17、緑の国です
リリアの料理はなかなか個性的な味だった。不味くはない、ただとにかく辛いので、リリアは料理番を外され藤が新料理番を任された。藤は割と何事もそつなくこなしている。リリアは不服そうだったが、全員が涙目になっているのを見て納得してくれた。楽しい夕食が終わり皆それぞれのテントへ戻った。私はリリアと藤はカート君とアルはバートさんと同じテントとなった。
明日はいよいよ緑の国に入るのだ。調べた情報によると緑の国は割と都会で、やはり緑の服を着用しているようだ。治安は白の国に次いで良いのだが、この頃魔物による銀行強盗が多発しているらしい。私もスリとか気をつけよう。ちょうどアルが私とリリアのテントの前を通ったので、忘れていた頼み事をする。
「アル!この人魚不可侵条約の書類を白の国王に届けたいんだけど、どうすれば早く届くかな?」
「じゃあ届けておいてやるよ。」
「本当に!ありがとう!じゃあお願いします!」
「ああ今日中に届くようにするよ。」
「ありがとう!じゃあおやすみ!」
よしこれで大丈夫だろう。もしどちらかが違反行為をした時に、誰か中立の人が必要だったから見届け人を勝手に、白の国王の名前にしたのだ。何か起こったら全てあの人に任せよう。白の国のイメージアップなのだから、あの人の名前を出して私は関係ない感じにしようと思ったのだ。
そして私はテントで眠りについた。
道をずんずん進むと緑豊かだがビルも多く建っている町が見えてきた。あれが緑の国なのだろうとてもきれいな町だ。木々が豊かなのに高層ビルが立ち並んでいる。行ったことはないがニューヨークみたい。意気揚々と歩いていると前に怪しげな男が見えた。
「やあ、旅のお方かな?」
その怪しげな男が話しかけてきた。
「なんだ。何か用か?」
アルが答える。横ではバートさんがいつでも剣を抜けるように柄に手をかけている。
「待ってください。やり合う気はありません。ただ今緑の国は治安が少し悪いんです。お上りさんなら忠告しようと思って。」
「忠告ありがとう。だが緑の国には行かなくてはならないんだ。すまないな。」
アルが答え先に進む。怪しげな男は笑うでも怒るでもなくただ立っていた。
緑の国に着くと少し身構えていた私は拍子抜けしてしまった。治安が悪いという言葉が嘘じゃないかと思う程町が綺麗だった。ゴミが1つも落ちていないのだ。わざと少し裏道へ入っても脅されたり暴力を見たりすることはなく、試しに私だけ歩いたり、リリアだけが歩いても怪我をすることはなかった。リリアだけはナンパされたがそれだけだった。私が持っている前の世界の価値観で考える治安が悪いという言葉の意味が、この世界のそれとは、少しギャップがあるようだ。犯罪件数が多いのではなくて、やはりあの強盗が騒がれていることで、治安が悪いと噂されるのが、私には逆に元々の治安の良さが窺えるなと感じたほどだった。
一通り実験を終えると、緑の国でも1度解散し、また夕食をとる時間に待ち合わせとなった。バートさんは騎士団に挨拶、アルは図書館へ、その他4人は食べ歩きと思ったのだが、オシャレなカフェが多く、屋台があまりないので、町のメインストリートにあるカフェに入った。
銀行強盗のあった場所や手口を、カフェで他のお客さんが口々に話しているのが聞こえたので、ふざけて母とめちゃくちゃはまって、DVDも全てコレクションするくらいによく見ていた海外のプロファイリングのドラマの真似事をしてみせた。それがあれよあれよと上手くいき、あれ?これ次にここが狙われるんじゃね?と目星がついてしまった。
「なーんてね冗談冗談。」
と言ったのだが。皆が、
「いや絶対にこの銀行に注意した方が良い!」
と言うので仕方なく、電話をすることになった。物凄く重い気がする受話器をとり、電話をかけた。仕方なく事件は数日後にされていて、もしかしたらここ数日でそちらの銀行が強盗にあうかもしれないこと、現金だけを盗むので、なるべく現金をここ1週間はおかないようにした方がいいと伝え、即座に受話器を置いた。
私はミルクティーを飲みながら、やはり電話をしない方がよかったのではないかと思っていた。そんなことを考えていたのだが、目の前に色鮮やかなフルーツとまあるいアイスがのったプリンアラモードが来たので、全ての思考が飛び出していった。
夕食は洋食で私は野菜のポタージュとハンバーグにした。どちらも何人前か分からない程、量が多く食べきれないかと思った。私は全て食べきったが…カート君は無理だったらしく藤に食べてもらっていた。食事がある程度終わると、食後のコーヒーを飲みながらバートさんが口を開いた。
「今日は少しグレードの高いホテルにしました。」
「えっどうしてですか?」
私は疑問に思った、まだ旅を始めて数ヶ月ちょっとだ。お金を温存しておくのがベターだと思ったのに。
「百合様騎士団に聞いたのですよ。安いホテルだとセキュリティがあまりなっておらずホテルに泊まっていない者でも簡単に出入り出来るそうです。だから今回だけは高いホテルへ。」
私はまた顔に出してしまったようで、説明してくれた。そういえばホテルでアルバイトしていたときお客様は1度チェックインすれば後の出入りは自由だし、鍵さえ持っていればその部屋にも入ることが出来る。全てのお客様を把握するのは中々難しい。ホテルは客室も多いしね。でも強盗がホテルにいるなんておかしい気がするが、黙っておこう。騎士団は警察ではないから犯罪には明るくないのかもしれないし。
ホテルはとても豪華で清掃も行き届いていた。こんなところに泊まれるなんて、多分もうないなと思い、とにかくベッドを跳ね部屋を練り歩いた。馬鹿みたいに行ったり来たりしていると、絵画の入った額が、ほんの少しだけ傾いていることに気付いた。直そうとしたら絵画が落ちて、この部屋には相応しくない物があった。壁に穴があいていて中に大金が入っていたこの国の通貨だ。私は見ないふりを決め込もうと、額を戻そうとしたが時既に遅くバートさんに見られていたようだ。
「百合様それは?」
「知りません。」
「はい、それは分かっています。今隠そうとしましたよね?それが問題なのです。あなたには解決を目指してほしいのです。」
「結界をはる前に死ぬなとおっしゃいませんでした?」
「それとこれとは別です。私は逃げるなと言いましたよね。これは自ら頭を突っ込んだわけではない貴方に降りかかった問題です。それならあなたが解決すべきです。勿論手伝いますしお守りします。それにこれ位は捌いていただかないと後々困りますし。」
「なんですか?」
急に声が小さくなったので聞き返す。
「いいえ。とにかくこれは騎士団に届けます。貴方はご自分の出来ることを考えて下さい。」
そういってバートさんは部屋を出て行った。何故私が解決することにこだわるのか分からない。
私はベッドに横になり考えていたが眠ってしまった。




