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6、眠れませんでした


 アルが部屋から出て行った後寝る準備をしていて気づいた、当たり前のことだったから気が付かなかったが電気が付いている、それにお風呂も元いた世界のものと一緒だった、だから使えたし。元の世界と比べてこの世界にないものは車やバイクのような移動手段はなさそうだ。エンジン音は全くしない。ワープがあるから必要ないのだろう。ある意味こっちの世界の方が進んでいるな。

 1人納得して電気を消し、ベッドに横になると藤が手慣れた様子で私の腕を枕にして眠る体制になった。見えないだけで本当にいたんだろうな、そういえばいつも見る夢には犬が出てきた気がする。


「ねえ守護霊っていつも何してるの?」


「そうやな、寿命も死に方も生まれたときから決まってる、やのに死は誰にでもせまってくる早く死なそうと、それをなんとか寄せ付けないようにしてる。ちなみに両親はあの事故で死ぬ運命やった苦しみはない一瞬やったと思う。」


「そっか。ありがとう。」


「なあもう死のうとせーへん?僕百合には生きててほしいねん。両親の守護霊にもいわれたし。」


「両親の?」


「うん、人間とは会話できひんかったけど僕達同士は喋られるから両親の守護霊は百合も僕も自分たちの子供みたいって、だから幸せになってほしいってええ人たちやった。だから生きてな、百合は老衰やし。」


 私はいつでも1人じゃなかった、不幸なんかじゃなかった。あんなに死のうとしていたのを、ずっと守って阻止してくれていた人がいるなんて馬鹿だった。私には誰もいないと思い込んでいたのが恥ずかしかった。


「ふふ、分かったありがとう。」


「久しぶりに笑ったな、ほんまによかった。僕はなにがあっても傍にいる、百合の傍にいるから大丈夫。ほんで百合はどうするん?この世界にいるん?」


「うーんそういえばどうして結界をはるのか聞いてないしなーでもこっちにいると思う、結界が2度とはれなくなるって言われたし。」


「ほんまに百合はお人好しやなーじゃあ結婚するん?アルと。」


「それは。」


「まあ他の人の話も聞かなわからんかな。じゃあ寝ようか。それともまだ僕に聞きたいことある?」


「ううん、今はないありがとう。おやすみ。」


「わかった、おやすみー。」


 私は疲れていたのかすぐに夢の世界におちていった。



「りさん、百合さんあっ百合さん、私、泉の決まりです。」


 わお、きれいなお姉さんだ。金髪に青い瞳胸が大きい、白いワンピースを着ている。


「百合さん聞いてます?とにかく、ごめんなさいこんなことになってしまって、あなたに責任を押しつけてしまって、辛い思いをさせてしまって、でも結界をはらないとこの世界は滅んでしまうんです。とにかく手短に話しますね、パンドラの箱というものをご存知ですか?」


「開けてはいけない箱のことですよね。」


「そうです、比喩なので名前はついていませんしそもそも箱ではありませんが。そのパンドラの箱に結界をはらないと、この世界に病気が蔓延し現在の人口の1パーセントまで減ってしまいます。前の結界をはったのは王と王妃です。王妃が百合さんと同じ世界にいたのですが、少々事情がありまして結界がいつもの年数の半分以下しかはれなかったのです。だからあなたをまきこむかたちになってしまった、それにアルヴィンも。理由は明日、王妃から聞いてください。私はあなたの味方です、結界をはったら帰ることはできません。結界をはりたくない、元の世界に帰りたいと言われるならば安全におかえしします。まだ5年はもつでしょう、どうするかゆっくり考えてください。では失礼いたしました、また泉にもきてください。」


 消えてしまった、全く眠った気がしないが目が覚めてしまったので、起きると一応朝のようだ、藤はまだ眠っていたのでゆっくり起こさないようにベッドから出て、小さなキッチンスペースでホットミルクをつくっていると藤が起きてきた。


「僕にもちょうだい。」


 今は白髪のお兄さんの姿だ。


「こっちの姿の方が飲んだり食べたりしやすいし。」


「確かにそうだね、どうぞ。」


 とミルクの入ったマグカップを差し出した。


「昨日の夢すごかったなあ、全く寝た気がしーひん。」


「藤も見てたの?」


「百合とは一心同体やからね、夢も一緒よ。」


「おい、起きているか。」


 乱暴なノックとともにアルが部屋に入ってくる。


「まだ返事してへんけどな。」


「いいんだ起きているのは知っていた。」


「君、可愛い顔してやることえげつないな。」


「えげつないとはなんだ、普通だ運命の恋人だからな。」


 アルはふんとそっぽをむいてしまった。そして私に近付き、私の手からマグカップを奪い飲み干してしまった。


「間接キスだ羨ましいだろう。」


 藤は我関せずといった様子で、


「僕のをあげるわ、ほら飲み。」


 と無理矢理、自分の持っていたマグカップをにぎらせそのまま飲ませてくる仕方なく飲んでしまった。


「なあ僕のを飲んだで、僕が何度も口つけてたミルクを飲み干したで僕の勝ちやな。」


 多分、藤はからかっているだけで私に恋愛感情はないと思う。アルはまた涙目だけど。


「百合ちゃんそれはどうかわからへんで。今までは見えなかったから諦めてたけど、今は見てくれるし喋ってくれるだったら僕にも望みがある。」


 ははは、そんな馬鹿な。


「好きやで、百合ちゃん。」


 ちゅっと頬にキスをされる、昨日からこのお兄さんに私もアルも振り回されっぱなしだ。


「おのれ、貴様。」


「すみません百合様、王妃様がお呼びです。」


 アルが何かを藤にしようとした瞬間、部屋の外から声がかかった。


「どうぞ、お入りください。」


 私が声をかけると入ってきたのは昨日の騎士団長だった。名札をしている、名前はバートさんか。優しそうな人だ目の横に笑いじわがある騎士団の人なのに血気盛んという感じはない。


「おはようございます百合様、お伝えしたように王妃様が朝食を一緒にとのことです。どうなさいますか?」


「断ってもいいぞ、俺とくうか?」


 王妃様を断るなんてとんでもないいい人そうだったし。


「行きます。支度をしますので少し待っていただけますか?」


「じゃあ俺がやってやるよ。」


 とアルが魔法で身支度をしてくれた、それはいいのだが下着までちゃんとぴったりで気持ち悪い。心の声が聞こえたのか藤が笑いをこらえているそういう藤はいつの間にか着替えていた抜け目のない兄さんだ。


「お待たせしました。連れて行ってください。」


 私たちは騎士団長の後に続いた。

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