18、私は知りません。
朝目が覚めると横で藤が寝ていた。藤が横にいると少し落ち着く、藤は時々とても甘やかしてくれる。もしかしたら昨日の事で気づかってくれたのかもしれない。バートさんに解決しろと言われても、私は別に犯罪心理学の博士号をとったわけでも、警察官だった訳でもないのだ。でも一応事件を振り返ってみよう。朝から皆、出払っているらしく部屋には私と藤しかいないみたいだ。藤が起きたので、少し付き合ってもらうことにした。お茶を飲みながらとにかく事象をメモに書き出して壁に貼る。
「バートさんはリリアちゃんと騎士団へ、アルはカート君と図書館へ行ってる。皆昼までには帰ってくるって。それにしてもバートさんが百合に解決しろってほんまにいうんたか?」
「うん、言った。」
「そうか、なんか怪しいな。イメージアップだけとちゃうかもしれへんな。」
「えっ!」
「でもまあ、そこまで気にせんでええやろうな。なんかあったら助けてくれはるやろうし。じゃあ事件について考えてみよか。」
「うん、分かった。とにかく狙われるのは深夜の誰もいない銀行の現金のみ。警報がなって騎士団が着いた時にはもういない。金庫は魔法の鍵だけど、鍵を作った人より魔法の力が強いと、時間はかかるけど開けることができるらしいよ、アルが言ってた。その人ならワープが使えるかも。後ホテルに隠れることができるって事は魔物でも人型か本当に人かもしれないね。魔物のせいにしたのかも。それと緑の国の人は魔力が弱くて、騎士団の人は強いけど魔法は火をつけるとか簡単な魔法しか使えなくてワープはできないらしいの。だから警報がなってもすぐに人はこない。」
「ああそれと、百合がこの部屋で見つけたお金は、やっぱり銀行のお金やったらしいで。バートさんが今朝、言ってはったわ。全額返ってきて銀行は百合にお礼を言いたいらしいで。でも強盗が始まってから、この部屋は僕らが初めて泊まった客やって。」
「全額返ってきたって事はここのホテルに泊まるのに盗んだお金を使わなかったのか。まあでもここに泊まったのかさえ怪しいか。でもお金はここにあった。」
ん?あれ?やばくない?てことは犯人はここのホテル関係者じゃない?藤と顔を見合わせる。嫌な予感しかしない。その時だった。扉が開いて昨日ここに案内してくれたホテルの人が、入ってきたのだ。壁には強盗についてのメモ、私の視線で気付いたのだろう、その人はすぐに私と藤に瓶を投げつけてきた。中に何が入っていたのか分からないが、床で割れ甘い匂いがしたと思ったらそこで私たちは気を失った。
ああ捕まってしまった。私と藤はロープで縛られている。バートさんに怒られるぞ。藤は少し具合が悪そうだ。私より多く薬品を吸い込んだのだろう。ああどうしようか。そこにさっき瓶を投げつけてきた女が入ってきた。
「ああ、目が覚めた?あんた馬鹿そうなのに意外と賢いのね。私たちにすぐに気が付いたのだから。」
「えっあのホテルの部屋はたまたまですよね?」
「違うわよ。あんたカフェで電話したでしょ?あの銀行すぐにあんたの言うこと聞いたのよ。私たちせっかく昨日の夜、盗みに入ったのに、金庫はほぼ空だった。それを見て何かおかしいと思って今朝、騎士団に紛れ込んで話を聞いたらあんたの電話よ。あの銀行の電話は全て録音されている。あんたの声とあの電話の声一致したわよ。」
だから電話しない方がいいと言ったのに!少し藤を睨んだ。藤は少し申し訳なさそうに肩をすくめた。
「どうして?電話したのはあの銀行だけでしょう?何故あんたはあそこに盗みに入ると分かったの?」
私は押し黙る。数秒の沈黙。なんて言い訳しよう。とにかく黙ったままではいられない。
「考えたんです。行動パターンに手口、狙う物も全て組み合わせて考えたんです。」
「考えた?はっそうなの。」
言葉の節々に恨みがこもっている気がする。ここから逃げ出す方法を考えなくては。
「あなたお名前は?私は百合です。こちらは藤。」
「いいわ。教えてあげる。私はリップ。」
「リップさん私はあなたを傷付けたくはないんです。」
「その状態ででかくでたわね。聞くわ。どうして?」
「あなたは実働隊ではないはずです。私たちを連れてくるとき魔法を使わなかった。あなたたちの中には高度な魔法を使う人がいるそしてその人が中心人物なはずです。多分、あなたの役割は情報収集と運び屋ですよね?だから刑も軽いはず。」
「そうよ、賢いわね。魔法使いはリーダーよ。で何が言いたいの?」
「私の運命の恋人は私の居場所が分かります。多分ここがばれるまでもう時間はありません。それにあのホテルの部屋に、わざわざ私たちを通したということはもう盗みを辞めたかったのではありませんか?」
「知ったような口を、でもそうね辞めたかった。本当は1度限りのはずだったのに。私の恋人がグループのリーダーなの他に3人いるわ。最初はお金を手に入れてこの国から出たかった。今のあの人たちはスリルを求めているだけ。私、お腹にあの人の子供がいるのだからお金が必要だったでも、もうこんなことやめたいの。」
「そうですか。何故魔物のせいにしたんですか?」
「あれは単に時間稼ぎよ。」
「百合!大丈夫か?その女は?騎士団につきだすか?」
このタイミングで本当にアルが入ってきた。半分冗談だったのに。アルの後ろからバートさんが入ってくる。リリアとカート君はお留守番らしい。
「アル!大丈夫この人は協力する!だからだめ!バートさんこの人は協力しますだから罪を軽くしてください。」
「百合様と藤様はここへ拉致されています、それだけでも罪は重いのですよ。」
「藤、私たち自分の意思で来たよね?」
「うん、せやな。」
「よくも縛られた状態でそんなこと言えますね。」
「だからリップさんの罪はお金を隠しただけですよ!しかも今から強盗グループのアジトの場所を教えてくれます。だからバートさんお願いです。お金も全額返したし、昨日の夜の強盗を未然に防げたのも、リップさんが教えてくれたんですよ。昨日カフェで!」
「百合様今回は騙されてあげます。それ程協力したなら一ヶ月の社会奉仕で済むでしょう。さあアジトはどこですか?」
リップさんはただ場所をバートさんに伝え、事情聴取の為に騎士団へ連れて行かれた。
ホテルに戻ると被害にあった銀行の偉い人たちをが来ていてお礼を言われ、謝礼金を置いて私が断る間もなく部屋を出て行った。
「百合!危ないことしちゃ駄目でしょ!次は僕も連れて行くんだよ!」
「百合!大丈夫だった?怪我はない?」
カート君とリリアはとても心配してくれていて、早く寝なさいと私の部屋を後にした。藤は柴犬の姿で一緒にいてくれた。
「ねえ藤。私正しい事をしたとは思えないの。」
「なんで?」
「私がリップさんは密告者にしてしまった。恋人はリップさんを許さないかもしれない。そうなればお腹の子供の父親を奪ったのは私でしょう?」
「百合。」
私の名前を呼んで抱きしめてくれる。いつの間にか人の姿になっていた。
「この姿やと抱きしめられるから。」
また私の心を読んだのか。
「ごめんな。聞こえるから。」
藤は私の質問には答えずにただ夜が明けるまで抱きしめてくれていた。




