15、人魚さんの登場です
拝啓、天国のお父さんとお母さん私は海にいます。周りには何もありません。完全に3時間は漂流しています。私は耐えきれず、
「助けてー!」
「あかん百合がとうとうおかしなった。」
「お父さーんお母さーん。助けてー!」
「うるさいわね!何叫んでるのよ小娘!」
「わあきれいなお姉さんが海から出てきた。お姉さんきれいですね。私百合って言います。助けてください!」
「おい人魚が出てきたぞ!」
アルが叫んだ。私はこのきれいなお姉さんが人魚なのかと思いながら、
「お姉さん青の国はどっちですか?」
「あんた話を聞いてたの?私たちを討伐しにきたんじゃないの?」
「違いますよ。話をしに来ました。でも後で青の国に一緒にきてください。」
「話?」
「だって人魚さんは人を襲いませんよね?」
「まあ殺しはしないわ。」
「ですよね。結局お魚を食べられるんですよね?」
「そうね、大体は。」
「ただ、縄張りに入ってこられると魅了する、ですよね?」
「ええ。」
「よし、じゃあ青の民に話します。すみませんが陸地まで案内していただけませんか?」
「結構強引ね、分かったわ。でも私たち魔物は人に嫌われているの守ってくれる?」
「ええ、私が守ります。」
そういって前に出てきたのはバートさんだった。この人は案外話が分かる人だったらしい。
陸地に着く前に人魚さんのヒレは足になっていた。ブロンドの髪に薄い茶色の瞳のきれいなお姉さんだ。
私は漁業組合の組長さんに話があるのでお時間いただけませんか、と受付の方に話しかけた。受付の方が今いいそうです。と言ってくれすぐに案内してくれた。私は覚悟を決めた。絶対に私の思った通りに意見を通してやる。
「初めまして組長さん私は白の国からきました百合と申します。」
私は真っ白なワンピースを着て挨拶に来た。
「おう、人魚を狩って来てくれたのか?」
「いいえ。」
「じゃあ何しに来たんだ?」
「すみません。まず伺いたいことがあります。人魚さんは人を殺しましたか?」
「いや、殺しちゃいねえ。ただ魅了されちまうと仕事になりゃしねえ。」
「でも魅了の期間は3日程ですよね?」
「まあそうだが、何が言いてえ?」
「不可侵条約を結んでほしいんです。人魚さんは自分たちの縄張りに入ってこられて、仕方なく魅了をかけて陸地に送って行くんです。いつも魅了された人は、ちゃんと浜に戻ってくるでしょう。ここの人たちがどんどん人魚さんの縄張りに入ってくる、仕方なく人魚さんが場所を変えてもまた人が入ってくる、そこで仕方なく魅了をかける。悪いのはどちらとは言いません。人魚さんに慈悲を与えてください。お願いします。」
「うーんでも…」
「この地図をご覧ください。人魚さんはここの辺りで静かに暮らしたいとおっしゃっています。ここならさほど漁の邪魔にならないですし。」
「だがなぜ魔物の為にそこまでしなくちゃならねえ。それなら人魚なんか全部殺しゃあいいじゃねえか。」
怖い、びりびりと怒りと殺意を感じる。でも絶対に負けないお姉さんの為にも。理不尽過ぎる。理不尽なことを許してはならない。もう誰も殺させない。
「人魚さんは人を殺さないのに、あなたたちは殺すんですか?もう充分ではありませんか?魔物の多くは衰退し数を減らし続けている。もうそっとしてあげませんか?衰退する前から、人魚さんは人を襲わなかったでしょう。だったら悪者はこちらになります。」
「…分かった。じゃあ漁師達全員に伝える。人魚の縄張りには近付かないこと。人魚の縄張りで漁はしないこと。人魚を見つけても殺さないこと。これでいいか?」
「はい!但し漁ではなく通行なら、人も人魚も通ってよいとしてください。ご協力ありがとうございます。」
私は頭を下げた。すると横にいた人魚のお姉さんも頭を下げていた。よかった上手くいった。
「ただ人魚が魅了以外の魔法を使ったら分かっているな?」
「ええ、でも縄張りに入ったらそこはもう人魚さんの国です。分かっていますね?」
「はっはっはっ、最後の脅しもきかねえか。お前なかなか肝が据わっているな!」
ばしばしと背中を叩かれる。この組長一瞬でも隙をみせるとつけ込まれる気がする。気を抜くな百合!
「それでは今日からよろしくお願いします!」
私と組長は契約書を交わし、違反行為をしたらそれぞれ大金を支払うと決めた。もう一度頭を下げ私たちは組合を後にした。
「百合様よく頑張りましたね。逃げませんでしたね。」
バートさんが頭を撫でてくれる褒めてくるなんて気持ち悪い。
「今、何か失礼なことを考えましたね。」
バートさんが頭を掴んだ。顔に出たか!
「まさかあ、ありがとうございます。」
「百合よくやったな!今日はお祝いやな!」
「藤は大げさじゃない?」
カート君が呟くも藤には届いていない。
「百合!すきなもんこうたろか!」
「えへへー藤も頭を撫でてくれたらそれでいい!」
藤は優しく頭を撫でてくれた。
「小娘!ありがとう!」
人魚のお姉さんが頭を下げている。
「いいえ。こちらこそ私を信じてくれてありがとうございました。」
「じゃあ私皆に伝えてくる。あっ私リリア!」
そういってざぶんと飛び込み、海に消えていった。青の国の人たちは気がいい人が多く、大体の人が人魚に対しての約束を守ると、宣言してくれた。宣言しない人は組長さんが漁はさせないと決め、私が一人一人話をして結局、全員が宣言しサインをしてくれた。なんとか人魚さんとの不可侵条約はうまくいきそうだ。私はもう一度組長さんにお礼を言って青の国を後にした。
次は緑の国か。たのしみだなぁ。青の国を出てまだ数分のところでリリアさんが立っていた。
「ねえ、旅をしているんでしょう?私も行くわ!小娘といると楽しいし。百合いいでしょ?」
「ええ!行きましょう!」
「後、皆からのお礼よ。」
そういってリリアさんが差し出したのは金銀財宝だった。
「えっ?」
「これね沈没船から持ってきたの!まだたくさんあるからこれはほんの一部よ。受け取って。」
「おい百合。これだけあればここにいる全員一生遊んで暮らせるぞ。」
アルが私に囁いた。とりあえず見られるとまずいので私のリュックに隠して、
「リリアさんありがとうございます。」
と震えながら、なんとか伝えると、
「リリアでいいわ百合!」
というリリアさんはとてもいい笑顔だった。
「アル様。」
「なんだバート。」
「百合様は意外と女王になる気質がありますね。」
「だって俺の運命の恋人だからな。」
「王様に百合様が女王に向いているか試練を与えてくれと、言われたときは無理だろうと思っていましたが。」
「失礼だな!俺の運命の恋人に!」
「失礼しました。では私はこれで。後、勝手に百合様のテントに入られると怒られますよ。」
そういってバートは出て行った。俺は百合の寝顔を見ながら絶対に結婚して女王にしてやると決意した。




