part.1
本作は『ミコミがあるわね! ~黄銅貨5枚の謎~』(https://ncode.syosetu.com/n6423fc/)の重大なネタバレを含んでいます。もし本作をお読みになる際は、ぜひ、そちらからお読みいただけるよう、お願いいたします。
作者より
1
いよいよ本番を迎える夏に向け、準備体操を始めたらしい太陽は、今日も今日とて気炎を吐き、地表を熱している。
しかし、この暗いジメジメとした空間には、その光も届かない。窓から吹き抜ける風が、汗ばんだ背中を冷やしていく。身体の熱が塊となって失われていく錯覚に、僕は思わず身震いをしてしまう。
と、その時。
「――」
玉砂利が鳴った。誰かが近付いてきたのだ。規則正しい足音に次いで、僕の耳は微かな声を拾った。
「……ぼ…………り」
ぼそぼそと囁くような、女の声。その正体を確かめることはできない。すぐ近くにいるはずの「それ」をひしひしと感じながらも、僕は金縛りに遭ったように、振り向くことはできない。耳を塞ぎたくても、両手を動かすことはできない。正体を問いたくとも、口を開くことすら叶わないのだ!
嫌でも、その不気味な音声は僕の耳に届いた。
「……じごく」
地獄。
暗い地の底から這い上がってきたような恐ろしい声が、僕の鼓膜を撫で上げたのだった。