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29、少し休みましょう


 旅を開始して10ヶ月経った。白の国に戻っても帰ってきたという気はしなかったけど、アルが私の部屋を再現してくれていたおかげで、部屋に戻ると家に帰った気持ちになってありがたかった。でもそれと同時に両親が恋しくなって、最初にこの世界にきた時のことを思い出した。アルに見透かされたあの願いは叶わなかったが、旅に出て親友ができた。それでいいじゃないかと自分に言い聞かせる。


「百合ちゃんちょっといい?」


 扉の外から王妃様が声をかけてくれる。


「はい、今開けます!」


 そう言って扉を開けた。


「おかえりなさい。早く顔を見たくて。」


 そう言ってくれる王妃様を見ると祖母を思い出した。優しくて暖かく包みこんでくれる祖母。高校生の時に亡くなったが、肉親の中で1番好きだった。


「百合ちゃんなんだか大人っぽくなったような?うーん大人というか…なんだろう?何かあったの?辛そうに見えるわ。」


 そう言われて、私は泣きだし旅の行程全てを話した。


「百合ちゃん頑張ったわね。よしよし。試練の話は私が王様にお灸をすえますから。でもよく頑張ったわね!人魚さんも銀行強盗も全部。百合ちゃんは偉いわ!」


「でも、全てが上手くは行かないんです。毎回、誰かを傷付けている気がして。」


「私は百合ちゃんに対してそう思ってるわ。」


「私は傷付いていません。この世界に来られてよかったです。生きる意味を見出せました。」


「ありがとう。百合ちゃんに助けられた人は皆そう思ってるのではないかしら?違う?」


「そうでしょうか?」


「そうよ。でも黄の国の話は違うわね。」


「違う?」


「ええ。何が違うか分かる?少し一緒に考えてみましょうか。」


「カート君が旅についてきたのは、もしかしたらキャロルさんを見つけられるかもと考えたから。そして黄の国で見つけた。」


「ええそうね。」


「その後私はカート君がキャロルさんを傷付けるのを止められなかった。」


「そうかしら?止められたとして、キャロルさんが傷付かないと思う?」


「絶対に傷付くってことですか?」


「ええ、極端に言うとキャロルさんはカート君に再会するだけで傷付くの。だから過呼吸をおこした。」


「再会しただけで…」


「そう、だってキャロルさんにとってカート君は罪悪感そのもの。子供だったキャロルさんは、同じく子供だったカート君が、村中の大人から暴力を受けて、1人で村を出て行くのを見た。自分が言った事の顛末を全て見た。2人とも子供で、悪くないのにね。だからね、他の人たちと違ってその2人は誰かに助けてほしいって思ってないの。他人にもう期待していない。」


「助けてほしいって思ってない?」


「そう、自ら苦しむことを選んだの2人とも。キャロルさんは償うことね。カート君は分からないわ。憎しみか愛か多分本人も分かっていない。」


「じゃあ私は最初からどうすることもできなかった?」


「そうね。だから百合ちゃんが気に病む必要はないの。それだけは言えるわ。百合ちゃんこれからは悩んだ時、迷った時整理してね。書き出したりするの。客観的にものが見えるわ。それと私は百合ちゃんの味方よ。何を選んでもあなたが正しいと思えるわ。」


「ありがとうございます。でもどうしてですか?」


「私も見てたの。アルと一緒で。あなたは誰も見てなくても赤信号は渡らない。学校や会社の規則は破らない。両親に嘘をつかない。友達に裏切られてもあなたは絶対に裏切らない。あなたをいじめていた子がいじめられ始めてもあなたがその子を庇った。そんな正義感が強くてまっすぐで優しい子が悪い選択をするはずがないもの。そんなあなただからアルも好きになったのよ。」


「王妃様ありがとうございます。この世界に来られて、私選ばれてよかったです。」


 王妃様は優しく微笑み私を抱きしめた。お話しが終わり王妃様はまた夕食でと言い残し去って行った。



「おい、百合入るぞ。」


 アルがノックもなしに入ってきたのは夕食も終わり眠りにつこうとしていた時だった。


「どうしたのアル?」


「そのブレスレット何の加護がかかっているか調べたいんだが、今日の夜預かってもいいか?」


「えっ急にどうしたの?」


「悔しいんだよ。俺が解けない魔法なんて。」


 結構、子供っぽいところもあるんだ。


「どうぞ。壊さないでね。」


 そう言って手渡した。じゃあおやすみと言ってアルは出て行った。その時、


「ああ、一応お前に結界をはってあるからな。今、負のオーラ出まくってるし。」


「えっ酷い。でもそういうのって藤が助けてくれるんじゃない?」


「ああ、まあ、そう、だな。気にするな。じゃあおやすみ。ゆっくり眠れよ。」


 そう言い残し出て行った。なんだあの歯切れの悪い言い方。考えても仕方がないので眠りについた。



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