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26、旅はまだ続きます


 私は藤と合流して宴会場へと向かった。そこにはバートさんと女将さんっぽい人と横に年を重ねたバートさんっぽい人が座っていた。バートさんに手招きされ、机を囲んでいる3人の後ろに座った。少しして2人入ってきた。昨日の居酒屋の店主のビビアンさんとこれまた優しそうな、バートさんとは正反対の見た目をしている男性だ。バートさんは線が細いがこの男性は熊のようにがっしりとした体型だ。でも何故、ビビアンさんが?…まさか。


「父様、母様こちら一緒に旅をしている百合様と藤様です。百合様、藤様こちらが私の婚約者のビビアンです。こちらビビアンがお付き合いされているエヴァンさんです。」


「一緒に旅をしています。百合と申します。」


「僕は藤です。」


 ちらとビビアンさんを見るとウィンクされた。昨日から気付いてたな誰の話か。やっぱり婚約者だ。世間は狭いな私が愚痴を聞いてもらった居酒屋の店主がバートさんの婚約者だなんて。それにしてもエヴァンさんは全く動じずニコニコと2人を見ている。


「百合さん、藤くんよろしくね。バートがこの場に呼んだのね。ごめんなさいね、家族のごたごたを見せてしまって。それで、ビビアンちゃんいい人がいたのね!言ってくれたら良かったのに。」


「すみません、おば様。バートが報告は待ってくれと言ったので。」


「すみません。私が母様にはまだ伝えないでくれと念を押しました。それに私も結婚したい女性ができまして、できればその女性と一緒にこの旅館を盛り上げたいと思っています。」


「まあ、バートそうなの!何故早く言わないの?お母さんはね。あなたに人を愛する素晴らしさを知ってほしかったの。それぞれにお相手がいるなら勿論、婚約は破棄しましょう。」


 良かった。第一関門はクリアだ。


「おば様、ありがとうございます。私もエヴァンと幸せになります。」


「いいえ、でもまた遊びにきてね!」


「ええ、勿論寄らせていただきます。バートからまだ他に大事な話があると聞いておりますので、私たちはこれで帰ります。」


 そう言ってビビアンさんとエヴァンさんは出て行った。ここからが本番だ。


「母様、私が結婚したい女性はリリアと申します。」


「ああ、あの可愛らしい!あの子も一緒に旅をしているの?」


「そうです。とても素敵な女性です。何に変えても守ろうと思っています。彼女は人魚です。」


 今までずっとニコニコとしていた女将さんの顔が凍ったように動かなくなってしまった。瞬きもせず、数秒間時が止まったようだった。そして体感温度が下がっていくのを感じた。バートさんと同じ魔法だ。部屋が凍り始めている。


「バート?なんですって?」


「彼女は人魚、魔物です。」


「私たちは客商売よ。分かっているの?隠していてばれた時どうするの?」


「隠しはしません。リリアにはそのままでいてもらいます。」


「とんでもなく苦労するわよ。」


「サービスを改善するし、食事も少し名物を考えます。それに白の国の王と黒の魔法使い御用達と銘打ちますよ。」


「それでもその女性も傷付くわよ。」


「言ったでしょう。何からも守ると。」


「従業員全員、路頭に迷うかも。」


「騎士団長の給料と退職金で10年はまかなえます。スタッフもそんなにいるわけじゃないし。数年すれば定年間近の人も近い。それに一日何組かに絞っていこうと思っているんです。」


「何を言っても返してくるのね。」


「正直、リリアと結婚するのは変わらないんです。ここに住むか、もう死んでも帰ってこないかの二択ですから。」


「それは、脅し?」


「母様、違います。事実を言ってるだけです。許されないならもう2度とここの敷居はまたぎません。」


「子どもはあなた1人なのに?」


「関係ありません。」


「……分かりました。女将になってもらうためにびしばし指導します。それでだめなら、分かりましたね?ここは終わりです。」


「母様、ありがとうございます。では明日からお願いします。百合様、藤様、私とリリアはここで別れます。このことは王様にも伝えております。正直、最初から護衛はアル様だけで充分なので。私は試練を出すためだけに同行していました。」


 ここでお別れ?やっとリリアと仲良くなれたのに。親友ができたのに。


「だから、今日の夜は宴会です。アル様は明日には出ると言っておられましたよ。」


「分かりました。」


 仕方がない結婚して幸せになるのだから。笑顔で見送ろう。



 宴会にはビビアンさんとエヴァンさんも来ていた。バートさんが呼んだのだろう。2人はお酒が入ってからずっといちゃいちゃしている。ビビアンさんは完全に酔っている。リリアはずっと女将さんと仲良く話をしている。バートさんはそれを見て笑みを浮かべながらありえない量の酒をあおっているが顔色は変わらない。アルは楽しそうに食事をしていた。カート君と藤はお酒を飲んでいる。カート君はあの見た目で私より年上なのだからびっくりする。ビビアンさんはバートさんにからみ始めた。そこで横からエヴァンさんがそっと手を掴んだ。


「皆さん今日はお呼びいただきありがとうございました。ビビアンを連れて帰ります。」


「いやだー楽しいから帰りたくないぞー!」


「ではさようなら。」


 まだ叫んでいるビビアンを担いでエヴァンさんは宴会場から出て行った。そこで宴会もお開きとなった。

 私はリリアと一緒に部屋に戻った。


「リリアお願い幸せになってね。後女将さんにいじめられたら逃げてきてね。バートさんが嫌いになったら私が匿ってあげるからね。」


「百合!ありがとう。今まで言わなかったけど、百合が青の国の人と話をしてくれなかったら、私たち人魚は人を襲ってたかもしれなかった。いつも住む場所を変えては漁師にないがしろにされて、族長が皆を抑えては泣き寝入りで、もうギリギリだった。でも百合のおかげで踏みとどまれた。人を殺めずにすんだ。それにバートさんと会えたのも百合のおかげ。全部ありがとう!だから逃げないよ!私が望む以上の幸せだから!」


 私たちは泣きながら抱き合った。


 私たちはバートさんとリリアに見送られて赤の国を後にした。

 私と藤とアルとカート君だけになってしまった。次は黄の国、花と妖精の国。


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