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12、旅はまだ始まったばかり


 食事も終えてそろそろ寝ようとなったときにカート君はベッドを使ってと言ってくれた。申し訳なくて私はソファで寝ますといくら言っても、いいからいいからと絶対に譲らないので仕方なくベッドに横になった。疲れていたのかすぐに眠ってしまった。


 重い、人生で初めての金縛りだ。金縛りは疲労が原因で、体は寝ているけど頭が起きている状態と聞いたことがある。だから断じて血まみれの女性とかはいないはず、もしいたとしたら話し合おう。私はちらと目をあけた。


「あっ起きたの?その顔も可愛いね。」


 カート君が私の上に乗っていて、体はいうことを聞かない。なんの前触れもなく唇に口づけされる。私が体をびくりとさせると、それにふふと笑い唇を指でなぞられ、その後また何度も口づけをされながら私の体の様々な場所を、指が這っていくさすったりなでられたりすると顔が熱くなる。


「お姉さん本当に可愛いね、こういうことは初めてかな?ねえこれでも僕は優しいと思ってる?」


 カート君の指が私の太ももの内側をさすりながら耳に唇をくっつけて囁く。私は大人だこういう時にどうたち振る舞うかを知っているぞ。とにかく落ち着くのだそして極めて冷静に毅然とした態度で自分の言い分を通す。


「あの、すみません。私初めては好きな人とって決めているんです。だからやめてください。でもカート君は優しいです。そう思います。」


「じゃあ僕が君の血を吸わないと死ぬとしたらどうする?それでも僕を拒むの?」


 血を吸う?吸わなければ死んでしまう?吸血鬼ってこと?吸血鬼って人だよねまあいいか今はそんなこと。


「じゃあいいですよ。死んでしまうというなら生きていてほしいし吸ってください。ただ他の行為はやめてください。」


「僕は魔物だよそれでも生きていてほしいの?」


「えっ吸血鬼って魔物じゃなくない?人じゃない?」


 カート君は大爆笑して私を解放してくれた。私そんなにおかしいことを言ったのかしら。


「そうだね元は人だよ、村に生まれたんだけど物心ついた時から、いつも血を吸いたい衝動と戦ってきた。初めて恋人ができた時、その恋人が可愛くて愛しくて衝動を抑えられなくて噛みついてしまった。勿論噛んだだけだから死んではいないよ。けどその事が村中に知れ渡り僕はそこで死ぬか、出て行くしかなかった。それからはずっとここに住んでいるんだよ。もう何年だろう10年は経つかな。」


 理解されない悲しみは少しだけ理解できる。人は自分とは違う人間を迫害する生き物だから。


「どうしてお姉さんが泣くの?かみ殺すよ。」


 こんなに怖いことを言われても泣いてしまうのはカート君がやっぱり優しいからだろう。先ほどの村の話に怒りも憎しみも声色から感じ取れなかった。

 

「だから血を吸ったことがないんだ。それに衝動もこの頃起きていない。それでもお姉さんを人間を試してやろうと思ったんだ。もう一度信じられるかどうか。というか多分僕の方が年上だけどね。」


「そう…ですか。じゃあ一緒に旅をしませんか?」


「えっとあんた何を言ってるの?今襲われたんだよ。」


「いや、ぎりぎり襲われかけたで済んでるし、もっといろんな世界を見た方がいいし。」


「おい百合はいるか。」


 でっでたー。


「本当に間抜けなお姫様ですね。薪も満足に拾いにいけないんですか?」


「百合ここにいるんか?もういっそ森、全部燃やすか?」


 小屋の扉をノックもせずに入ってきた騒がしい人達は口々に話していて誰も会話できていない。

 こういう事は先に言った者勝ちだから。


「この子はカートです。この子も一緒に旅をします。」


 皆、唖然としているそれはそうだろう見つけてくれてありがとうでもなく、心配かけてごめんなさいでもなく、旅を一緒にする人を紹介されたのだから。


「じゃあよろしく」


 私はそれだけ告げるとまたベッドに横になった。藤が言った自由な子やなという言葉だけが聞こえて私は眠りに落ちた。



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