第3話 温かい朝食と白い下着
「わぁーやっぱり泰人くんのご飯は美味しいなぁ」
結局、隣に住む自称占い師は朝ご飯をたかりに来た。
「たしかにこいつの料理の腕はいい。泰人お前こっちの道に進むんだほうがいいんじゃないか?」
やめてくれ、これから仕事に行くのだ。せっかく久々にきた依頼なのに緊張が削がれる。無視して出掛ける荷造りをする。
師匠の常神と美波留は小さな卓袱台を共有しながら朝食をとっている。誰もが振り返りそうな美貌を持つ2人があぐらをかいて塩ジャケをつついている様は異様だった。ふたりは顔見知りだ。
「泰人、それでまた金にもならなそうだというのに行くのか。」
「お金じゃないですよ。師匠だって俺にそう言いますけど知ってるんですよ?」
久々子は常神が邪教に狙われた養護施設を無償で助けたり、小学生からの依頼を受けて組織をまるごと一個潰したことがあることを知っていた。強く厳しく、そして彼女は優しいのだ。
「私はいいんだ、金には困ったことなどないからな。それにY県の山奥だぞ?金欠のお前に交通費などないだろう。」
ぐっ そうだ。たしかにお金がない。
ネットから届いた依頼はY県のある集落の中学生からきたものだった。なんでも弟が行方不明らしい。その弟は友達と山に入って遊んでいたが帰りが遅く探しに行った依頼者が友達を見つけたときには弟は行方不明だったそうだ。見つけた友達も酷く怯えていたらしく、そして依頼者も見てしまったとのことだった。
「もってけ、先払いだ。」
そう言って常神はかなり厚みのある封筒を久々子に投げた。
「え!こんなにも?」
「そのかわり肌身離さずいろ。そして開けるな。」
それだけやばいものなのだろう。金額もそうだが師匠の目が預かった箱の危険性を物語っている気がした。
「ねぇ出掛ける前に乾燥機かして?乾いてなくて困ってるの」
身構えた久々子をよそに美波留が会話に参加してくる。よく見れば何やら洗濯ネットのようなものを携えていた。
ゴソゴソとネットから白い布を出して久々子に投げてくる。
「それだけでいいから乾燥機かけてー」
「ちょ、これ下着じゃないですか美波留さん!」
「うん、ショーパン履くからティーバックじゃないとはみ出しちゃうんだよねー」
そんなことは聞いていない。渡されたのはやたら面積の小さい白のフリルがついたものだった。
「勘弁してくださいよ!美波留さん!」
「あ、泰人くんスタンダード派?なんだかんだ言って男の人は普通のが好きだよねー。龍子さんはティーバック派ですか??」
相変わらず話が噛み合わずさらには常神に話を振っている。この人はこの人で強者だ。
美波留に話しかけられた常神はみそ汁をズズーっとすすってから時間をかけて口を開く。
「私は履かない派だ。」
...本当に勘弁してくれ、これから仕事なんだ。




