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11、旅がはじまりました


 街を出ると私と藤は黒い服に着替えた。それにしても魔物がいるなんて、魔物は人を襲うのだろうか、旅に出るなんて言うべきではなかったのか。


「魔物って人を襲うんですか?」


「百合様、魔物は昔たくさんいて人を連れ去ったり畑を荒らしたり勿論、人を襲ったりしていました。でも統率者がいなくて、王都から軍を派遣したり村の人が用心棒を雇って少しずつ数を減らしました。今や魔物は衰退し、ただ滅びを待つ存在です。見つかれば殺されると知っているので人の前には現れません。」


「そうですか。」


 魔物はバートさんの言う通り山の中を進んでも森を分け入っても、1匹たりとも姿を現さなかった。バートさんは気配を感じると1度だけアルに言っていたがその後、魔物と言う言葉を聞くことはなかった。

 森を抜けると大きな原っぱにでてこの何にもない原っぱが私たちの旅路の初めてのキャンプ地となった。


 しまった、気付いたときにはもう遅く私は森の中で迷子になってしまった。薪を集めるために森に1人で入ったのに。私は石ころを過信してしまったヘンゼルとグレーテルの様にキャンプ地に帰ることができると思っていたのに。絶対に全員に馬鹿にされる、そう思った私は道も分からぬまま進んだ。

 もう夜がきたのか暗いだけなのか分からない程葉っぱが生い茂っている森の奥深くまで来てしまった。暗くて気がつかなかったが少し先に小さな小屋があった、もうここで道をきくしかない。


「ごめんくださーい。すみませーん誰かいませんか?」


「はい?」


 扉が開いて出てきたのは少しだけくせのある紫の髪の毛に紫の瞳の中学生位の男の子が出てきた。


「すみません、森を抜けたところの原っぱに行きたいのですがどちら方面に行けばいいですか?」


「ああ森を抜けたいのか…えーっとお姉さんもう夜だし原っぱまで2時間はかかっちゃうけどそれでも今日行くの?」


 私はがっくりと膝から崩れ落ち、男の子がびっくりした様子で抱えてくれた。少し甘い匂いがするなとどうでもいいことを考えて現実逃避をしていると、


「えっとよければ泊まります?僕1人なので布団とかありませんけど。」


「すみませんがお願いします。」


 と私は頭を下げた。少年はびっくりした後すぐに表情を戻して名前を教えてくれた。


「僕はカート。」


「私は百合です。」


「じゃあまあ入りなよ。夜ご飯食べます?それかお風呂入ります?先に。」


「じゃあお風呂をいただきます。ご飯も後でいただいてもいいですか?」


「うん、じゃあ用意しときますね。服はと。」


 旅の初日にいきなり迷子からの遭難、私って相当な問題児なのでは。私はお風呂に浸かりながら考えていた。でもこんな森の奥で1人で住んでるって寂しくないかな、身寄りがないのかなそれとも村八分にあったとか…やめよう詮索するのはそれに今はそんなことどうでもいい、あの悪魔のようなバートさんと過保護な藤とストーカーのアルになんと言えば怒られずにすむだろう。それだけを考えよう。

 結局答えは出ずカート君が置いてくれていた服を着た。ぶかぶかだったが洗濯されているのだろう清潔な匂いがした。


「ああ、出たのご飯食べます?」


「はいありがとうございます、いただきます。」


 スープと柔らかいパンが置かれている、とても暖かいあの食堂と同じ気持ちになる。こんな料理が出せるし私を泊めてくれるし優しい少年なのだろう。


「お姉さんさ何でそんな丁寧なの年下に見えるでしょう。」


 急に話しかけられたことに驚いたがカート君はずっとそんな事を考えていたのだろうか。


「えっと丁寧に年は関係ありませんよ。私のお祖母さんは私にも丁寧でした。だから優しい人には礼儀をつくします。」


「優しい人?」


「ええ、カート君は優しいです。」


「へえ、そうありがとう。」


 そう言って笑ったカートくんの目は笑っていなかった。



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