24、私はリリアの味方です
露天風呂に浸かりながら少し整理しよう。私は胸まである髪を結い上げ、おだんごにしてからゆっくり湯に浸かった。
まず、リリアはバートさんが好き。バートさんはリリアの気持ちを知っている。知っていて優しくしたり一緒にいるのは拒否しない。バートさんには婚約者がいる。多分、結婚したくなくて白の国にきたっぽい。アルがバートさんはとんでもない努力をして団長になったと言ってた。バートさんがここに戻る=結婚すると従業員さんは思っている。駄目だ情報をまとめればまとめるほど混乱してきた。
私はゆっくりお湯からあがった。あんなに待ち望んだ温泉だったのに。私はリリアを思うと少し辛くなって、とぼとぼと部屋に戻った。バートさんの横にいるリリアはいつも笑っていて、バートさんもいつもと違って優しい表情を浮かべていたのに。部屋に戻るとリリアはいつもの笑顔で私におかえりと言ってくれる。私は耐えきれずリリアに、お土産見てくるねと言って返事も待たずに逃げ出した。
また逃げてしまった。気付くと私は旅館の外まで走っていて、また迷子になってしまった。
リリアへの感情と迷子になった寂しさでまたとぼとぼと歩き始めた。
「ちょっとお姉さん!そんな浮かない顔して歩かないでくれる?どうしたの?」
ちゃきちゃきとしたお姉さんがお店から出てきた。居酒屋と書いてある。
「ちょっと飲んでく?」
「はい。1杯だけ。」
そう言って暖簾をくぐった。店内はレトロな雰囲気でお姉さんのセンスの良さが窺えた。
「ほらどうぞ。」
「いただきます。」
一口飲んで気付くこれはお酒じゃない。ジュースだ。
「話を聞くのにいきなり酔わせたら駄目かなって。」
「ああ、そうですか。」
「私、ビビアン。」
「私は百合です。」
「そっか、で何があったの?」
「私の親友の好きな人に婚約者がいるんです。」
「ええっ。それで?」
「でもその好きな人、親友だけを特別扱いするんです。そういうのって勘違いしません?」
「するねー。悪い奴だね。」
「そうなんです。親友が傷付くかと思うと。私辛くて。」
「そっか。それで今にも死にそうな顔して歩いていたのか。」
「そうなんです。」
「でもその悪い奴にちゃんと話してもらうしかないんじゃないの?」
「そうですよね。でも聞いたら全て終わる気がして…」
「がんばりな!親友はあんたが守ってやるんだ!」
守る。リリアを守る。
「分かりました!ありがとうございます!」
「ああ!またのみにきな!」
私はビビアンさんに帰り道を聞いて店を出た。帰りの露店で素敵なブレスレットを見つけた。海のモチーフがたくさんついたブルーのブレスレットをリリアに、百合の花とキラキラとした石がついたブレスレットを自分用に購入した。露店の店主がブレスレットに魔法をかけてくれると言うので、私はお金を積んで、リリアの方に、どんなものからも守られる魔法をかけて下さいと、お願いした。そのおじさんは割と凄い人で、お金を対価として魔力を増幅させ、私の言うとおりの魔法をリリアのブレスレットにかけてくれた。お礼を言って店をあとにした。おじさんは私の方のブレスレットにも魔法をかけてくれたらしいが、すぐに分かるからと、はぐらかし結局、内容を教えてくれなかった。
「ただいま!」
私は旅館に戻りリリアに元気よく話しかけた。
「もう。百合、急に出て行くんだから!」
「ごめんね。リリアこれ。」
そう言ってブレスレットを差し出す。
「これ、強い魔法がかかってるの。どんなものからもあなたを守ってくれるから!」
「ありがとう!ずっと大事にする!」
そう言ってつけてくれた。よかった気に入ってくれたようだ。私たちは食事をとるアルの部屋に向かった。バートさんは部屋におらずやはり家族と食べるらしかった。リリアはがっかりしていたが、私は顔を合わせなくて済むと、少しほっとしていた。食事を食べても味がせず、皆と楽しく喋っても笑っても心はここになかった。バートさんは誠実だと思っていた。騎士だし。それなのに。
食事を終えると藤に呼び出され旅館の喫茶コーナーに座った。
「まず顔に出すぎ。リリアとアルは鈍感やから気付いてなかったけど。カート君はばりばり気付いてたからね。」
「う、すみません。」
「そして僕を頼ってって言ってるでしょ。ちゃんと頼らなだめ。1人で傷付かないで。」
「はい。」
「なんとなくは分かってるけど、ちゃんと説明してみ。百合ちゃん。」
私は従業員の方たちのお話しと居酒屋でのお話しをした。
「いや、噂話やん。ほんまに言うてるん?」
「えっ?」
「いや、えっじゃなくて。バートさんに婚約者がいるとしても、リリアちゃんのことが好きかもしれへんやん。知らんけど。」
「えー。」
「あっ話変わるけど、アルがリリアちゃんと百合ちゃんのブレスレットにめちゃくちゃ強い魔法ついてるって言ってたで。アルでも負けるって。何をこうてきたん?」
「よかった。リリアを守ってくれるように露店で買ったの。」
「そうなんや。まあ大事にしいや。後、バートさんのことはちゃんと、本人に聞くまで気にしんときや、分かったね?」
「うん、わかった。ありがとう。」
そう言って私たちはそれぞれの部屋へ戻った。リリアは部屋に帰る途中で、バートさんに会えたようでとても喜んでいた。多分、バートさんはわざとリリアと出会うようにしたんじゃないかなと思った。
もう寝ようとリリアに言い眠りについた。
「百合様。百合様。」
声が聞こえてゆっくり目を開けるとそこにいたのはバートさんだった。
「夜分遅くにすみません。お話しがあります。」
ようし聞いてやろうじゃないかとリリアを起こさないようにそろりと部屋をあとにした。




