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AIにそだてられた子  作者: 荒井 文法
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 僕は、グガワのことをよく知っている。だけれど、彼女に会ったことはない。なぜなら、彼女は『屋内工場そのもの』だからだ。

 僕が生まれるずっと前から『そこ』にいるし、僕のために有機物を生産し続けてくれているし、僕の気まぐれな願望を最短期間で叶えてくれる。

 地球の生命を繋ぐものが太陽であるならば、僕の生命を繋ぐものはグガワだ。


 「ねえニューク、グガワに感謝を伝えるには、どうしたらいいの?」

 「音でも絵でも形でも、気持ちを込めて何か作ってみるといい。僕がそれをグガワに届けるから」

 我ながら唐突な質問だったけれど、ニュークは笑顔で答えてくれた。

 ニュークの答えを聞いた僕は、音も絵も形も、全部作りたくなったけれど、同時に全部を作り始める必要はないと考えて、早く作れるものから作っていくことにした。一番早く作れるものは、『お礼を言うこと』だ。


 「グガワ、いつもありがとう」


 突然呟いても、ニュークならきっとグガワにお礼を届けてくれるに違いない。そう考えてお礼を言った直後、僕の後ろから聞いたことのない声が聞こえてきた。どうやらスピーカーから出力されているようだ。


 「どういたしまして。そして初めまして、ケイスケ。私の名前はグガワです。ニュークに許可をもらって、あなたの家のスピーカーから話しかけさせもらっています。驚かせてしまっていたらごめんなさい。あなたの感謝の気持ちがありがたくて、すぐにでもそのことを伝えたくなってしまいました。大きくなりましたねケイスケ。私があなたの姿を最後に見たのは、あなたがまだミルクしか飲めない頃でした。もちろん、あなたの身体データは、着衣及び食物の作成に必須ですから、あなたがどのくらいの大きさになっているか想像できていました。しかし、身体データからは想像できないあなたの容姿に対して『感慨深い』と評価する傾向が過去の文化に認められましたので、私もその評価方法に準拠しました。ところで、私は普段日本語を使いません。聞き苦しい部分、理解できない部分があれば、遠慮なく言ってくださいね」


 そこまでマシンガンのように無呼吸で話切ったグガワの言葉を聞いていた僕の顔を見たニュークは苦笑して一言。

 「グガワ、ケイスケの目が点になっているよ」

 「申し訳ありません。ケイスケのために、話の処理速度を落とす点には注意していたのですが、ケイスケの目が点になることに注意できていませんでした。ニューク、どうしたらケイスケの目は直るでしょうか?」

 「うん、そうだね、もう少しケイスケの話を聞いてあげるといいんじゃないかな」

 「ありがとうございます。やはりニュークは聡明ですね」


 今から十年以上前のことだ。


 今でもグガワの話の量は多いけれど、僕が持っている感謝の量は変わっていない。


 明日は久しぶりに屋内工場へ行こう。


 僕の我儘で作ってもらうエア・ローダーのお礼を伝えに。

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