動をシオンは安易に受け入れることは出来なかった。

 

 血鮫とは先程まで殺し合いをしていた相手だ。そんな相手の言葉を簡単に聞けるはずがなかった。

 

「オマエの言葉が本当かも分からないのにオマエの話なんか聞けるか。時間稼ぎのつもりか知らねぇが遺言なら勝手に1人で呟いてろ」

 

「……時間稼ぎなんかではない……。これは……今の鬼灯潤也を2人なら止められると確信してるからこそ話したいんだ」

 

「だからオマエの話は……」

 

 待て、とシオンが頑なに血鮫の話を聞こうとしないでいるとガイはシオンに向けて今の血鮫について話していく。

 

「シオン、ここは血鮫の話を聞こう。オレたちは鬼灯潤也を深くは知らない。それに万が一の時に用意されてる鬼灯潤也とホーランの計画のことも聞けるかもしれない」

 

「だがコイツは敵だ。そんなヤツから聞いた話を信じることなんて……」

「信じる信じないは聞いてからだ。それからでも遅くはない。今さっきも言ってたようにオレもシオンも僅かな時間でも休めるなら休んで次に備えたい。ならその一環としてコイツの話を聞くのはありじゃないか?」

 

「……無駄な話だったらどうする?」

「その時は忘れるだけだ。オレたちは一時の休みの最中に血鮫が話し始めたから情報を得ようと聞いてみたけど無益な情報で無駄だったと忘れればいい」

 

「……わかった。そこまで言うなら話だけは聞く。ただし、コイツが時間稼ぎするような怪しい真似をしたらここで首を切り落として殺すからな」

 

「問題ない。その時はオレの刀を使え」

 

 血鮫の話を聞く、ガイの提案を1つの条件を提示した上で聞き受けたシオンは話があると言う血鮫に歩み寄ると彼に尋ねた。

 

「それで?オレたちに話したいことは何なんだ?」

 

「……まずは《鮮血団》についてだ。オマエたちも気づいているかもしれないが幹部ではない団員のほとんどは能力者ではない」

「だろうな。安っぽい武器振り回してる雑魚だけだったからな」

「それで?」

 

「……そもそも彼らは元から《鮮血団》にいたメンバーではない。彼らは潤也が今のこの国に不満を持つものを煽って集めた寄せ集めのテロリストを軽く人体実験した程度の強化人間だ。そして、《鮮血団》とはオレたちが人体実験を受けていた研究所で強化人間にされた際に鬼灯潤也がそこを抜け出して皆で生き抜くために身を寄せ集めあって出来たチームだ 」

 

「チームだと?」

「どういう事だ?オマエらはシオンを仲間にした上で戦闘種族の再興を企んでたんじゃないのか?」

 

「最初は違う……。最初はオレたちにこんなことをしたヤツらを殺して脱走するために集まり、そして誰にも邪魔されずに人生をやり直したいという願いがあったからこそ出来たチームだった……そのための計画を実行するために強化人間の手術や実験に何度も耐え、ベノムやタイタンが怯えれば励ましあって乗り越えようとしていた。けど……」

 

「ヒロムが全ての元凶である十神アルトを倒したことで話が変わったんだな?」

 

「そうだ……強い能力者を生み出そうとした十神アルトが倒されたことでその傘下にあった研究所の人間は政府の手から逃げるように姿を消した。その結果オレたちは自由を得たが……復讐とやり直しのための計画のために耐えてきたオレたちはどこに向けていいのか分からない虚無感に襲われた」

 

「だからオレを狙ったのか?」

 

 違う、とシオンの問いに血鮫は一言で答えると続けて話していく。研究所を抜け出す自由を得られた血鮫たちがどうなったのかを。

 

「最初は潤也がベノムやオレたちに人生をやり直す上で何をしたいのか尋ねてきた。学校に通いたい、オシャレがしたい、旅に出たい、みんなと家族のように過ごしたい……そんな願いをそれぞれが口にした時潤也は笑顔で『オレが全部叶えてやるから任せとけ』と言ったんだ」

 

「あの鬼灯潤也が?」

「妙だな……オレたちが見た鬼灯潤也は平和なんて感じさせないような冷徹な男だった。それなのにどうしてそんなことを……」

 

「それが潤也がオレたちに見せた最後の優しい笑顔だった。その次の日……潤也はオレたちの願いを叶えるためには金が必要だとして抜け出した研究所に戻って金になりそうなものを探しに行ったんだ。そこから帰ってきた潤也は……別人だった」

 

「別人?」

 

「潤也が戻ってきた時、その後ろにはかつてオレたちに人体実験をしていた研究所の人間が何人もいた。オレたちが殺したいほどに憎かったヤツらを連れてきたことが信じられなかったのに潤也は冷たい目でオレたちを見ながら言ったんだ。『こんな世界に価値はない。オレたちで世界を作り替える』って」

 

「世界を……」

「それが戦国乱世の時代に戻すための計画か」

 

「最初はオレたち全員が反対したんだ。潤也はきっと研究所のヤツらに何かされておかしくなったんだと。でも次の日……潤也はヤツらを皆殺しにしていた」

 

「「!?」」

 

「それだけじゃない。オレがその場に駆けつけた時、前日まで反対していたはずのベノムたちが笑いながら潤也について行くと言い出した。潤也と同じように人が変わったかのように」

 

「何があったんだ?」

 

「分からない……オレだけが反対する意志を持ったまま皆は何かに取り憑かれたかのように豹変したんだ。何かがおかしい、そう思ったオレは納得いかないまま潤也について行くことを決め、この目で全てを確かめようとした。その中でオレは潤也が紅月シオン……オマエを仲間にして戦闘種族を再興して力で全てを支配する国に日本を変えようとしてることを話され、潤也はオレに対してオマエを倒すためのオマエの全てのデータと姫神ヒロムの戦闘時の動きと反応性を反映したデータを元にした強化を施された。そしてベノムやタイタン、チョン・シー、才角 、蒼月、海月も潤也によって人体実験をされた」

 

「鬼灯潤也が人体実験を?」

「鬼灯潤也はオマエと同じように被検体にされていたんじゃないのか?それなのに何故人体実験を施す側になっている?」

 

「そこまでは分からないんだ、雨月ガイ。

ただ……1つ分かることは潤也は豹変したあの日から必ず 《シンラ》の名を口にするんだ。『シンラとの約束のため』『シンラの願いを叶えるため』って」

 

「シンラ……それは研究所から持ち出された兵器のことか?」

「兵器じゃない……オレたちと同じ強化人間。そして人体実験が言うには目を醒ました今 、姫神ヒロムも敵わない最悪の能力者として君臨すると」

 

「ヒロムが敵わない最悪の能力者……?」

「血鮫、質問させてくれ。何故鬼灯潤也はシオンを求めた?」

 

「……血だ」

「血?」

 

「……潤也の体はオレたちとは異なり《月閃一族》の血の一部を投与されているらしい。潤也が紅月シオンを求めたのはその血に紅月シオンの血を足すことで自分も《シンラ》に匹敵する能力者として覚醒して姫神ヒロムを殺す目的があったんだ」

 

「何のためにヒロムを?」

 

「……彼は……今のこの国の平和の一部 となりつつある……。

そんな彼を始末すれば日本は崩壊すると……考えている……」

 

 徐々に超えが掠れていく血鮫。もはや限界かもしれない、それを悟ったガイはまだ聞き出したいことがあるのにどうにも出来ないのかと悩んでしまう。するとシオンは血鮫に対してある質問をした。

 

「もしオマエだけが鬼灯潤也に意志を覆されてないって言うなら教えろ。オマエはこんな話をオレたちにして何をさせたい?」

 

 シオンが血鮫に質問すると質問された血鮫はゆっくりとコートのポケットに手を入れて何かを取り出すとシオンに手渡す。

 

 シオンが受け取ったもの、それはドックタグだった。

鬼灯潤也の名と血鮫の名が刻まれたドックタグをシオンが受け取ると力は最期の力を振り絞るように涙を流しながら声を出してシオンに伝えた。

 

「潤也を……止めてくれ……!!

ホーランという日本人と……明日のタイムリミットに大規模な破壊を行なう……潤也がそれを実行すればもうアイツは元に戻れなくなる……だから……だから潤也を止めてくれ……」

 

「鬼灯潤也を……」

 

「シオン、どうする?」

 

「……わかった。任せとけ」

 

 血鮫の頼み、どうするのかとガイが気にかけているとシオンは迷うことなくそれを聞き入れ、シオンが頼みを聞き入れると血鮫は事尽きたのか静かに息を引き取る。その顔にはシオンと戦っていた時の戦士の顔ではなかった。

 

 全てを託し安からに眠ろうとする人間味のある優しい微笑みであった。

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