薫風香る花と日の匂い
「先輩、ほっぺなにつけてるんですか?」
あわてて私はポーチからスマホを取り出し、自分の右頬を見る。
「そっちじゃないです。こっち、ほら」
ミナがそういって、私の頬をつつく。その指先には……。
「あーそれ昼間のデザートのプリン……。」
「え!購買のプリン買えたんですか!」
いいなーうらやましいなーとミナは、まとわり付いてくる。
春の草花のやさしいにおいが、ふんわりと香ってくる。
暇さえあればこの子は、学校裏の芝生にこっそり寝そべっては
不思議の国のアリスとか童話を読んでいるからだ。
……この時代に石鹸やら、香水やらのにおいでなくて
草花のにおいって辺りがミナらしいけど。
「……彼氏いるのかなぁ」
「え!? フゥちゃん心配しなくてもいないよー」
今日一番の笑顔で私にそう笑いかける。やだ、かわいい。
「あれ?やだ私、声に出してた?」
「うん!ばっちりと!」
「……あー、出来たら報告しなさいよね。一発殴りたいから」
「頑固親父だー、フゥちゃんありがとね。大丈夫!私王子様がいいなぁ」
「殴れないからやめてくれない?せめて懇切丁寧な時計屋さんとかに」
「うさぎさんは性格いいだろうけど、やっぱり自分より背が高いほうがいい!」
自動販売機の最上段にぎりとどくか届かないミナより低い男性はそういない、
そうか身長かぁ、条件クリアしているわね。
「あとは、童話のお話が出来ること!」
よしクリア。
「そんでねー料理が出来てね…」
おーけーパンケーキぐらいなら何とかなるから、問題ないわ
「でっかいケーキを作ってほしいの!」
パンケーキ重ねればいけそうね、クリア
「あとはねぇ……こどもと仲良くできる人!」
私が稼いで養子をもらえばいいわね、クリア
「フゥちゃんはどんな人がいいの?」
「え?とね……明るくて、本が大好きで、お日様のにおいがする人かな」
「なんだーフゥちゃんもかー」
「なにが?」
急にミナが私の前に迫ってくる。
「私ミナがいいの!」
おてごをこつんとされながら、私に語りかけるフゥは。
やわらかいお日様のにおいがした。




