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食堂から戻るとさほど間を置かずに4人とも眠ってしまった。
まぁこんな状況だしきっと疲れていたんだろう。
電気のスイッチらしい丸い石に触れて灯りを落とすと私もベッドに横になった。
寝息に時折呻き声や泣き声が混じる、明日が心配だけど現状どうしようもない。
それに…。
暫くすると視線を感じなくなり、程なく壁向こうの気配が離れていった。
視線は壁にかけられたレリーフに彩られた宝石の一つから、こちらを見下す様な悪意と共に感じた。
あの感じはよく知っている。
私はそっとベッドから抜け出すと部屋を出て気配を追いかける事にした。
廊下には時折見回りが居たが、灯りが点いていない上に鎧や壷と言った装飾が良い遮蔽になってさほど苦労する事もなく気配についていく。
ずんずん進んでいくと灯りがついた廊下に突き当たった。
気配は尚も進んでいくのでこそこそと後を着けていくけど重要な場所らしく見回りも増えていた。
増えていたけど誰も彼もが隙だらけですれ違う私に気づかない。
ふと何かに気づいたのか振り向く気配もあったけどもうそこに私は居ない。
「なぁ、今何か通らなかったか?」
「何も居なかったぞ?風が吹き抜けただけじゃないか。」
そんな声を聞き流しながら付回していると気配の主が部屋に入って行った。
その部屋には他にも3人ほどの気配があり、そのうちの1人から真夏の粘つく湿気の様な空気が漂ってくる。
念の為にその嫌な空気に入り込まない様に耳を澄ます。
「やはり彼らは大半が一般人の様です。酷い者になると軽くとはいえ殺気を当てても違和感すら感じていない程でした。」
「体も相当貧弱だぜありゃ。平民どころか貧民の方が体力あるかもしんねぇ奴が殆どじゃねぇか?」
「一部の連中にしても素人よりはマシと言った感じですな。そのままでは恐らく使い物になりませんぞ。」
どうやら戦力としての私達の総評らしい。
そして個人の批評が行われていくがほぼ全てが罵倒に近い物であり、声には侮蔑の色が濃く出ている。
しかしその内容自体はそう的外れでもない事から鑑定に類する魔法か技術が使われた可能性が高い。
此処が現代ならありえないけど、あの時明らかに空気が変わったのだ。
例えるならばまるで砂漠の様な枯れ果てた空気から大自然溢れる森林の空気へと。
そしてなにより"月が3つ浮かんでいる"のが此処が地球では無い事を物語っている。
「アレだけの素材を注ぎ込んで命を救ってやったというのにまさか戦力にならぬとはな…。過去の事例では必ず戦う力を持つ者が居たとされていたのだが、運が悪かったとでも言うのか…?」
…? 命を救ってやった?