第1話 壊れた日常と滲んだ手紙
気山愛莉はこの春から都内に通う大学生だ。
田舎から不安を抱え1人上京してきたが
都会でのキャンパスライフは彼女にとって新鮮なことばかりでなにもかもが楽しかった。
最初こそ戸惑いもあったがそこは女の子だ、
少しずつ垢抜けた化粧を覚え
軽めにした髪の色は彼女の端正な顔立ちによく似合っている。
華々しい友達と買い物に出かけ、夜だって何時になろうともネオンやビル明かりで街は煌びやかだ。
そんな街に負けないくらい彼女は明るく周囲からも好かれ楽しい日々を過ごしていた。
しかし彼女の日常はある日突然暗転する。
彼女が都会に暮らす女性としてこの街を満喫しだした頃
彼女のアパートに一通の手紙が入っていた。
差出人はおろか表にはなにも書かれていなく
中には
「好きです。」
とだけ書かれていた。
はじめこそイタズラだろうと思っていたがその日を境に毎日のように郵便受けには同じ内容の手紙が入れられるようになった。
ストーカーだ。
手紙が2ケタになりそうなときになって彼女はやっと自分がストーカー被害を受けていることに気づく。
それも毎日自分の家に届けに来ている。
幸いなことに彼女のアパートは二重扉でアパートの玄関から各部屋までにはパスワードの入力かインターホン越しの住民の了承がいる。
それにしても郵便受けに日に日に溜まっていく手紙は彼女にとって恐怖でしかなかった。
そしてある日大学からの帰り駅のホームで女友達と電車を待っているときだった。
ドンッ
と隣にいた友達がホーム下に落ちた。
周りはパニックになり当然気山愛莉本人も慌てたが彼女の耳元で
「なんで読まない?」
と声がした。さっと血の気がひいて彼女はその場に座り込んでしまった。
周囲の迅速な対応のおかげか電車が来るまでにホームに落ちた友達は助けられた。
その後警察の事情聴取でもちろんアパートに届く手紙や駅での声について話したが
落ちたのは彼女の友達であり突き落とされたかどうかも混雑のせいか判断できなかったためストーカー被害は事件とし取り扱ってはもらえなかった。
とどのつまり警察はあてに出来なかった。
その日から彼女は部屋に引きこもるようになる。
ストーカーを刺激してはいけないと考えポストの中身だけは回収しては部屋からは出ない。
食べ物も通販で購入するほどになり半ノイローゼ気味だった。
だが彼女の不幸はここで止まらない。
手紙に何やら厚みが出てきた。そして表まで黒く何かが滲んでいた。
ずっと開けていなかった手紙を開封して、戦慄する
生爪が何個も何個も入っていた。
「会いたいよ。僕の気持ちは本気です。」
ヴォッエェ
胃の中が熱くなり何度も嗚咽が出てくる。
そして手紙の最後には
「あなたのためなら何でも出来ます」
と書いてあった。
愛莉は恐怖よりも気持ち悪さと苦しめられている現状からくる沸々と込み上げる怒りから
その手紙に対して
「私のために死ねますか?」
と書いて自分の郵便受けに戻した。




