7、王妃様とお話です
バートさんが立ち止まる、王妃様の部屋についたのだろう。
「百合様、この部屋が王妃様のお部屋です。朝食も用意しております。藤様もご一緒にどうぞとのことです。」
バートさんがノックをして扉を開けてくれる、王妃様のお話、しっかりきかなくちゃいけない。そう決意して私は部屋に足を踏み入れた。
王妃様は窓際に座って本を読んでいたようだ、ドレスがしわにならないように座る姿はどこか可憐で、立ち居振る舞いや服装、すべてが上品さを物語っている、あの四角い名札さえしていなければ。
名札には役職は王妃、名前は撫子、年齢は秘密と書かれている。普通のダイニングテーブルに朝食が3名分用意されている。座るように促されたので素直に王妃様の前に座る、朝食は和食でおばんざいのようにおかずが少しずつ豆皿にのせられていて見ているだけで心がうきうきする。
「百合ちゃんと藤くんね、おはようよく眠れました?」
「おはようございます、いえ泉の決まりさんが。」
「懐かしいわ、私の時もきたもの。眠れないのは迷惑だけど、とてもいい人よ。」
「そうやな、可愛らしい人やったな。」
「そうでしょう。さて後回しにはしないわ。食事より先に、あなたにこの世界にきてもらった理由包み隠さず話すわ。まずどこまで知ってるか教えてちょうだい?」
私はアルヴィンに聞いたことそれにストーカーされていることをすっかり話してしまった。
「そ、そうね、ストーカーね。」
王妃様は完全に笑っている、顔を扇子で隠しているが完全に肩も声も震えている。
「それに、泉の決まりさんにも聞きましたので。」
「そう、だったら私のお話だけすればいいのね。最初は私がここに来たお話をするわね。私は貧しい家庭に生まれて、口減らしに捨てられてしまった。私の生まれた時代は浮浪児が多くてね、子供だけでどうにか生きていたの、なるべく人様に迷惑をかけないように、食べられるものは何でも食べた。ずっと一緒に生きてきた子が朝には寒さで死んでしまっていたこともあったわ。それでも私は生き残った、だから生きなくちゃいけないと思った残された者として。その頃、寝床にしていたのは古い屋敷で見た目もぼろぼろで、床も腐っていてどこもかしこも穴だらけ、それでも私たちには心安まる家だった、だけど放火にあったの犯人は分からないわ、その放火で私は死にかけた、だんだん苦しくなって目が見えにくくなってきて死ぬんだと思った、そこで諦めたの生きるのを。でも気付いたらこの世界にいた生まれて初めてベッドという物に寝かされていて今の王に手を握られていた。そこでプロポーズをされて王妃になり結界をはった。」
「そう、なんですか。あの辛いお話でしたら、話していただかなくても大丈夫ですよ。」
「大丈夫よ。気を遣わせたわねごめんなさい。ありがとうでも私たちがまいた種だから。次は私たちの結界が短い理由を話すわ。王は私の不幸のどん底を待たずして転移させた、王自身の魔力と転移する私の魔力で私をこの世界に。その時は2人とも15歳。本当は放火の後も全身に火傷を負うけど生き延びるの、そしてその後、年を経て20歳で変態の目に止まって人形にされる、そこで転移のはずだったと泉の決まりさんが教えてくれた。本来はあなたの時のように、5人の成人してなるべく魔力を使わない生活を義務づけられている者たちと転移をしてくる者と魔力を分け合って6人の魔力を使って転移させるの、それに比べて王と私2人とも成人していない、転移後の2人の魔力はほぼ尽きていた。それから10年後仕方なくそのときの王様、王妃様、神父様、騎士団長の4人の魔力を使って私たちが結界をはった。4人の魔力が尽きる程の結界をはったけど50年程しかもたない結界になってしまった。時を待って2人ではれば100年以上もつ結界になったのに。転移する人の魔力は時を待てば、とんでもないものらしいの、でもそれを蹴ってまであの人は私を助けてくれた。だからあなたを巻き込んだのは私のせいなの、私たちがちゃんとはってればあなたはこの世界に来ずにすんだのに、本当にごめんなさい。」
王妃様は深く、深く頭を下げた。
「頭をお上げください、王妃様。王妃様は悪くありません。誰も悪くありません。」
「ふふ、でも私あの時、諦めたと言いながら心の底から助けてほしいと願ってしまった。王は、運命の恋人は、私の願いを叶えてしまったのだから悪いのは私。あら噂をすれば。どうぞお入りになって、あなた。」
びっくりして振り返ると王様がいた、王様は昨日と同じ服だが名札はついていない。
「あら、あらあらあら、あなた名札は?私が丹精込めて作ったのに。」
「それがどこかで落としてしまって、すまないね百合さんに藤さん、私は役職は王様、名前はレオナルド、年齢は75歳だ。」
「おはようございます、私は百合と言います。こちらは藤です。」
「藤です。」
「百合さん、あなたを巻き込んだのは全て私の責任だ本当にすまない。何を聞いても、何を言われても気にしないで、私が悪いのだから。」
「残念でした、私がもう全て言ってしまいましたからね。レオは絶対に私をかばいますからね。」
「そうか、わかったよ。いつもありがとう撫子。」
百合さんそれでも責任があるのは私だからね。と私にそっと耳打ちした後、ゆったりと王妃様の横に座った。定位置なのだろう王夫妻はしっくりきたという顔をして微笑みあっている。
「呼んだくせにと思われるだろうが、このまま結界をはらずに帰っても誰も君を責めたりしない。だからこの後どうするかゆっくり考えてほしい。君の人生だからね。さあ朝食を食べよう。」
「そうね、たべましょう今日は腕によりをかけたの。」
「王妃様が作ったのですか?」
「そうよ、ここに使用人はいないわ。食事は各自で作るし、週に1度ここに勤めているもの全員で掃除をする。洗濯もするわ私たち夫婦は2日に1回位かしらね。魔力は無限ではない、だからここにいる者たちは緊急事態の為に残しておくの。さあ食べましょう。」
王妃様が作った朝食はとても美味しく家庭の味というよりプロの味だった。
藤は無言でひたすら食べている、私も負けじとおかわりまでしてしまった。王夫妻はその様子をただ穏やかに眺めていた。




