20、道中のテントです
緑の国を出て初めてのキャンプとなった。次に目指す赤の国は少し遠いらしく、この世界の1番端にあるようだ。赤の国は火山を恐れ神とすることで火山の噴火を抑えているそうだ。そして温泉が湧くので割と観光客が多くほぼ温泉地らしい。
藤は料理をしながら私と話をしてくれる。私はまた留守番だ。リリアはバートさんと薪を拾いに、アルとカート君はこの辺りの探索を行っている。
「藤は何作ってるの?」
「えーなんやと思う?」
「うーん、肉の塊にネギ。全く分かりません。」
「残念!豚の角煮でした。他の食材はまだ出していません。」
「藤さん?そのお肉は豚ですか?」
「百合さんそれは聞かないお約束。」
そしてウィンク。なんの肉なの。
「緑の国で買っといてん。」
「答えにはなってないけど。まあいいです。藤のご飯美味しいし。」
「愛情が沢山入っているからね。」
藤ってこういう事さらっと言うのね。ちょっとちゃらい?
「百合、あー僕ー傷付いたなー。」
うわーすっごい棒読み。
「百合、傷付いたよー。ちゅーして。」
「えっ。そういうのは恋人にしか…」
「カート君とはしたでしょ?」
「あっあれはその。」
思い出した瞬間ぶわっと熱が上がって顔が熱くなる。藤を見ると少しムッとした表情を浮かべている。恋愛初心者にその表情の意味が分かるはずもなくただ藤を見つめていた。その瞬間唇に藤の唇が優しく触れる。目をあけたままだったので全てを見てしまった。
「これで許すわ。うやむやになったけど結構怒ってたからね。あの迷子の件。」
先ほど以上に熱くなるのが分かった。藤はこの状態になった私に満足そうに笑った。
「おい!藤!貴様何してやがる!」
またややこしい奴が帰ってきた。
「運命の恋人である俺ともキスしていないのに。お前が何故!こっちに来い百合!」
「まあ僕もしたけど。」
カート君は絶対にわざと言った。このタイミングでわざと油を注いだ。
「百合!俺ともしてくれ!」
「なっ絶対に嫌!」
「なんでだよぉ…皆とはしたくせに。俺だけとは嫌だなんて。運命の恋人なのに。」
げっ泣かせてしまった。年下の男の子を。私は仕方なくずっとぶつぶつと話すアルの頬にキスをした。
「ふふん。今日はこれで勘弁してやろう。」
アルは単純な奴だ。もう休みたい。常識人グループのリリアとバートさんに早く帰ってきてほしいと切に願った。
藤の作った夕食はおいしくかったけど、先程のやり取りで疲れていた私は食事より睡眠を求めていた。
テントで休んでいるとリリアがバートさんとの散歩から帰ってきた。最近2人行動が多い気がする。
「リリアとバートさんって付き合ってるの?」
「百合!急に何を言い出すの!そんな訳ないでしょう!」
「えっ。でもいつも一緒にいない?」
「ああそれは私がくっついていってるだけよ。バートさん優しいから拒否せずどこにでも連れていってくれるの。おかしいわよね。私魔物なのに優しくしてくれるなんて。」
「えっなんで?別におかしくないよ。?誰に優しくするかなんてそれはバートさんが決めることだから。それにバートさんは私に全く優しくないし。」
「百合!ありがとう。百合もバートさんも藤さんもアルさんもカート君も、魔物だからって嫌な顔したことないよね。」
「そうかな?リリアお願いだから魔物だからって色んな物を諦めないで。思った事や辛かった事、私やバートさんに何でも話して。どんな小さな事だって聞くから。昔、私は、色んなことを勝手に我慢して勝手に諦めたの。リリアにはそうなってほしくない。」
「百合、ありがとう。」
「リリア、大好きだからね!」
「百合!私も!」
そういってテントで抱きしめあった。
「じゃあ百合1つ隠してる事を言っちゃうね。」
「うん。どうぞ。」
「たまにアルが私たちのテントにくるの。百合は眠っているんだけどそれを確認して、百合の寝顔を見つめたり頭を撫でたりしてるの。たまにバートさんがきて話をするけど、私には話は聞こえない。それでもアルは百合に触れるの。」
あの変態ストーカー。
「百合ごめんね。私も寝たふりしてるしなんか言いにくくて…」
「ううん、ありがとう、リリア。ちょっと行ってくるね。」
「えっともう遅いし先に寝てるよ?」
「うん。大丈夫!1人永眠させたら帰ってくる!」
「えっ。やっぱり一緒に行くよ!」
「いいよ!大丈夫!」
それでもリリアはついてきてくれた。
アルのテントに来た。
「おい!変態ストーカー野郎出てこい!」
隣のテントの藤が顔を出したが、すぐに引っ込めた。もうそのテントから音はしなくなった。
アルのテントから声がする。
「ほらアル様呼ばれてますよ。良かったですね夜這いじゃないですか。」
「バート絶対に違うぞ、いつもの声とは比べものにならない位殺意を感じるからな。俺は外に出ないぞ。」
「おら!出てこいアル!テント壊されたいか!」
「アル様呼ばれてますよ。早く出なさい。」
「バート代わりに出てくれ。」
「バートさん!百合がもう手がつけられない位怒ってます。」
リリアが叫ぶ。
「リリアも一緒ですか。仕方ありませんね。」
そういってバートさんが、寝袋ごとアルを引きずってテントから出てきた。
「ほら百合様、アル様ですよ。リリアこちらに。」
そういってバートさんはリリアを庇っている。
「変態、あなた夜私が寝てる時に私に触ってるらしいな。」
アルは寝袋に入ったままなので、その上に座って話す。心なしか喜んだ気がしたが、気にせずどんと座り直す。
「百合。でも一応許可は取ったぞ。寝ている百合に毎回触れて良いか聞いて、いいと答えたら触れるようにしてる。」
「いやそれって私寝てますよね。」
ぐりぐりと拳で脇腹を押す。
「いや、あの百合?やめて?」
私はアルの言葉を無視して続ける。
「リリア、テントまで送りますよ。」
バートさんがリリアを連れて行くのを横目で見ながらまだ続ける。
「百合ごめん俺が悪かった。もうこれ以上はまずいから本当に!」
「まずい?」
「百合が座ってる場所は、ちょうど俺のあれがあるんだよ。ずっと。ぐりぐりし出してからずっとあたってる。しかもあたってるのが、百合のそのあの場所だし。スカートだし足が見えてるし、何だったら下着も見えてる。」
「なっ変態!」
そういって私はアルを置いて逃げ出した。
「結局、夜這いだったな。」
とアルは呟いた。




