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22.異変

ぎしっぎしっと軋むベッド。


「うわ…ガッチガチですね…。」


「あっ!そこ…あ…ぅ…痛…気持ちい…。ゆうちゃん、もう少し…う」


「…ここですか?だいぶ…ここもほぐれて来ました…」


今のやりとりでエロい想像した人、挙手!はい!俺!ゆうちゃんにマッサージされていた肩はほぐれてきましたが…うん。


「もういいですかね?起きて大丈夫ですよ?」


俺の肩を押す手をどかしてゆうちゃんは笑っている。いや、とっくに起きてるって。違うとこが。仰向けになるのはかなりまずい。かといってこのまま上体を起こすのも不可だ。


「…もう少しこのままでいるわ…。ゆうちゃん、疲れたでしょ?その辺座って休んでていいよ?」


少しすれば勝手に収まるだろう。そう思って俺はそのまま寝転んでいた。ゆうちゃんはソファに座ってクッションを抱きしめている。その様子をうつ伏せのまま見た。絵になるなぁ。と思って見ていると、オッドが背中に乗ってふみふみし始めた。



「あ、オッドちゃんも真似してる!可愛い!写真撮ろう〜!」


「撮ったら俺にも送っといて。オッド、もう少し左。…ぅ…やっぱり…くすぐってぇ…」


身体が揺れるとちょっと変な声が出そうになるのはくすぐったいからだよ、…多分。


「みゃあ。」


オッドが意味ありげに鳴く。今の鳴き声でちょっとオッドさんのこの行為に悪意を感じた…。俺がくすぐったそうに身悶えていると、見かねたゆうちゃんが


「オッドちゃんおいで?」


とオッドを呼ぶが、呼ぶ声を無視してオッドはふみふみし続ける。


「なんか嫌われてるみたい…。」


「人見知りしないタイプだと思ってたんだけど…昨日出かけてて構ってやれてないからちょっと機嫌悪いのかも。」



昨日、ユウちゃんとのデート中、ゆうちゃんから


【猫ちゃん見に行ってもいいですか?】


と突然連絡が来た。予定もなかったし、ゆーちゃんからも連絡なかったので、ゆうちゃんが着替えている間に返信してOKした。それで、今日午後からうちに来ている。昨日は元々遅くなる予定でいたから午後にしたんだけど、まさかユウちゃんちに泊まるなんて思ってなかったから、結構ギリギリだった。今後予定を立てる時は気をつけないとな。


それにしてもゆうちゃん、積極的だな、うちに来ちゃうなんて。招いちゃう俺も俺だけどね。ここのところ不満は溜まっていないため、今日の俺は耐える自信があったのだが、


「私マッサージ得意なんですよ!」


なんて言いながらベッドに寝かされて、さっきのやりとりをしたら…反応するものは反応する。いや、俺が反応しない方がおかしい。


「オッド、くすぐったいから本当にやめてくれぇ〜。」


俺が情けない声でギブアップすると、しょうがないというような顔をしてからようやく背中から降りた。はぁ。これはまだしばらく起きられそうにないぞ。オッドはトテトテと廊下に歩いて行ってしまった。


「折角遊びに来てもらったのにごめんね?オッドがあんな感じで。」


俺はへたった様子で依然ベッドに転がったまま、ゆうちゃんに詫びる。


「仕方ないですよ、猫ちゃんは気まぐれですから。」


ゆうちゃんは笑って言った。


「そこにマタタビオヤツがあるから、出してみて。好物だからよってくるかも。」


「えっと、こっちの棚ですか?」


「あ、そこじゃないよ…その隣ね?」


平静を装っているが、そっちは見られたらまずいもんが入ってる棚だよ!開けないで!と心で絶叫しつつ、隣からマタタビオヤツをゆうちゃんが探し出して一安心。匂いにつられてオッドが廊下から戻って来た。ようやく俺も起き上がれる状態になったので、起き上がってベッドに腰掛けた。

オッドがゆうちゃんと戯れているのを見守りながら、俺はゆうちゃんに聞いた。


「ずっとここにいても暇じゃあない?外に遊びに行く?」


「暇じゃないですよ?大丈夫です!」


オヤツがなくなり、プイッと行ってしまったオッドを名残惜しそうにみてゆうちゃんは答えた。そしてベッドに座ってる俺の横にぽすんと座る。少し俯いた後に決心したかのように頷き、俺にキスをした。一度唇を離し、熱っぽく俺を見てから、少しぎこちなく深いキスをしてくる。


「外だとこういうことはできないですし…。」


恥じらいながらも、積極的なゆうちゃんに収まったはずの場所が反応し始めた。ゆうちゃん…攻めすぎだよ。こうなってしまうともう俺にはお手上げなので、オートモード先生にお任せする。ゆうちゃんに関してはオートモード(先生)はかなり慎重派だ。前回の事もあるので、今回は早めからお任せする。


ベッドに俺はそのまま横になるとゆうちゃんも追随する。2人で横になってキスをし合った。ちょっといい感じになって来たところでオッドが俺たちの間に入って邪魔してきた。


「オッド?どうしたんだよ?さっきまでオヤツ以外見向きもしなかったのに。」


俺はオッドに呆れ声で言っておにぎりする。ゆーちゃんの時は邪魔しなかったし、空気読む子だっただろ?一体どうしたんだ。


「もしかして、さっきからご機嫌悪いのって私にヤキモチ妬いてるんですかね?」


その様子をみて、ゆうちゃんがクスクス笑っている。


「え、そうなのか?!」


そう驚くと、軽く俺に爪を立ててから行ってしまった。


「イテテ。猫にも反抗期ってあるのかな。」


「反抗期というか、甘えたいんでしょうね、きっと。」


後で聞いてみようかな。でもまた爪を立てられて終わりそうだな。そう思いながら、ふっと笑ってゆうちゃんにキスをして抱きしめた。オートモード(先生)も止めない。いいの?いいんだな?抱きしめられたゆうちゃんは俺の腕を撫で撫でしている。こないだもやけに見てたし、ゆうちゃん腕フェチなのかも。俺は抱きしめたまま、ゆうちゃんにキスをしているとゆうちゃんはすーすーと寝息を立て始める。昨日、飲み会出てたっていってたし、少し疲れてたんだなと思い、起こさないように優しく抱き寄せる。柔らかい抱き枕のようなゆうちゃんの感触に俺も、つい、うとうとして眠りに落ちた。






「今日も違う本命ちゃんが一緒なのねー。」


つまらなそうに言う淫魔。


「あぁ…俺、いつの間に寝たんだ?」


「多分すぐ目を覚ましちゃいそうね?本命ちゃんも一緒だしー?」


オッドだけでなく、淫魔も何だかご機嫌斜めだ。


「身体見つかったのか?」


俺は気だるそうに言うと、


「ねぇ。あのトウマって子をタツキに紹介しないならあの子でもいいの?」


「何でそうなるんだ?」


「だって、タツキに紹介するのが嫌なら…あんただけならいいんじゃないかって。」


「もともと、おまえはタツキさんのそばにいたくて堕天したんだろ?何でそうなるんだ?」


「………。好きなのよ。」


「は?!」


「私と契約しない?」


「は?!え?!」






俺はそこで目を覚ました。淫魔は何を言いたかったのか。少し腰あたりに荷重を感じ、目を開けると襟元を乱し、俺に跨るようにしているゆうちゃんの姿。


「な!!ゆうちゃん!!ダメだって!」


うたた寝から覚めた俺は準備万端なわけで。そんなことされたら…。


「この子だって今したがってるみたいよ?じゃなかったら私を受け入れないわ。」


そう言って淫靡に笑う。


「おまえか…。」


「今回はすぐわかってくれたわね?」


ブラウスのボタンに手をかけ、外すとゆうちゃんの柔肌が露わになりそうになる。寸でのところで俺は手で抑えて止める。


「どうして止めるの?」


甘美な響きで俺を誘惑するが、俺はそれに抗う。


「ダメだ。その子の身体を乗っ取ったら、タツキさんに紹介してやらないぞ。」


「タツキともいちゃいちゃしたいけど、あんたのことも好きになっちゃったみたい。あんたと契約するならあのトウマって子の身体でもいいのかなって。あ、この子でもいいわ。」


「乗っ取ったら…わかってるんだろうな?でも何でトウマにこだわる?」


「あの子の身体気に入ってるのよ。少しあんたの匂いがするし。この子はあんたの匂いがしないけど。」


なんだそれ…。むくれるゆうちゃんの姿の淫魔の胸元のボタンを留めながら、俺は答えようとするが、俺の手を跳ね返すような弾力に思わず手が止まりそうになる。


「おまえタツキさんといちゃいちゃしたいんじゃないのか?」


「いちゃいちゃしたいわよ?でもいい身体が見つからないのよ…。」


「身体が見つからないなら、俺も探すのを手伝ってやるから。そんなに俺の相手をしたいんだったら、リアルでタツキさんを、夢で俺を相手すればいいだろ?俺はおまえを相手しても死にそうにないしな。それに…。」


俺は何を親身に淫魔の相談に乗っているのだろうと苦笑する。


「それになによ?」


むくれつつ、熱っぽい視線で聞いてくる淫魔。その視線に腰が浮きそうになるのを必死に抑えて続く言葉を紡ぐ。


「リアルだと、本当のおまえの姿をいじめられなくなるだろ…?」


「っ〜〜〜!!」


俺が思惑(しわく)的に笑うと真っ赤になったゆうちゃんの姿の淫魔は両手で顔をおさえる。た…堪らん…。オートモード(先生)助けて!この体勢だとそれもいつまで持つか…振り切ってしまいそうだ。


「とりあえず、降りてくれ…。」


か細い声で促すと淫魔は素直に跨るのをやめて、ベッドの上にアヒル座りして俺の顔を覗きこむ。とりあえず助か…ったのか?そのまま頂い…いやいや、ダメだって。そんな葛藤をよそに淫魔は俺の身体をさわさわしている。


「確かに夢での方が私も色々できるものねぇ。」


「ちょっ…はぅ…ぐっ!」


ソフトに撫でる手がこそばゆくて変な声が出て…


「シャー!!」


オッドが戻って来て、淫魔を威嚇している。


「あら…怖いのが来ちゃった。お暇するわ。続きは今晩ね…?」


そう言うとゆうちゃんはどさりとベッドに倒れ込み、すーすー寝息を立てていた。


「どうすんだ、コレ…。」


着衣の乱れたゆうちゃんに、昂った俺。今ゆうちゃんが起きられたら確実に詰む。…少し…っつーか、かなり迷いつつ、触りたい衝動をオートモード(先生)に抑えてもらいながらゆうちゃんの服を整えてから、ため息をついた。


「あとはこいつだな…。」


下半身をみてため息をもう一度つくと、オッドが意味深な目線で俺を見て言う。


「主…我が…」


「いやいや、無理だって。ゆうちゃんいるし。」


被せ気味に答えると不満そうな顔をするので、抱き上げて鼻と鼻を合わせてやる。ゆらぁと揺れる尻尾。ご機嫌が少し直ったようだ。


「やっぱりヤキモ…いてぇって…。」


やっぱり爪を立てられてた。何なんだよ全く。オッドさん、ツンデレなの?そんなことに言ったらまた爪を立てられそうだなと苦笑して、オッドを下ろす。そして、廊下へと歩いて行く。


「主、どこに行く?」


「トイレ掃除。掃除してりゃ収まるだろ?」


そういうことにしておいてください。お願いします、オッドさん。心で合掌してトイレへ籠った。尚、掃除の仕上げに消臭剤はたっぷり使いました。





掃除が終わり、手をしっかり洗っていると、ベッドから


「うぅん…。」


と可愛らしく声を上げてゆうちゃんは目を覚ました。


「おはよ。」


そう声をかけると、真っ赤になり慌てるゆうちゃん。


「私寝ちゃって…ごめんなさい!」


「俺もさっきまで一緒に寝てたよ?」


そのさっきは結構前だけどね…と心で言いつつ。


「あ、あの…。」


そういって恥ずかしそうにするゆうちゃんは俺の耳もとに顔を近づけ、ごにょごにょと囁く。俺は口元を撫でながら、


「怖くなったら言ってね?」


そう言ってからゆうちゃんにキスをした。

読んでくださってありがとうございます!ゆうちゃんが何を言ったのかはご想像にお任せします。

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