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19、私頑張ります


 朝が来て、少し落ち着いてきた頃、藤が散歩をしようと誘ってくれたので、私たちは簡単に支度をして外に出た。早朝の緑の国は、人が全くおらず道を歩いているのは私たちだけだった。藤は手をつなぎ、


「百合が迷子にならないようにね。」


 とだけ言ったきり、何も言わなかった。唯一開いていたお店でココアを買って緑が豊かな公園に入った。ベンチに座ると藤がこちらに向き直り手を握ったまま口を開いた。


「あのな、昨日、百合が言ったことを考えてたんやけど、正しさは大事やと僕も思う。結果として、あの女の人は苦労するかもしれへんけど、でも自分の手で子供を育てられる。それは百合のおかげやから。子供の成長を1番近くで見ていられる。子供と一緒にいたくてあの女の人は、僕らをホテルのあの部屋に通したんやから、あの女の人を助けたことにはなるんちゃう?」


「藤。ありがとう。」


 私は藤の肩に頭を預けた。藤は本当に私に甘い。


「百合にだけやで。」


 藤はまた心を見たんだろう。


「ふふ、ありがとう。そろそろ帰ろうか。」


「せやな。」


 立ち上がって歩き出そうとした瞬間、後ろから抱きしめられた。私の首に藤は頭をうずめて囁く。


「辛いんやったらバートさんの言うことなんてきかんでええ。この旅をやめてもええ。僕と今から逃げてもええねんから。」


「ありがとう。でも今までずっと逃げてきたから、友達も彼氏もできなかったと思うの。だからこの旅は頑張りたい。」


 抱きしめられたままそう答えた。藤は納得したのか分からないが、私をはなしまた手をつないで、


「分かった。」


 とだけ言って歩き始めた。

 ホテルに戻ると騎士団の人たちが来ていて、強盗のグループを全員捕まえたことを話し、協力に対しての報奨金を断る間もなく置いて、事後処理があるのでと、足早に部屋を出て行った。


「アル?この報奨金リップさんに渡してきても良いかな?」


「お前がもらったんだ。どう使おうと俺には関係ない。一緒に行ってやる。」


「ありがとう。」


「お前のそういうところが好きだ。」


「えっ。」


「もう遠慮はしないと決めたからな。今回は怖い思いをさせてすまない。」


 と頭をぽんぽんとなでてくれる。アルは年下なのにしっかりしている。私達はリップさんの家に行きポストに報奨金を詰めてきた。子供が大学に通うまでの学費を全て出しても余る額だとアルが言っていたので生活には困らないだろう。

 そしてホテルの前で皆と合流し緑の国を後にした。





「アル様、今回の百合様も上手く捌けていましたね。白の王にも伝えましたが。」


「そうだな。だがバート、百合が傷付くのは本意ではない。」


「しかしこの試練を乗り越えないと女王は厳しいですよ。」


「いい。最悪百合と結婚できれば王にはならずともよい。」


「アル様は百合様が好きなのですね。」


「何を今更。」


「ふふ。アル様、また勝手に百合様に触れると怒られますよ。それでは失礼します。」


 俺はテントで眠っている百合の頭を撫でながらバートの背中を見送った。今回は百合を傷付けてしまった。次はそうはさせないと心に決めた。



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