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一一戦目


 聞き覚えのある轟音。それを聞いたイクトは慌てて音の響いてきた方へと向かう。

 

 嫌な予感がする、急いで駆けつけようと人気のない路地裏に入っていくイクト。しばらく進むとそこにはシオンがいた。そのシオンの前には両腕を切断され口と目、鼻から血を流し倒れる蒼月の姿と退屈そうにあくびをするライバがいた。

 

「シオン?そいつは……」

 

「《鮮血団》の能力者だ。オレを殺しに来たんだよ」

 

「えぇ!?ていうか……殺したのか?」

 

「半殺しだ」

 

「クールな答えじゃねぇぜマスター?

アンタは情報を吐かせるために抵抗するコイツに無理やり雷と脳への電気信号を流し続けて自白させた結果生死不明になったんだろ?」

 

「何それ!?怖ぇよ!?

何!?電気信号!?何サラッとおっかないこと言ってんの!?」

 

「クールなオレは楽しく見れたがガキと女は気絶レベルの衝撃シーンだったぜ」

 

「何このウサギ!?主人に似て物騒すぎる!?」

 

 それより、とシオンはライバの言葉に鬱陶しいまでに大袈裟なリアクションをするイクトに向けて蒼月から聞き出したとされる情報について話していく。

 

「コイツの吐いた情報からヤツらの狙いが分かったぞ」

 

「吐いたじゃなくて吐かせたの間違いだよな?」

 

「そこはもう忘れろ。

この蒼月という男からの情報では資金の援助と拠点の提供者は《ホーラン》という名で鬼灯潤也とコンタクトを取っていたらしい」

 

「ホーラン?コードネームか?」

 

「偽名だな。本名はおそらく鬼灯潤也とホーラン本人しか知らないだろうが、この男が言うにはオレたちの読み通り政府に身を置くそれなりの立場のある人間らしい」

 

「それはよかったけど厄介だね。

シオンが手に入れた映像からの解析にはまだ時間かかるし解析の結果次第で身柄の確保をしようにも鬼灯潤也が未だそのホーランとやらと連絡を取り合ってるとなれば身柄の確保は先送りにされる」


「おい、オレが情報を聞き出したのに先送りってのは何故だ?」

 

「敵に悟られるからだよ。この男は可哀想だけど見捨てられて終わる駒で幕引き。でもホーランってのは支援を行うほどの関係だから24時間ってタイムリミットを無視して何もかも終わらせに来るかもしれないし、拘束せずに監視を続ければ敵の拠点の位置を知れるかもしれない。ホーランってのがどんなのかは分からないけど、こっちとしてはまだ敵として動かしておかなきゃ不利になる」

 

「……面倒ってのはよく分かった。

協力者についてはここまでだが、襲撃された研究所ってのは何か掴めたのか?」

 

「死傷者多数、研究所の奥にある部屋にいたであろう何かが消えていたってことくらいかな」

 

「ヤツらが持ち出したのは《神羅》と呼ばれる何かだ。コイツはその正体を知らないようだが、鬼灯潤也はお仲間にその《神羅》と自分がいればヒロムを殺すのは簡単だと豪語してるらしい」

 

「……マジ?」

 

「マジだ。コイツが自白した」

 

「その《神羅》があればってことは兵器なのかな?

それとも大将に勝つのに必要な能力を持った強化人間?」

 

 知らん、とシオンはイクトに冷たく言うと続けて蒼月から聞き出した情報について話していく。

 

「ヤツらはオレに与えたタイムリミット後に宣言通りもう一度オレの前に現れる手筈らしいが、オレがヤツらの誘いを受けても拒否しても手を引く気はないらしい」

 

「毒ガスレベルの攻撃を仕掛けるって?」

 

「内容は分からん。コイツ自身は鬼灯潤也にオレがおかしな動きをしたらタイムリミットを無視して殺すよう言われたってだけでほかのヤツらがどう動くかまでは聞かされてないらしい」

 

「裏切られた場合の保険としてあえて内密にしたのかもね。頭のキレる男だな鬼灯潤也は。しかもシオンを問答無用で殺そうとするってことは……」

 

「ヤツには和平の意思はないってことだ。ベノムの毒による広域汚染を見せて危機的状況をつくって政府を混乱させてオレに全ての責任を押しつけるように仕向けつつ裏では殺害して明日には逃げたように仕向けたかったんだろうな」

 

「用意周到ってことだね。そこまでして戦闘種族を自称して再興とかいう目的を持つのには何かしら理由があるよな?」

 

「……残念だがコイツは鬼灯潤也に誘われて従ってるパターンだろうな。

本当の目的も理由も聞かされてないらしい」

 

「鬼灯潤也は情報漏洩どころか仲間すら信用してないっていう厄介な相手なのはよく分かったよ。敵の潜伏場所は?」

 

 さぁな、とシオンは鬼灯潤也たちが身を潜めてる場所までは聞き出せなかったと簡単に伝えるようなリアクションをして返し、シオンのリアクションから察したイクトは頭を悩ませる。

 

「敵の潜伏先さえ判明してれば政府が軍に要請して迎撃部隊なりを向かわせれるのに……この蒼月ってのは信用なんてされてない本当に使い捨てにされるだけの存在だったんだな」

 

「だがコイツはそうと知らずに戦う道をえらんだ。

自分が利用されてるとも知らずに鬼灯潤也を信じてな」

 

「何つーか……悲しいな」

 

「明日になればそんなことも言ってられなくなる。

オレは明日に備えて用意を進める」

 

「鬼灯潤也の誘いを断って迎え撃つんだろ?

日付が変わるまでには必ず解析終わらせて警察と政府に連携取ってもらうようにするから。それまでは無謀なことやめとけよ?」

 

「言われなくとも分かってる」

 

「ならよし。じゃあ、ゆっくり休めよ」

 

 情報収集、そしてシオンが手に入れた映像の解析という仕事が残るイクトは続きを進めるべく足早に去っていく。

 

 イクトの姿が完全に見えなくなるのを確認するとライバは周囲をキョロキョロ見渡したあとシオンに言った。

 

「人の影も形もねぇ。聞き耳立ててるようなヤツらもいないオレたちだけのクールな空間になったな」

 

「わざわざ確認するほどでもないだろ。

そのために嘘をついたんだからな」

 

 シオンとライバ、まるで何かを企むように互いの顔を見合い、ライバはシオンにここから先のことについて尋ねた。

 

「どうするんだマスター?

誰かに連絡するのか?」

 

「あくまでコイツから得た情報が確かなものかを確認する必要がある。フェイクであり、オレが無理やり聞き出すと仮定して鬼灯潤也がコイツに情報仕込んでたとしたら罠にかかりに行くようなもんだからな」

 

「他人には行かせないけどマスターはいくんだろ?」

 

「……当然。

狙いはオレ、なら獲物として罠にかかって返り討ちにしてやる」

 

「街から離れていれば街の人への被害も考えなくて済むからクールな戦いができるしな」 

 

「あとはヤツが研究所を襲撃してまで手に入れた《神羅》についてだな。鬼灯潤也は確実に知ってるとして他に知ってるようなヤツはいないだろうから……鬼灯潤也と遭遇したら手当り次第正体を探るしかねぇな」

 

「いいね。兎角、マスターは鬼灯潤也を倒せ。

モブ雑魚共はクールにオレが潰してやるよ」

 

「頼りにしてるぞ、相棒」

 

 シオンとライバ、蒼月を倒し得た情報を元に次なる目的を確定させ、そしてその目的を果たすための場へと向かうために歩き出す。

 

 どこに何が待ち構えるのか、鬼灯潤也は何を企むのか、分からないことだらけの中シオンは動き出した足を止めることなく前篇進んだ。

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