一八戦目
赤い瞳を白く光らせながら構えるシオン。そのシオンの言葉を受けた血鮫は立ち上がると魔力を再び強く纏いながらシオンを睨む。
「オレの先を走る?笑わせるな……!!
オマエのスペックはもはやそれ以上は変わらない。チョン・シー、タイタン、蒼月、才角をほぼ連続で倒してきた疲弊してる今のオマエにはオレを上回る余力は残されていない。まして身体強化の技である《雷鳴王》も精霊を武装化する才角を倒した力も発動出来ないほどに魔力の残りも少ないオマエに何が出来る!!」
「たしかに残りの魔力量は多くない。オマエ、倒すために使える力も後のことを考えればこうして雷纏うか剣作るかの2択くらいだ」
「ならば何故……」
「けどそれは雷を限っての場合だ。オレにはオレだけに与えられた力がある。それを使えばたとえスペックが変わらなくてもオマエを倒せる」
「ふざけるな……そんな都合のいい出来すぎた力があるはず無いだろ!!」
シオンを否定するように血鮫は走り出すと身に纏う魔力を鮫の形にしながら接近し、さらに血鮫は周囲に魔力を四散させるとその魔力を鮫の形に変えていく。
血鮫の周囲に展開される数体の魔力の鮫は水のようなものを纏うと鋭い牙を光らせながら血鮫の前を行くように飛びながらシオンに迫り襲いかかろうとする。
「手負いのオマエに能力を使うつもりはなかったがこの際だ!!
オマエの戯言をその肉ごと消すために使ってやる!!オレの能力……」
「『《牙刃》の力は魔力を数倍に圧縮しながら刃を生み出し放つ力。そして大気中の随分や酸素を織り交ぜることで生物の形へと昇華させて意のままに操れる力。この力を前にしてオマエの強がりは引き裂かれる』ってか?」
「な……」
「んで次に『何故オレの言いたいことが分かるんだ』って驚くんだろ?」
「何故オレの言いたいことが分かるんだ……なっ!?」
偶然とは思えないありえない事が血鮫の前で起きている。別にシオンが血鮫の能力を見抜きそれについて知識があったのならそれはそれでスルー出来たのだろう。だが血鮫はその後の二言目、つまり自分の言おうとしたことをシオンが把握していたことが信じられなかった。
「バカな……どうしてだ!?
どうしてオレの言いたいことが分かるんだ!?」
「この目で視てるからだよ。これから起きることをな」
「目だと?」
「名は《晶眼》。戦闘種族である《月閃一族》の直系の中でも一族を束ねる王となる素質を持ったものしか宿せない奇跡の力を秘めた目の力だ。この《晶眼》が映すものは数秒後の未来、その未来をこの目で視ることでオレは全て知って動ける」
「まさか……未来視の力!?
そんな力はデータには……」
「データ厨が覚えとけ。戦いってのはな……生と死の狭間の中で痛みというリアルを感じながら挑むからこそ価値があるんだよ!!」
「くっ……だが未来視を使ったところでオレの攻撃は止められない!!」
「いいや、止められるさ」
血鮫の言葉を冷静に否定するとシオンは雷を前面に放射し、放射した雷は手裏剣のように変化すると血鮫の能力が生み出した鮫を次々に八つ裂きにして破壊してしまう。
「何!?」
「雷鳴手裏剣、最小限の力で放たれる牽制用の技だ。
今のオレならこれでオマエの攻撃を消せる」
「そんな……未来視で視たと言うのか!?
オレの能力の鮫を壊す未来を!?」
「正確には鮫を破壊するためのオレの動きの数百パターンの未来から最適解を導き出しただけだ。そして……」
鮫を破壊した雷の手裏剣は血鮫を倒そうと襲いかかり、手裏剣に襲われる血鮫は魔力を強く纏わせた手刀で何とか弾き飛ばして難を逃れる。が、血鮫が雷の手裏剣を防ぎ切った直後に 血鮫の手が雷を帯びるとともにそれを炸裂させて負傷 してしまい、さらに雷の炸裂によって纏っていた魔力の全てが消されてしまう。
「がぁあ!!」
「視えてたからな。オマエが雷鳴手裏剣を防ぐことも、防いだ後に一瞬油断することもな」
「バカな……こんなことが……!?
はやく潤也にこのことを伝えないと……」
不可能だ、とシオンは右手に雷を集めるとそれを剣に変え、雷の剣を装備したシオンは加速しながら走り出すと血鮫を倒そうと迫っていく。
「ここでオレがオマエを倒す。だからオマエがオレの未来視を仲間に伝えるなんてことは不可能だ」
「くっ……未来視で未来を視れるからって調子に乗るなぁ!!」
血鮫はこれまでに見せなかった強い力を全身から解き放つと無数の刃を生み出し、生み出した刃を鋭く尖らせると迫り来るシオンを殺すべく一斉に撃ち放つ。無数の刃が一斉に撃ち放たれる中でシオンは轟音を響かせるようにして姿を消すと血鮫の背後に現れ、背後に現れたシオンは雷の剣を振り上げて後ろから血鮫をたおそうとした。
しかし……
「そのパターンはオレには通じない!!」
シオンの背後からの攻撃を予期していた血鮫は背中から刃を飛び出させる形で雷の剣を振り上げるシオンに向けて放ち、放たれた刃がシオンの胸部を貫き抉る。
手応えあり、これで勝ちだ。そう血鮫が確信した瞬間に胸部を貫き抉られたシオンの体が雷となって消えてしまう。
そしてその背後にいつの間にかいたシオンが雷の剣で鋭い突きを放つとその一撃は血鮫の腹を後ろから穿つ。
「がっ……」
「悪いな。オマエがオレを背後に誘導するのも視えてた」
「まさか……オレが油断する瞬間を狙うために咄嗟にカミナリで分身を……」
「卑怯だとか言うなよ?
これは……命の奪い合いなんだからな」
シオンが雷の剣を消すと腹を穿たれた血鮫は倒れてしまい、血鮫が倒れたのを確認するとシオンは一息ついて身に纏う雷を消して仁美の光を消す。
敵は倒した、それを確かめたシオンが安心していると少し離れたところから悲鳴が聞こえてくる。悲鳴が聞こえた方に視線を向けるとガイが海月に刀による一撃を食らわせたその瞬間を目撃し、ガイの一撃を受けた海月は血を流しながら倒れてしまう。
海月を倒すとガイは刀を鞘に納刀し、そしてシオンの無事を確かめたガイは彼に歩み寄る。
「やったなシオン」
「ああ、何とかな。
だがこの有様……最後の海辺の方に向かうにしても魔力の回復をさせないとヤバそうだ」
「そうだな。正直オレもベノムの毒のせいで疲弊してて次に行く余裕はないな」
「けど迷ってる暇はない。こうなったら……」
待て、とシオンがガイに何か言おうとするとシオンに倒された血鮫が倒れたまま2人に話しかけ、2人がそれに反応すると血鮫は2人に対して伝えた。
「オマエたちが言う最後の場所は罠だ……。あそこには何も無い。あるのはオマエたちを殺すために用意された爆薬だけだ」
「爆薬だと?」
「こんだけ仲間をぶつけておきながら最後の最後に道具による始末とはな。手段を選ばないにしても程があるぞ」
「オマエの言う通りだ……雨月ガイ。
だから……話しておきたいんだ」
「話しておきたい?何をだ?
オレとシオンに何を話したいんだ?」
「《鮮血団》のことを……そして、鬼灯潤也という人間についてだ」
《鮮血団》、そしてそのリーダーである鬼灯潤也について語ると言う血鮫の言葉に疑問を隠せないシオンとガイ。果たして血鮫は消えかける命の灯火の中でも2人に何を語るのか……




