23、赤の国に到着です
歩きながら私は洋館でのことを考えていた。魔物の言葉を理解し話すことができる。他の人はできない。高位の魔法使いのアルでさえ理解できないのに。まあ今は歩こう赤の国はもうすぐなのだから。温泉が私を待っているのだから。
歩き続けるとまず匂いが変わった。木々の匂いの中に、あの独特の硫黄の匂いが混じるようになった。そして道の周りは木々が消え始め岩が目立つようになり、硫黄の匂いもきつくなった。
「さあ見えましたよ。あれが赤の国です。」
バートさんは指をさした。そこかしこに湯気が立ちのぼっている。ああ温泉街だ。さすがに浴衣ではないが、皆他の国より軽装だ。
私はとにかく温泉に入りたかった。もう池に入ったり、川の水を汲んで体を拭いたりしなくていい。源泉掛け流しという文字が目に入り私は走り出した。いやまた私は走り出せなかった。その場にかたまったままだ。またバートさんの魔法だ。
「もう泊まる旅館は決まっています。ここは人が多い。勝手な行動は困ります。」
「はい。すみません。」
「大人しくできますね?では行きますよ。」
私は大人しくバートさんの後に続いた。
「さあ着きましたよ。ここです。」
着いたのはいわゆる老舗旅館って感じだ。旅館の人が出てきた。
「まあバート坊ちゃまお帰りなさい。」
バート坊ちゃま?
「ああ戻ったよ。母様はいる?」
「女将なら庭で生け花のお花を摘んでらっしゃいますよ。」
「分かった。予約を取ってたんだが三部屋だ。」
「はい。承っております。ご案内しますね。」
「僕は母様に挨拶へ行くから、皆を頼む。では皆様また後で。」
バートさんって赤の国出身なんだ。しかも老舗旅館の跡取りか。私たちは部屋に通された。まずは藤とカート君の部屋、葵の間だ。中は畳ばりで、秋にくれば綺麗な紅葉が見えそうな山に面した大きな窓がある。畳を変えたばかりなのか、い草の良い匂いがする。
次はアルの部屋、向日葵の間。今回バートさんは自分の部屋に泊まるらしいのでアル1人だ。作りは葵の間と一緒で畳が気持ちいい。
最後はリリアと私の部屋、薔薇の間。なんで急に薔薇?洋風じゃない?中にはベッドが2つ並んでいる。ベッドの足元に薔薇のスローがおかれている。洋風なお部屋だがやはり畳の良い匂いがする。
さあお風呂に行こう。ずっと待ち望んだお風呂。私はそれしか考えていない。夕食は部屋でとのことなのでそれまでお風呂に入ろう。リリアは夕食後にお風呂にすると言ったので、私は1人で大浴場に向かった。目の前を旅館の従業員らしき人が通った。
「坊ちゃまが帰ってきたのね!」
「ええ、とてもハンサムだったわ。」
「ちょっとだめよ、婚約者がいらっしゃるのだから。」
「そうだったわね。でも戻ってきたってことは。」
「そうね身を固めるのかもね。」
思わず隠れて聞いてしまったが、婚約者がいたなんて!それなのにリリアに優しくし続けたなんて最低!でもまあとりあえず落ち着くために湯に浸かろう。とにかくお風呂に入りたい私は大浴場の扉を開けた。




