プロローグ
"空気とは何か"
殆どの人は科学的か比喩的かの違いはあれど空気は空気だと考えるのではないだろうか?
だが佐藤理恵は"空気とはこの世の理であり、理不尽そのもの"だと学んだ。
今は亡き愛する両親の教えを胸に、理解できずとも納得して擬態し、出来うる限り普通に過ごしていた。
擬態であるが故のどこかズレた言動と、両親やその他大勢から学んだ人付き合いからついた渾名が天然空気ちゃん。
そんな彼女も14歳になり、今日から3日間の修学旅行だ。
4時に起きてランニングを兼ねた新聞配達をして、日課の鍛錬を終わらせてシャワーを浴びて、お弁当と朝ごはんを作っていく。
キャラクター弁当が流行っているのでご飯の上にシャケフレークと海苔でピンクの熊さんを描き、敷いたレタスの上に形を整えたソーセージと卵焼きに黒ゴマで目をつけてハチミツ大好きな熊さんを象っておく。
そして型崩れ防止に隙間をポテトサラダやプチトマトで埋めてしまう。
朝ごはんはどんぶり一杯の炊き立てご飯に良く練った納豆と雌株、その上に生卵と薬味葱を乗せておろしポン酢をたっぷりかけた物とお弁当の材料のあまり。
朝ごはんを食べ終えればお弁当も程よく荒熱が取れているのでお弁当袋に入れて鞄に詰める。
制服に着替えて簡単にお化粧をして学校へ、何時もと変わらない退屈な日常、そうこの時は思っていた。
学校でクラスメイトや先生と挨拶を交し、バスに乗って修学旅行へ出発する。
何故か一番後ろの真ん中の席に座らせられて、仲が良いと思うクラスメイトに囲まれ、話しかけられつつ過ごしていると、突然眩い光が広がって気がつくと木々に囲まれた石畳の上で座り込んでいた。
周りを確認するとクラスメイトと先生の他にバスガイドのお姉さんと運転手のおじさんが同じ様に石畳の上で呆然としている。
そして鎧と剣を身につけ槍を手にした人たちと外套を羽織り杖を持った人たちが石畳を囲う形でこちらを見ていた。
そして1人だけ豪奢な法衣を纏い、煌びやかな王冠をその頭に戴き、太陽を象った杖を持つお爺さんが口を開いた。
「どうかこの世界をお救い戴きたい、異世界の勇者様…!」
最近流行りの異世界転移という奴?