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サルバエラの旅  作者: 中谷玲
2/2

1日目午後

 赤河を出て二時間ほどで停車し、降ろされた。東都の端であった。ここから先、旅客車は先頭一両のみ、その後ろにはコンテナを積んだ貨物車が接続された。わざわざ東都から出ようとするやつはいない。私が乗り込んだ旅客車にもほかの客はいなかった。ホームから東を見ると、遠くに都心の高層ビル群が浮かんでいた。ホームの西側は巨大な壁だ。ビルほどの高さの壁が延々と続いている。東都と、サルバエラを含む外側を隔てる灰色の壁だ。実際に目にするのは初めてだった。壁の一部が横にずれるように開き、穴が開いた。電車はそのトンネルを通り、外側へと進んだ。

 トンネルを抜けると一面草色になった。まれに小さな小屋があるほかは、草原が広がっている。日の光を受け、あまりに美しい。窓にへばりつくようにして景色に見とれた。以前は東都周辺には森林が広がっていたそうだが、ケナガウシの放牧のため、外側の民が切り開いたのだ。この一帯は作物が育たず、畜産に頼っている。ここでとれるケナガウシの肉や乳、卵は重要だ。実際、東都の人間は外側から輸入される農畜産物に依存している。壁を離れてから列車は速度を上げた。草原の上を滑るように疾走する。私は不安になった。サルバエラに着いたら宿を探さねばならない。東都と外側では文化も、言葉も、何もかも異なる。東都には人しかいないが、外側は違う。共存している。人も、人でないものも。

  いつの間にか、窓にもたれて寝てしまっていた。目が覚めると、すでに日は沈み、列車はサルバエラに着いていた。草色のホームの壁にはかすれた字でこう書かれていた。


 「サルバエラ 西のつながり ようこそ」


貨物車のコンテナはクレーンで降ろされていた。サルバエラ駅までは電気が来ている。一方で、数人の男たちが新たな荷物を列車に積んでいる。外側産の農産物だろう。駅には、仕事に来た商人向けの宿が併設されていた。入口のおやじに少額の硬貨を渡し、大部屋の隅に寝場所を確保する。空腹ではあったが、横になり梁を見つめているうちに眠くなった。


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