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14.キスはどこにする?

そぅっとドアを開ける。真っ暗な部屋に黒い影が蠢く。


「主、遅かったな。」


「ぅわぁ!!起きてたのか…。オッド、ただいま。」


近寄ってくるとスンスンの俺を嗅ぐオッド。なんか浮気調査みたいだ。


「主のいつもの匂いと違う匂いがするな。」


やっぱり浮気調査だった。いや、浮気じゃ無いけど。


「ハーレム形成の第一歩を踏み出したとだけ言っておく。」


「左様か。ならば良い。」


そう言って目を細めるオッド。…なにを考えているんだろう?ちょっとだけ気になった。

着替えてベッドに横になる。精神的に大満足なのだが、肉体的にはやや不満が残っている。なんていうか…燃え尽きた感がない。所謂賢者モードにならないのだ。まぁ、精神的にも肉体的にも満足していまえば俺は死んでしまうので好都合なのだけれども。


「主、寝るのか?」


オッドが近寄ってきて枕元に座る。


「あぁ。明日会社だからな。すっかり遅くなっちゃったから早く寝ないと。」


「ふむ。休むといい。」


そういうとオッドは俺の鼻に鼻をくっつけてから、俺のそばで丸くなった。







「おっす…。」


「おはようございますー、って!タツキさん、どうしたんですか?」


げっそりしているタツキさんにギョッとする。


「こないだから…毎晩じゃ無いけど、エロい夢見るんだわ…。」


「へ、へぇ。そんなんですかー。羨ましいですね?」


俺が堕天させた淫魔が原因です、なんて言えない。そして、羨ましいとは思って無いけど一応。


「…………………淫魔って信じるか?」


思わず、ぶばっ!と吹き出してしまう。今俺が思ってたこと読まれたかと思った。


「……だよな?普通はそういうリアクションだよなー。俺、のめり込みすぎてんだろうな…。とにかく、そのエロい夢を見るとやたら疲れるんだよ…。」


「それでそんなげっそり…?」


「そ。それでそんなエロい夢を見ないように、リアルで彼女でも作ろうかなと思い始めたんだが…最近経理の女の子とも仲が良い、雰囲気イケメンが紹介とかしてくれねぇかなぁ、なんて…。」


「経理の子は紹介しませんよ?別の子なら紹介しますよ。…胸の大きい子を。」


俺はしれっと答えた。タツキさんにゆーちゃんは紹介しない。折角確率乱したのに自然とくっついちゃいそうだし。なので、タツキさんが食いつきそうな条件を提示する。胸の大きいってとこでタツキさんはピクッと反応して、


「お願いするわ…。じゃ、俺行って来るわー。」


ややフラフラーとしながらタツキさんは席を離れて行った。俺は淫魔くらいじゃないと肉体的に満足できないようになってきているけど、常人にはキツイようで。今度夢に出てきたら教えてやらないとタツキさんが死んでしまいそうだ。っつーかアイツちゃんと悪魔としての能力をちゃんと使えてるんだろうか…?使えてるからああなってるのか。タツキさんが死ぬのはアイツ的にも宜しくないんだろうからな。加減とかってできるのかな。できれば加減すればいい話だよな。今度相談乗ってやろうかな。俺はなぜか淫魔の心配をしながら俺は仕事を始めたのだった。


月末近くなので、今日は早く帰ることは叶わなかった。胸の大きい女の子探しとかないとな…と思って思い返して、一瞬トウマが思い浮かぶが、却下しておく。一応元カノ。元カノにイケメンを紹介するってなんとなくやだ…そんなことを考えながらの家路。スマホで土曜日に買った数字選択式宝くじの結果をチェックしていた。


「うわっ!!マジか…」


電車の中にも関わらず、思わず声が出てしまった。周りの人にジロッと見られる。…恥ずかしい。なぜ声が出てしまったのかというと。1等ストレートが当たっていたのだから。



家についてバタンと乱暴に扉を開ける。


「オッド!!」


「ぬ?主、どうしたのだ?やたら慌てているが?」


オッドを抱きしめてスリスリする。


「当たったぞ!1等、約100万円〜♪」


「む、宝くじというやつか。確率を乱したのだから当たるに決まってるであろう?」


「いや、でも100%じゃないって言ってじゃないか。それに1等が当たるとは限らない訳で!」


俺がやや興奮気味に言ってもオッドはふーんという感じだったので、俺はオッドにも喜んで欲しくて言う。


「おまえがテレビを見てて欲しがってた、シー○の手から食べるおやつも好きなだけ買ってやれるぞ!」


先週夜、一緒にテレビを見ているとCMがやっていて、オッドは「主…」と言っていたのだが、「これは高いからダメな?」と言っていたのだ。


「ぬ!それは誠か?!」


ちょっと喜んだオッド。それで喜ぶあたりは本当に悪魔なのかと問い詰めたくなる。可愛いからやらないけど。


「…でも、冷静に考えると一時的なもんだから収入増やすこと考えないとかー。株でも勉強して安定的に増やすことも視野に入れるか。そうすれば、猫缶のランクをもっといいやつにできるんだけどなぁ。」


そう呟くとオッドは


「もっといいだと?そんなことが可能なのか!!主、何が必要なのだ?!」


と、やや乗り気だった。高額なのは当てさせないってこないだ言ってたのに。いい餌が食べられるって言えば高額当選できたんだろうか?でもまぁいいや。増やす楽しみができたと思っておこう。俺はオッドの柔らかな毛にスリスリを存分にしていると、スマホが鳴った。ゆーちゃんからだ。


【お疲れ様〜。今週金曜日は空いてる?】


先週は何かと予定があってゆーちゃんには会えなかった。漫画の続きも読みたいだろうに。


【今週はおっけ。なるべく早く仕事終わらせる!】


【私も!月末月初は忙しいけど頑張ろ?】


【そうだね。お互いに。】


【その日、またおうちに遊びに行っていい?】


……これはそのまま帰らないでお泊まり…金曜日の夜にうちに来るなんて。まさか。いや、ひょっとしたらひょっとする。色々準備しておかないとかな。そんなことを妄想していたら、頬が緩んでいたようで、オッドから


「主?顔のしまりがないぞ?」


とペロペロされてハッとする。妄想より返事だ。


【もちろん。駅で待ち合わせて一緒に帰ろう。】


そう返した。今週は金曜日には仕事を残すなんてことはないようにしっかり励まなくては。そう思って俺は月末ピークに気合いを入れ直したのだった。



ーーーーーーー


金曜日。俺は駅でゆーちゃんを待っていた。ゆーちゃんはちょっと遅れてやってきた。


「ごめん、お待たせ〜。」


ちょっと小走りでやってきたらゆーちゃん。走らなくても全然いいのにと思ったけど、ちょっと息を切らせてこちらにきたらゆーちゃんは色香が漂っていて…。もう既に俺の脳内がそういう変換をはじめている。フライングしすぎだ。思考を戻しつつゆーちゃんに


「走らなくても良かったのに。じゃあ行こうか。」


そう言って電車に乗り込む。ゆーちゃん、いつもより荷物が多い気がする。仕事の書類だろうか?最寄り駅から道すがらでの話。


「夕飯もちろんまだだよね?」


「そうだね。」


「俺んちで作って食べようか。ミニスーパー寄って行こう。」


「え?料理得意?」


「得意ってほどでもないけど、炒飯は自信あるかも。ご馳走しようか?」


「うん。じゃあ私スープ作る!」


「一緒に立てるほど広いキッチンじゃないけど、一緒に作ろう?」


「うん。」


2人で買い物をして、家に着くとオッドが玄関先でおすわりして待っていた。ご丁寧にお出迎えして「にゃー」と鳴いていた。


「いらっしゃいってさ。」


「オッドちゃん、こんばんは。お邪魔するね。」


そう言ってゆーちゃんは家に上がった。自然と部屋着の下をゆーちゃんに渡し、俺も部屋着に着替えた。そして、2人で広くないキッチンで料理をして食べる。キッチンでも何度も軽く接触しているので近くにいるのが当たり前になっていた。ご飯を食べる頃には俺たちは寄り添って座っていたのだった。


「炒飯美味しい!」


「スープも美味しいよ。今度は生姜焼き作ろうか。」


「え、それも得意料理?そしたら付け合わせ…何にしようか。」


2人で次のメニューの話をする。なんだか既成事実で付き合っているような流れになって来ているような感じだ。どうやらゆーちゃんにははっきり言わず、流れでそういう雰囲気にという感じがする。

片付けが済んだ後は読書タイムに入った。食事の時と同じように俺たちは寄り添って座っていた。前に来た時とは違って、それなりに本の内容も頭に入るようになっては来たようだ…と思ったのだが。ゆーちゃんが俺の肩に頭を預けて来たことにより、内容は全く入らなくなってしまった。が、別にもう本はどうでもいいや…。そろそろ10巻が読み終わる頃、俺は声をかけた。


「ゆーちゃん?」


「なあに?」


頭を預けてた体勢のままゆーちゃんが顔を上げると、もう互いの顔は目の前。俺はそのままゆーちゃんを見つめて、少し止まった。ゆーちゃんはそっと目を瞑る。これは…もう…。俺はゆーちゃんの柔らかな唇を確かめるようにキスをした。その感触が堪らなくなり、もう一度確かめる。そして、ゆーちゃんが目を開ける。トロリとした視線で俺を見てもう一度目を閉じた。お互いの唇を確かめ合うかのように短いキスを重ねた。


「そう言えば終電…。」


俺は唇を離してゆーちゃんを抱きしめながら言う。ゆーちゃんが帰るにはそろそろ出ないと終電には間に合わない。


「うん。そろそろ時間だけど…。帰った方がいい?」


「ううん。泊まっていけば?狼いるけどね。」


「いるね、ここに。」


そう言ってゆーちゃんは俺にキスをして続けた。


「続き…する?」


「…したい。」


ゆーちゃんの問いかけに俺は短く答えるとキスの続きをした。徐々に長く、深く。唇を離すと、優しく笑い、ゆーちゃんをベッドに(いざな)う。小さく頷いたゆーちゃんと2人でベッドに寝転び、また確かめるかのようにキスをした。


夜は長い。外は寒いはずだが、温かかった。

読んでくださってありがとうございます!やっぱり15話じゃ終わらないです。迷っています。

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