3、お母さんの味です
どうしたものかと考えていると引っ張られ無理矢理中に押し込まれた。
「私お金を持っていないの、だから何も頼めないの」
「お母さーん、シチュー食べさせてあげてー」
話を聞いていない。
「いきなりどうしたのジョッシュ」
「このお姉さんお腹ぺこぺこなんだ、だからシチュー食べさせてあげて」
この子本当に話を聞いていない。
「私お金を持っていないんです、だから帰ります。」
シチューがでてきてしまった、クリームシチューだバターや牛乳、玉ねぎ様々な食材が溶け込んでいるのだろういい香りが鼻をくすぐる。最後に食事をしたのはいつだろう全く思い出せない。
「食べて、お金は結構ですジョッシュが無理矢理連れてきたのでしょう。失礼ですけどあなた酷い顔をしていますわ、ちゃんと食べなくちゃだめですよ。もう大人の年齢でしょう。」
恥ずかしい、そういえば鏡もここ数日全く見ていないもう25歳なのに。
少年がスプーンを差しだすのを受け取りシチューをすくう。
「いただきます」
口にいれてシチューが喉を通るのがわかる、優しくて暖かいお母さんの味。
「暖かくておいしいです、ありがとうございます」
小さな少年に助けられてしまった、ついさっきまで世界で1番不幸だ、みたいな気持ちで歩いていたのにあんなに悲しかったのに、血が巡りだしてお母さんの言葉を思い出した。
「私行かなくちゃ、どんな時でも冷静に、どれ程嫌な人でも助けてほしいと願っていると思いなさいってお母さんに言われてたんです。だから行きます。シチューありがとうございました。」
私は空になった皿を見て少し苦笑した死のうとしてたくせにしっかりご飯は食べるなんて、体はいつでも生きたがっているんだ。
私はもう一度少年と、少年の母親にお礼を言って食堂を後にした。




